アンケートご協力ありがとうございました!
結果の下、重要な部分を切り取って小説に書いていこうと思います。
※罫線が多発します。予めご了承ください
金田一(…ん?)
金田一はネット際でブロックの体勢を構えながら、烏野コートを確認する。見た途端、目を疑った。
金田一(サーブレシーブ、二人体勢…!?)
後衛に待ち構えているのは、澤村と西谷だけだ。
確かに烏野は、及川のサーブにお見合いがあることがあった。しかし単純計算で守備範囲は二倍になる。コーチも賭けに出ているのだろう。
澤村&西谷「来い!!」
二人の声が重なった時、及川はサーブを打った。
コートの左端に真っ直ぐ落ちていくボールを、澤村が上げる。彼らが好戦的な笑みで睨み合った気がした。
菅原「田中!!」
菅原は田中にトスを上げる。
それを打ち切り、田中はボールが青城コートに落ちたことを確認するとガッツポーズを決めた。
及川「…さすが主将君」
時間が進んで17対16。
東峰が力強いスパイクを打ち、笛が鳴った。青城コートにいるメンバーが一斉に烏野コートを見る。
その時及川に少し動揺と「やっぱりな」という感情が湧き上がった。
影山が持っているのは2番の札。彼に近付いてくるのは菅原。
菅原「…ちょっと悔しいけど、俺のトスとお前のトス、打ってる時の日向の顔が違うんだ」
言われた日向は、頭に?を浮かべている。
菅原「…わかってると思うけど、うちの連中はちゃんと皆強いからな」
影山はハッと驚くと、すぐ平常心になり「…ウス」と返事した。
菅原「よし! 勝―…」
そこで言い止まる。
浮かんだ言葉を打ち消すと、菅原は息を吸って言った。
菅原「勝つぞ」
影山「―ウス」
影山は両チーム静かな中、竜巻を起こす前兆のように静かな風を靡かせていた。
真剣な顔の裏で、日向の言葉と菅原の笑顔を思い出す。
日向「ホラもー、お前顔怖いんだよ」
菅原「大丈夫! 一本切ってくべー!」
それらを思い出しながら、影山はチームメイトの前にサッと立った。瞳からは禍々しいオーラが放たれており、チームメイトは顔を見合わせる。
そして影山は、何かを企てるように不気味な笑顔(本人からすれば菅原の純新無垢な笑顔を再現した心算)を浮かべた。
これには両チーム共に動揺を隠せない。
及川「ちょっ待って…プクク…今の笑顔めっちゃ写真撮りたいんだけど!」
岩泉「影山に一体何が…」
笑い転げる及川を余所目に、岩泉はただ唖然としていた。同級生の金田一と国見は若干引いている。
金田一「影山、こんな時にどうした…?」
国見「病気か多重人格か気でも狂ったんだろ…たぶん、知らんけど」
影山は復帰して早々サーブを打つことになった。
ニコニコとしながらボールをグッと押さえている。その笑顔からは、先程の笑顔は思いも寄らないようなものだった。
そして静かな眼で青城コートを見つめる。
及川「! 一本で切るよ!!」
この影山にサーブを続けてはならないと本能的に思ったのか、及川はチームメイトにそう言った。
笛が鳴る。
鈍い音と共に叩きつけられたボールは、レシーブされることを許さない。渡の腕に当たったボールは、そのままコート外へと行ってしまった。
影山「しゃっ!」
ガッツポーズをする影山に、田中は両手を上げて近付いてくる。
田中「ウェーイ!」
意図が理解出来ない影山はフリーズ。
田中「ウェーイ!!」
それでも田中はめげずに寄せてくる。
奥から日向が「ハイタッチだバカ!」と小声で行ってきたことで、影山は漸く意図が分かったようだ。
影山「ウェーイ」
田中「ウェーイ!!」
容赦ないハイタッチが体育館に鳴る。
金田一「影山がハイタッチしてるぞ…」
国見「やっぱ頭打ったんじゃね?」
もう一度影山のサーブ。
今回もかなり強かったが、岩泉が低い体勢で上げた。続いて渡がボールをカバーし、花巻がアンダーで返す。
西谷「チャンスボォール!!!」
西谷が上げたのを見て、日向が走り出した。
金田一は脳内で日向の言葉をリフレインさせる。
日向「持って来い!」
日向「トスくれ!」
金田一(どっち―…)
金田一が考えている間に、影山は日向にトスを上げ彼の頭上からボールを打ち下ろした。
金田一(何も言わない!?)
