第63話

ー復活の王様ー
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2023/03/03 13:00
 アンケートご協力ありがとうございました!

 結果の下、重要な部分を切り取って小説に書いていこうと思います。

※罫線が多発します。予めご了承ください
金田一(…ん?)

 金田一はネット際でブロックの体勢を構えながら、烏野相手コートを確認する。見た途端、目を疑った。

金田一(サーブレシーブ、二人体勢…!?)

 後衛に待ち構えているのは、澤村烏野1番西谷烏野4番だけだ。
 確かに烏野は、及川のサーブにお見合いがあることがあった。しかし単純計算で守備範囲は二倍になる。コーチも賭けに出ているのだろう。

澤村烏野1番&西谷烏野4番「来い!!」

 二人の声が重なった時、及川はサーブを打った。
 コートの左端に真っ直ぐ落ちていくボールを、澤村烏野1番が上げる。彼ら澤村&及川が好戦的な笑みで睨み合った気がした。

菅原烏野2番「田中!!」

 菅原セッター田中スパイカーにトスを上げる。
 それを打ち切り、田中烏野5番はボールが青城コートに落ちたことを確認するとガッツポーズを決めた。

及川「…さすが主将君」
 時間が進んで17青城16烏野
 東峰烏野3番が力強いスパイクを打ち、笛が鳴った。青城コートにいるメンバーが一斉に烏野コートを見る。
 その時及川に少し動揺と「やっぱりな」という感情が湧き上がった。

 影山烏野9番が持っているのは2番の札。彼に近付いてくるのは菅原烏野2番

菅原烏野2番「…ちょっと悔しいけど、俺のトスとお前のトス、打ってる時の日向の顔が違うんだ」

 言われた日向烏野10番は、頭にクエスチョンマークを浮かべている。

菅原烏野2番「…わかってると思うけど、うちの連中はちゃんと皆強いからな」

 影山烏野9番はハッと驚くと、すぐ平常心になり「…ウス」と返事した。

菅原烏野2番「よし! 勝―…」

 そこで言い止まる。
 浮かんだ言葉を打ち消すと、菅原烏野2番は息を吸って言った。
菅原烏野2番「勝つぞ」


影山烏野9番「―ウス」
 影山烏野9番は両チーム静かな中、竜巻を起こす前兆のように静かな風を靡かせていた。
 真剣な顔の裏で、日向烏野10番の言葉と菅原センパイの笑顔を思い出す。

日向烏野10番「ホラもー、お前顔怖いんだよ」

菅原烏野2番「大丈夫! 一本切ってくべー!」

 それらを思い出しながら、影山烏野9番はチームメイトの前にサッと立った。瞳からは禍々しいオーラが放たれており、チームメイトは顔を見合わせる。

 そして影山烏野9番は、何かを企てるように不気味な笑顔(本人からすれば菅原先輩の純新無垢な笑顔を再現した心算)を浮かべた。
 これには両チーム共に動揺を隠せない。

及川「ちょっ待って…プクク…今の笑顔めっちゃ写真撮りたいんだけど!」

岩泉「影山に一体何が…」

 笑い転げる及川を余所目に、岩泉はただ唖然としていた。同級生の金田一と国見は若干引いている。

金田一「影山、こんな時にどうした…?」

国見「病気か多重人格か気でも狂ったんだろ…たぶん、知らんけど
 影山烏野9番は復帰して早々サーブを打つことになった。
 ニコニコとしながらボールをグッと押さえている。その笑顔からは、先程の笑顔は思いも寄らないようなものだった。
 そして静かな眼で青城コートを見つめる。

及川「! 一本で切るよ!!」

 この影山烏野9番にサーブを続けてはならないと本能的に思ったのか、及川はチームメイトにそう言った。
 笛が鳴る。
 鈍い音と共に叩きつけられたボールは、レシーブされることを許さない。渡の腕に当たったボールは、そのままコート外へと行ってしまった。

影山烏野9番「しゃっ!」

 ガッツポーズをする影山烏野9番に、田中烏野5番は両手を上げて近付いてくる。

田中烏野5番「ウェーイ!」

 意図が理解出来ない影山烏野9番はフリーズ。

田中烏野5番「ウェーイ!!」

 それでも田中烏野5番はめげずに寄せてくる。
 奥から日向烏野10番が「ハイタッチだバカ!」と小声で行ってきたことで、影山烏野9番は漸く意図が分かったようだ。

影山烏野9番ウェーイ
田中烏野5番ウェーイ!!

 容赦ないハイタッチが体育館に鳴る。

金田一「影山がハイタッチしてるぞ…

国見「やっぱ頭打ったんじゃね?

