昇降口で上靴に履き替え、僕は1人で自分のクラスの教室に向かっていた。
ちなみに聖一は校門の前で、1年前から付き合っている彼女と会って、先に2人で自分たちのクラスに行った。聖一と彼女は同じクラスらしい。
聖一は途中まで一緒に行こうぜ、と言われたけどさすがに断った。
僕がいたら明らかに邪魔になるからな。
不意に男子生徒のそんな声が聞こえた。
ついでに、ついさっき聞いたばかりの名前が耳に入ってくる。
気になって振り返ると、そこには学校のブラウスの上に白のパーカーを着こなしている女子がいた。肌は白く、髪は茶色に染めて肩口まで伸ばしている。
綺麗な顔立ちをしているけど、可愛さも兼ね揃えており、ぶっちゃけかなりの美少女だ。
廊下ですれ違う男女の生徒たちに次々と声をかけられるパーカー美少女。
彼女は愛想良く笑いながら、生徒たち一人一人に手を振っている。
パーカー美少女は美少女にありがちな近づきにくい空気はなく、むしろ親しみやすい雰囲気を身に纏っていた。
なるほど・・・・・。あのパーカー美少女があなたの名字あなたなのか。
今初めてはっきりと彼女を見た気がする。まさかあんな美少女だったなんて・・・・・。
ところで彼女がブラウスの上から着ているパーカーは完全な校則違反。
でも、全校生徒の中で彼女のみパーカーの着用が黙認されている。
・・・・・というのも、当然ながらあなたの名字がパーカーを着て登校してきた当日は教員に注意されたり没収されたりしていたんだけど、それでもあなたの名字は毎日ずっと同じパーカーを着続けてきたから、教員たち揃って匙を投げたらしい。
すざましい執念だよな。そんなにパーカーにこだわりがあったのか。
加えて、あなたの名字あなたには熱狂的なファンがいる。
たった今彼女に声を掛けているような連中のことだ。
あなたの名字は1年生の頃から数々の問題行動を起こしてきた。
しかしそれが、一部の生徒のツボにハマり、熱烈なあなたの名字ファンを生み出しているらしい。
これはさっき聖一から聞いたことなんだけど、既に新入生にも何人かファンがいるとか。
たった1週間でどんなことをしたらこうなるんだ。
一方、そばで男女4人組がバリバリにあなたの名字の悪口を言っていた。
熱烈なファンがいると言うことは、逆に強いアンチがいてもおかしくない。
あなたの名字は良くも悪くも目立つ生徒なんだから。
ため息混じりに呟く。面倒なことが起きなきゃいいけど・・・・・。
それからファンたちと話しているあなたの名字に背を向けて、僕は先に教室へと向かった。
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今回も見ててくださり有難うございます
やっとあなたちゃん登場させれました!
これからも☆と♡、僕のフォローもよろしくお願いします
( ✌️◜ω◝ 👌 )
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。