第7話

五話
525
2024/04/28 12:25 更新
深夜


太陽も深い眠りに落ちる頃


少女は屋上の扉の屋根の上にいた


そして下で起きてるであろう喧騒に思いをはせながら


これからきっとくる男を待つ


今日は怪盗キッドの予告の日


このビルの隣のビルである宝石の展示が行われているらしい


その宝石を盗むという予告が出たらしいのだ


そのため今いるビルの警備は手薄


中学生の少女が一人佇んでいても誰にも見つかることはない


『....そろそろかな』


あなたの下の名前がそう呟いた瞬間


バンッ


という音がして


屋上の扉が開いた


『あ、きた』


入ってきた男は頭上から降ってくる声に驚き


上を見上げる


純白のマントが翻った


『こんばんは』


キッド「...初めまして、お嬢さん」


怪盗キッドはにこりと笑って藍の瞳を見つめた


『実ははじめまして、じゃないの』


『前に貴方が予告を出して盗みに来た時、私その場にいたから』


キッド「それはそれは、そうでしたか」


『うん、だからね、今日貴方に会ったとき、感情の動き方で』


『すぐにわかった』


あなたの下の名前は深い深淵のような瞳で


まっすぐに彼を見つめる


『ね、黒羽快斗さん』


その言葉に


キッドは目を伏せる


そして不敵な笑みを浮かべて言った


キッド「....人違いではないでしょうか」


キッド「綺麗なお嬢さん?」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


二人はしばらく見つめあったかと思うと


あなたの下の名前がくすりと笑った


『残念だけど、私が人を間違えることなんてないの』


『だから貴方がいくらポーカーフェイスをしようと』


『動揺していることは丸わかり』


あなたの下の名前の髪の毛がふわりと夜風に靡かれる


キッドはまるでこの世ならざる存在のように見えるほど美しい彼女から


目が離せない


本当に今日会った彼女と同一人物なのか疑うほど


綺麗だった


キッド「はぁ...駄目ですね、マジシャンはタネがばれてはいけないのに」


キッドはやれやれとため息をつくと屋上のへりに座った


キッド「いつからお気づきになって?」


『会った瞬間に』


『なんで怪盗キッドと青子さんが一緒にいるんだろうって』


キッド「おっと、そんなに前から」


『....でもちょっとキャラ違いすぎてびっくりした』


キッド「そこには触れないでもらえると助かります」


まあでも、とキッドは手からぽんと花を出す


キッド「あっちの姿が素ですけどね」


キッド「いつもこんなんでいたら大変ですし」


そういうやつもいるけど、とキッドは苦笑いしながら


梯子に手をかけてあなたの下の名前に花を渡す


『...いっつもこんなことしてるの?』


あなたの下の名前はキッドの手の中の花をじっと見つめて


そう言った


キッド「いえ、お嬢さんにだけですよ」


『調子のいいこと言っちゃって』


あなたの下の名前は呆れながらその花を掴む


その手つきは意外に優しいものだった


『まあでも、ありがとう』


『私、人からものをもらったの久々』


そういった彼女の瞳は


胸が引き裂かれそうなほどに


切なくて、苦しい


そんな色を映していて


キッドは思わず彼女に手を伸ばす


キッド「...お嬢さ..」


その瞬間


バンッ


と大きな音がして


小さな影が入ってくる


コナン「キッド!!!!」


キッドは行き場を無くした手を隠すように梯子から手を放す


キッド「おっと、時間切れのようです」


そしてシルクハットに手をやりながら


夜風にマントをはためかせる


キッド「よう。名探偵」


キッド「ずいぶんとお早い到着で」


コナン「大してはやくねぇだろ、喧嘩うってんn...!?」


コナン「え、お姉さん!?」


コナンは上の人影に驚いて目を見開く


『え、気づくの遅くない?コナンくん...』


気づいてなかったなら逃げられたのに...と


あなたの下の名前はため息をつく


コナン「お姉さん、なんでキッドと一緒にいるの?」


コナンはにっこりと笑って


それでも圧は感じさせながらそう、問う


あなたの下の名前は苦笑しながらコナンを見る


『..ずっとお姉さんって呼ぶのやめてくれない...?』


『君のほうがほんとは年上だし笑』


その言葉にコナンは目を細める


コナン「...じゃああなたの下の名前」


コナン「なんでおめぇがキッドと一緒にいるんだよ」


あなたの下の名前が口を開くより先にキッドが答える


キッド「俺の彼j..」


『全く違います』


キッド「そんなに早く訂正されると悲しいですね」


あなたの下の名前はキッドの小言には全く触れず


コナンを上から見下ろす


『私は用事があってここに来たの』


コナン「...屋上に用事..?」


コナンは疑いの目を向けてあなたの下の名前を見る


あなたの下の名前は口元に手をやり上品に


くすりと笑うとコナンたちに背を向ける


『うーんと、そうだね、』


そしてきらびやかな夜の喧騒を見下ろして


言った


『ここから飛び降りて死ぬ事が用事かな』


キッド「え、、」


コナン「は!??」


そうしてあなたの下の名前は


予想外の言葉に驚き固まる二人をよそに


夜の深い黒に


身を投げた

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