あれから数時間が経って、再びピコンという電子的な音が耳に入り、目が覚めた。
あなた「………ん……ふわぁ……」
まだ眠たい目をゆっくりと開け、辺りを見渡す。
寝たせいか、先程より体が大分楽だ。
辺りを見渡すと同時に、再び芥川さんが私の目に入った。
よく目をこらして見てみると私のスマホに何かしている。
私が起きたのに気づいてないのか、私のスマホと彼のスマホとを近づけながら真剣に向き合っている。
その表情はいつもの彼の表情とは少し違い、まるでにらめっこをしているかのようだった。
あなた「あれ…芥川さん。何してるんですか?」
芥川「?!…………………何も、していない」
私が声を掛けると同時に、にらめっこをしていたかの様な険しい表情とは打って変わり、いつもの無表情な彼に戻っていた。
あなた「芥川さん、私のスマホで何してたんですか?」
芥川「んん゛………何も、していない。そんな事よりも、体調はどうだ。」
私の質問に動揺したのか、咳払いで誤魔化し、体調の事を話題に出してきた。
誤魔化しきれていないのか、「どうだ。」という問いかけがいつもより言葉が優しい。
あなた「お陰で様で大分いいです、!」
芥川「………………」
大分いいと言ったものの、そこまで自分の体調が全快という訳ではない。
それが悟られないよう、笑顔で言ったはずだが、、
何故か芥川さんは黙ってしまった。
芥川「何故、僕をかばった、」
あなた「え?」
そう呟き私を見つめる彼の目は、恨みもあるような、でも私の事を心配してくれているかの様な暖かい目が混じり合ったようなものだった。
きっと芥川さんは"私なんかに助けられなくても大丈夫だった"という事を言いたいのだろう。
でも…
大切な人を目の前にして、黙って見てろなんて出来るわけがない。
それは、多分皆同じだと思う。
あなた「そりゃあ勿論。大切な"上司"だからですよ」
芥川「…………」
私は初め、ポートマフィアに入りたい訳では無かった。
そりゃあ勿論探偵社に居た訳だし、そしてあまりポートマフィアが好きでは無かった。
ポートマフィアについての良い噂を聞いた事が無かったから。
でも、いざ入ってみて辺りを見渡すと、其々の個性や暖かさが思っていたよりも現れていて凄く楽しかったし、皆と仲良く出来て嬉しかった。
あなた「芥川さんとは喧嘩っぽくなったり、この人なんなの?とか思った事もありましたが、、何だかんだ私は、芥川さんの事好きですよ」
芥川「……………」
自分で言っておいてなんだが、よくよく考えてみると好きという単語が入っていた事に気付き、なんだか小っ恥ずかしくなってきた。
芥川さんからの何らかの返事を待っていたが、何も返ってこなく、もしかして引かれた、?等と考えながら彼の方を向いてみると……
芥川「………っ………//」
あなた「え………」
あなた「え?!…///」
自分が思っていた反応とは程遠かったので思わず二度見してしまった。
そして、芥川さんの少しだけ赤く染まっている顔を見て、自分まで顔が火照ってくる。
あなた「え…、あ…、芥川、さん?」
芥川「……っ……/」
少しそっぽを向きながら口元辺に腕を当て、顔が火照っているのを隠しているのか、そんな仕草を見て私も再び顔に熱がこもる。
芥川「貴様は、まだ、寝ていろ………」
あなた「あ………、はい___」
『バタンッッッ』
思っていたよりも勢いよくドアが閉まり少々戸惑うが、それよりも、
芥川さんの態度の一変に戸惑いを隠せないでいた。
あなた「……………」
まるで照れを隠すかのように部屋を出ていった芥川さん。
私は、、彼の見てはいけない一面を見てしまったのかもしれない……。
(このあと芥川さんの顔がもっと赤くなっていたのを知っているのは、きっと、彼とすれ違った森さんだけ。)
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。