今までの合図や菅原との速攻を見過ぎたせいか、タイミングが掴めなくなってしまっている。
焦る金田一の後ろから、パンパンパンという手拍子が聞こえた。
及川「ハァイ落ち着いて。焦ってこっちが崩れてやる必要は無いよ。一本取り返せば問題ない」
チームメイトの不安が、その言葉に消されていく。
金田一「! ハイ!」
渡「オス!」
岩泉「おいその顔とポーズハラ立つ、ヤメロ」
及川「酷いな!」
22対24。烏野のマッチポイントである。
「あと一点!」「もう一本!」という声を鎮圧させるように、岩泉は強打でポイントを取った。
岩泉「渡さねーよ!!」
青城が23点目。烏野は次連続ポイントされてしまえばデュースに持ち越されてしまう。
及川が冷たい表情のまま、左手でボールをバウンドさせていた。異様な空気が会場を包む。
岩泉「”お前が凹ましたい相手その2”が目の前だ」
岩泉&花巻「思いっきりでいいぞ」
及川「…分かってるよ」
及川はフッも笑うと、打ったら指の骨が粉砕してしまいそうな勢いでサーブをぶっかました。
狙いはサイドライン入るかアウトかのギリギリ…。
澤村「西谷アアアアアアアアアア!!!」
西谷はボールに飛び出し、ボールを上げた。しかしボールは無情にも青城コートに返ってしまう。
渡「チャンスボール!」
渡が丁寧にチャンスボールを上げた。
月島(レシーブはきれいにセッターに返った、決定率が高いのはセンターからの速攻…!)
影山(―だろう、多分。俺だったらそうする…でも!)
影山は、金田一に飛びつこうとする月島のユニフォームも引っ張った。
影山(追い込まれたこの場面、及川さんは―)
入ってくる岩泉を見ながら、影山はブロックに飛びついた。横には月島もいる。
影山(岩泉さんに上げる!)
そして岩泉が打ち下ろそうとしたボールを、完全にドシャット封じ込めた。
笛が鳴り、烏野の得点が24から25へ。2セット目を選手した。
岩泉「くっそがァァァ! スマン!!」
頭を掻きむしる岩泉の後ろで、花巻が「ドンマーイ次次」とやけに平坦な声で言っている。
及川は岩泉の言葉を聞いて、「ははは」と笑った。
岩泉「何笑ってんだぶん殴るぞ」
及川「すぐ殴るっていうのやめなよ岩ちゃん」
岩泉「安心しろおめーにしか言わねーし殴んねーよ!」
松川「良い奴なのか悪い奴なのか」
応援団の声が鳴り響く中、及川は冷静に語る。
及川「今のはセンターからの速攻がベターな攻撃だった」
岩泉「あ?」
唐突に語り始めた及川を、岩泉が怪訝な目で見つめた。
及川「でも恐らく飛雄は今、俺がレフトに上げると読んでいた…この意味、分かる?
今まで機械的に考えるだけじゃなく、終盤・こっちの劣勢っていう状況・岩ちゃんと俺の超絶信頼関係」
岩泉「あってたまるかそんなもの」
及川はピースした人差し指と中指をチョキチョキ動かしながら続ける。
及川「そういう総合的な判断をしてきたってこと…!」
烏野コートにいる菅原と影山を見ながら、悔しがりつつ笑いながら及川は言った。
及川「あの菅原センパイは、飛雄に何を教えた…!
ただの孤独の王様が、コート上の王様になろうとしてる…
なんだこれ、ふごいムシャクシャしてんのにこの感じ…!!」
及川は烏野コートに向かった、宣言するように言った。
及川「はやく、早くやろう。最終セット!!!」
詰め込みすぎた、というのが書き終わっての感想です。
あとホンットーにどうでも良いのですが、及川さんが「はやく、はやくやろう。最終セット!!!」と言っているシーンがあるじゃないですか。
あのシーンのマッキーの顔が! 顔があぁぁぁぁぁぁ!!! めっちゃめちゃめちゃ良いんですよ!! 是非拝んでください!
このチャプターの文字数:3771文字
このチャプターの制作時間:2時間\(^o^)/
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。