第7話

Episode6
42
2025/05/05 14:00 更新
告白してから数日後、赤い傘の男は以前にも増して落ち着きがなくなっていた。何も言わず、冷静を保とうとしているはずが、どうしてもあの「押し倒された瞬間」が頭をよぎる。自分があの時、予期せぬ形で彼を倒してしまったことが、どうしても気になって仕方がないのだ。



だが、最初のうちは特にそのことについて気にしていなかった。むしろあんなハプニングがあったのに、すぐに冷静を取り戻して接していた。でも、次第にそのことがどんどん自分の中で大きくなり、日に日に恥ずかしさが増してきた。



その結果、赤い傘の男は、彼と話す時に言葉が少し小さくなり、顔を見合わせるのも少し照れくさく感じるようになった。最初の頃は目を見て話すことができたのに、最近ではすぐに視線を逸らしてしまう自分に気づく。



「......あ、あの、ちょっと...」



赤い傘の男が話しかけようとするたびに、言葉がややもじもじしてしまう自分に驚く。



「これじゃ、僕はまるで......」 と内心で呆れていたが、それでも照れくさい気持ちはどうしても抑えられなかった。



そんな変化に気づいた「這いばい男」は、 徐々に心配し始めた。



「赤傘、最近なんだか元気ないようにに見えるけど、何かあった?」



いつも冷静で落ち着いている赤い傘の男が、 明らかにどこか違う。それを目ざとく見抜いた這いばい男は、心配そうに問いかける。しかし、赤い傘の男はそれを言葉にできず、ただ苦笑いを浮かべるだけだった。



「...別に、なんでもない。」



「でも、いつもみたいにしっかりしてないし、ちょっとおかしいよ?」



「本当に、何でもない。」



赤い傘の男は、少し 表情を浮かべて言う。彼は自分が照れている理由を言い出せずに、ますます焦るばかりだった。それでも、 這いばい男はしばらく彼をじっと見つめ、しばらく考えた後、ぽつりと言う。



「... もしかして、僕が倒れたことで、変に気を使ってるのか?」



その言葉に赤い傘の男は、驚いたように顔を上げた。最初はどう反応すべきか分からず、 言葉に詰まる。



「え?...な、何を言ってるの?」



「だって、あの日からずっと、なんだかおかしいよ。話す時も、目を合わせないし、言葉も小さいし。僕が転んだことで気を使ってるんじゃないかって思って。」



赤い傘の男はその言葉に少し硬直する。確かに、それが原因かもしれない。しかし、自分がどうして照れているのか、なかなか素直に言葉にできなかった。



「別に... そんなことない。」



「でも、顔が赤いよ?」



這いばい男は少し笑いながら、赤い傘の男の顔を見つめる。照れているその姿が、ますます不思議で可愛らしく見えてきた。照れくささを隠そうとしているのが、逆に目立つほどだった。



その時、赤い傘の男はついに、ほんの少しだけ顔を赤らめながら言った。



「...実は、あの日のことが、ちょっと気になって。」



「え?」



「押し倒されたことが、恥ずかしいっていうか、なんていうか...」



その言葉を聞いた瞬間、這いばい男は一瞬驚き、それからだんだんとその言葉の意味を理解した。



「それって、僕が倒れたことで...?」



「いや、別に、お前が悪い訳じゃない。ただ... あれが、頭から離れなくて。」



赤い傘の男は恥ずかしそうに目をそらす。自分でもその照れがどうして湧いてくるのか、 理解できないままだった。



「でも、別に気にする必要なんて...」



「気にしなくていいってわかってるけど、どうしてもその時のことが...」



その時、這いばい男はふっと気づいた。赤い傘の男が照れている理由。それは、あの時、 偶然とはいえ彼を押し倒してしまったことが、彼にとって予期せぬ感情を引き起こしていたからだ。



「――あ、なるほど。」



這いばい男は少し顔を赤らめ、照れ笑いを浮かべる。



「僕も、最初は照れてたけど、気づいたらそれも、ちょっといい思い出になってたんだよね。」



「…は?」



「だって、あんなに近くにいたんだもん。少しドキドキしたし。」



赤い傘の男は、思わず顔を真っ赤にする。それを見て、這いばい男は少し意地悪く笑う。



「でも、それを今言うのは、もっと恥ずかしいかもね。」



その言葉に、赤い傘の男は顔を真っ赤にしながら、彼の肩を軽く押した。



「――うるさい。」



そして、二人は少しの間、恥ずかしそうに互いに目を合わせられず、沈黙が流れた。それでも、少しずつその照れが、二人の関係を新しい段階へと導いているように感じた。

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