朝起きたら、
目元が濡れていた。
薄っすらとある
夢の記憶を思い出す。
今はいない、
お父さんとお母さん、
そして弟と
旅行に出た夢を見た。
その夢では
私を含めたみんなが
笑っていて、
そんなところで、
ふと目が覚めた。
そう言えば、
あの日から春千夜は
うちに泊まっていた。
けど、春千夜にも
" 家族 " がいる。きっと
「 だからこそ、
帰さなければ。 」
なんて、今更
無責任なことを思う。
絶対的な猛反対。
きっと春千夜からは
否定の文字しか
出てこないだろう。
けど、
もちろん ...
それだけの理由じゃない。
私はもう、
何も失いたくなかった。
そんな、自分の
醜い我 儘 だった。
春千夜への配慮も含めて
私はいつにも無く
強い口調で
そう、突き放した。
もちろん、
春千夜の顔には
「 意味不明 」
とでも言うかの様な
そんな表情が浮かんでいた。
春千夜の
「 見捨てないで 」
とでも言いそうな
歪んだ表情を見て
私もまた、
顔を歪めた。
次々と並べられる
春千夜の言葉に
頭が上がらなくなった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!