春が過ぎ 夏が来た。
冷房を付けているとはいえ 少しだけまだ暑い気がした。
咲夜に冷たい紅茶でも頼もうと思い 席を立つと同時にバタバタと忙しなく動く足音が近付いてきた。
どこか他人事のように思いながらも、その足音を聞いていると、私の部屋の前に来たと同時にノックが響いた。
コンコン.....
忙しない足音の正体は 妹のフランだった。
やけに焦った声をしているフランに 何やらただならぬ気配を感じた。
急いで部屋の扉を開けると フランは私の体に飛びついてきた。
顔を覗き込んだら フランは真っ青な顔をしていた。
脂汗だろうか。
額には少し汗が滲んでいる。
今にも泣きそうなフランに思わず顔が引きつってしまう。
その日突然 私の日常は終わってしまった。
フランに言われ 私は慌てて咲夜が眠っている部屋へと走り出した。
部屋の前につき 荒れた息を整えつつ 勢いよく扉を開けた。
部屋に入るなり血眼になって咲夜を探す私を見て パチェが私の肩を抑えた。
だけど 肩で息をしている私を見るなり 心配そうに眉を細めた。
咲夜の隣にいたであろう美鈴が私の前に歩いてきて ゆっくりと私の手をとった。
美鈴に手を引かれるがまま部屋の奥へと行くと。
無機質な シンプルなベッドの上。
そこに横たわる私の自慢のメイド。
思わず そんな言葉が口から漏れた。
今横たわっている彼女は少しやつれているように見えた。
元から色白くはあったが 今はいつもよりも白く見え とても不健康のように感じた。
美鈴はゆっくりとお辞儀をし 部屋を去っていった。
私はそんな美鈴を見る余裕もなく ただただ眠っている咲夜の横で座り込んでいた。
パチェはそのまま部屋を出ていき
私は咲夜と共に静かな部屋に取り残された。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!