in 桃太郎機関 京都支部
今日も変わらず、
鬼の報告があったら現場に行き、
終わったら通常の書類整理。
ここの副隊長を任されてから
ずいぶん経って、普通も異常も
それなりに経験してきたつもりだ。
目の前にある桃の死体。
ここまでの異変はなかなかない。
上からいきなり言われた。
「 蘇らせろ 」
その他、一切のことを言われず
私も唾切隊長も何も分からず
この死体を引き取った。
「この隊長のことを知る必要はない」
上お得意の無言のメッセージ。
自動ドアを通って、
唾切隊長の部屋から会議室に
向かって歩いた。
途中で部下にすれ違って
唾切隊長の居場所を聞かれたが、
適当に言っておいた。
研究室にいるときの唾切隊長に
無闇に話しかけたら殺される。
…でも、最近の唾切隊長は
優しい。今までより気にかけて
くれている気がする。
きっと、奥さんのおかげなんだろうな。
一緒にご飯食べたのが懐かしい…
廊下を走ってきたんだろうな。
息はそこまで上がっていないけど
頬がほんのり赤い。
…配属されたときから思っていた
けれど、この世界でここまで
健気で可愛げがある子は珍しい。
そう思えば、背伸びたな。
つか、私の身長越されたか?
私が副隊長になった年に来た
実習生で、適当なことを話したら
本当に京都支部に来た子だ。
…にしても、戦闘部隊の人って
男女関係なくみんな長身だよな…
私も161センチではあるんだけど。
自動ドアのセンサーを反応させ、
部屋に入った。
そこには、屍だった男が
空中でふわふわと浮いていた。
唾切隊長がパチン、と指パッチンを
すると手から細菌が現れ、
剣が生成された。
剣の生成なのか…この桃の能力。
剣の等身は1メーターと半分
くらいってところか。
細菌だから剣の鋭さは
この桃が使ってたときと
変わっていないはず。
…つか、瓶って剣で真っ二つに
割れるものなのか。
バラバラになりそうなもんだけど。
唾切隊長の左手が上がり、
それに対応して操られている
桃の左手も上がった。
構えが特殊だな…
ビリヤードにそっくり。
唾切隊長の声が聞こえたのと
ほぼ同時に瓶に亀裂が入っていた。
それも音がない。
まるで人がいなかったみたいに
静かな空間だった。
瓶の跡を見ると、刃が入った
最初の方が角度が大きいことに
気がついた。
それに、真っ二つに割れていない。
剣自体は瓶の半分の高さくらいで
止まって、亀裂だけが瓶の
底面まで届いたみたいだ。
…初撃が重かったってことか。
…本当に根っからの研究者だな。
戦闘部隊より、科学研究班の方が
向いてそうだなって思うけれど…
先輩は優しいですもんね。
自分の好きより、同僚との思い出を
優先できるんすから。
私には分からないことも、
察せられないことも多いっすけど…
先輩みたいに…
道端にある花から新しいことを
思いつけたり、誰にでも平等な
接し方ができるようになりたいっす。
…けど。














編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。