 もう一度影山烏野9番のサーブ。
 今回もかなり強かったが、岩泉が低い体勢で上げた。続いて渡がボールをカバーし、花巻がアンダーで返す。

西谷烏野4番「チャンスボォール!!!」

 西谷烏野4番が上げたのを見て、日向烏野10番が走り出した。
 金田一は脳内で日向烏野10番の言葉をリフレインさせる。

日向烏野10番「持って来い!」

日向烏野10番「トスくれ!」

金田一(どっち―…)

 金田一が考えている間に、影山烏野9番日向烏野10番にトスを上げ彼の頭上からボールを打ち下ろした。

金田一(何も言わない!?)

 今までの合図や菅原烏野2番との速攻を見過ぎたせいか、タイミングが掴めなくなってしまっている。
 焦る金田一の後ろから、パンパンパンという手拍子が聞こえた。

及川「ハァイ落ち着いて。焦ってこっちが崩れてやる必要は無いよ。一本取り返せば問題ない」

 チームメイトの不安が、その言葉に消されていく。

金田一「! ハイ!」

渡「オス!」

岩泉「おいその顔とポーズハラ立つ、ヤメロ」

及川「酷いな!」
 22青城24烏野。烏野のマッチポイントである。

 「あと一点!」「もう一本!」という声を鎮圧させるように、岩泉は強打でポイントを取った。

岩泉「渡さねーよ!!」

 青城が23点目。烏野は次連続ポイントブレイクされてしまえばデュースに持ち越されてしまう。
 及川が冷たい表情のまま、左手でボールをバウンドさせていた。異様な空気が会場を包む。

岩泉「‪”‬お前が凹ましたい相手その2‪”‬が目の前だ」

岩泉&花巻「思いっきりでいいぞ」

及川「…分かってるよ」

 及川はフッも笑うと、打ったら指の骨が粉砕してしまいそうな勢いでサーブをぶっかました。
 狙いはサイドライン入るかアウトかのギリギリ…。

澤村烏野1番「西谷アアアアアアアアアア!!!」

 西谷烏野4番はボールに飛び出し、ボールを上げた。しかしボールは無情にも青城コートに返ってしまう。

渡「チャンスボール!」

 渡が丁寧にチャンスボールを上げた。

月島烏野11番(レシーブはきれいにセッターに返った、決定率が高いのはセンターからの速攻…!)


影山烏野9番(―だろう、多分。俺だったらそうする…でも!)

 影山烏野9番は、金田一センターに飛びつこうとする月島烏野11番のユニフォームも引っ張った。

影山烏野9番(追い込まれたこの場面、及川さんは―)

 入ってくる岩泉先輩を見ながら、影山烏野9番はブロックに飛びついた。横には月島烏野11番もいる。

影山烏野9番(岩泉さんに上げる!)

 そして岩泉が打ち下ろそうとしたボールを、完全にドシャット封じ込めた。
 笛が鳴り、烏野の得点が24から25へ。2セット目を選手した。

岩泉「くっそがァァァ! スマン!!」

 頭を掻きむしる岩泉の後ろで、花巻が「ドンマーイ次次」とやけに平坦な声で言っている。
 及川は岩泉の言葉を聞いて、「ははは」と笑った。

岩泉「何笑ってんだぶん殴るぞ」

及川「すぐ殴るっていうのやめなよ岩ちゃん」

岩泉「安心しろおめーにしか言わねーし殴んねーよ!」

松川「良い奴なのか悪い奴なのか」

 応援団の声が鳴り響く中、及川は冷静に語る。

及川「今のはセンターからの速攻がベターな攻撃だった」

岩泉「あ?」

 唐突に語り始めた及川を、岩泉が怪訝な目で見つめた。

及川「でも恐らく飛雄は今、俺がレフトに上げると読んでいた…この意味、分かる?

 今まで機械的に考えるだけじゃなく、終盤・こっちの劣勢っていう状況・岩ちゃんと俺の超絶信頼関係」

岩泉「あってたまるかそんなもの」

 及川はピースした人差し指と中指をチョキチョキ動かしながら続ける。

及川「そういう総合的な判断をしてきたってこと…!」

 烏野コートにいる菅原烏野2番影山烏野9番を見ながら、悔しがりつつ笑いながら及川は言った。

及川「あの菅原センパイ爽やか君は、飛雄に何を教えた…!

ただの孤独独裁の王様が、コート上のマトモな王様になろうとしてる…

なんだこれ、ふごいムシャクシャしてんのにこの感じ…!!」

 及川は烏野コートに向かった、宣言するように言った。

及川「はやく、早くやろう。最終ファイナルセット!!!」
 詰め込みすぎた、というのが書き終わっての感想です。

 あとホンットーにどうでも良いのですが、及川さんが「はやく、はやくやろう。最終ファイナルセット!!!」と言っているシーンがあるじゃないですか。

 あのシーンのマッキーの顔が! 顔があぁぁぁぁぁぁ!!! めっちゃめちゃめちゃ良いんですよ!! 是非拝んでください!

このチャプターの文字数:3771文字
このチャプターの制作時間:2時間\(^o^)/

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