第2話

− セカイ −
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2024/05/13 12:07
 
🍵side


朝は、だいたい何も食べずに出かける。


単純にお腹が空かないからだけど

食べる気力も沸かない程、会社に行くのが俺は嫌だ。
 
# s t . 🍵
……………( 💻
死んだ目をして、今日も働く。

奴隷のように、重い足を引きずりながら歩く。



あぁ、早く帰ってセカイを描きたい。


そんなことばかり考えるから、ぼーっとして、仕事が更に進まなくなる。
 
 
# s t . 🍵
ただいまー、
誰もいない家に帰り、返事の返ってこない言葉を発する。


でもそんなことはどうでも良くて、早々に着替えて部屋に行く。
 
# s t . 🍵
…、
俺が描いているのは、「セカイ」という名の絵だ。



10年前、当時の俺の親友と語り合ったセカイ。

彼は、「みんなが笑顔でいられる世界」をつくるのが夢だった。


だから俺は、絵としてそのセカイを描いている。


……彼が、いなくなった今も。ずっと。
# s t . 🍵
ん−…
通常より少し大きめのキャンバスに、緑の筆を走らせる。


セカイの内容はいたって簡単

青い空、白い雲、緑の草木、色とりどりの花。
ずっとずっと、同じような絵を描いている。


…俺の想像する「笑顔でいられる世界」は、こんな簡単なものしかできない。

俺は、彼みたいに、想像力豊かではないから。


# s t . 🍵
……こんなもん、かなぁ
完成したセカイに目を通す。

このセカイには、少し洋風な家も描いてみた。


…ここに、彼が住んでいるかもしれないという想像を乗せて。

今回は、結構自信作ができた、と自分で胸を張る。

そして、時計の針が指している時間に気づく。
# s t . 🍵
ぁ、やばっ…
セカイを描いていると、つい時間を忘れてしまうのだ。


晩ご飯なんて頭になくて、明日仕事に遅れてしまわないようにということしか頭になくて

結局、今日は一食も食べずに終わった。
# s t . 🍵
……
 
 
セカイのことを考える。
俺があそこに行けたら、どれだけ楽になるだろう。
どれだけ、のびのびと生きられるだろう。
出かける場所は会社しかなくて、食べることも笑うこともない現実。
ここにいるより、俺の描いたセカイにいるほうが、よっぽど楽だろうな
…そして、俺の描いたセカイに、彼もいたら。
俺はどれだけ幸せになれるだろう。
俺は、どれだけ報われた気持ちになるだろう。
# s t . 🍵
…また、会いたいよ
「みことちゃん」に会いたい。
みことちゃんは、いなくなったりなんてしてない。
きっとどこかで、元気に暮らしてるんだ。
俺の描いたセカイで、元気にしてるんだ。
 
 
# s t . 🍵
ん…?
肌に感じた違和感で目が覚める。


ベッドにいるというより、外の地面で寝ているような感覚だ。

それに、なんか眩しいし
手にも、草を触っている感覚があるし
# s t . 🍵
ん"ー……なに…
思い瞼をこすりながら、目を開けると
# s t . 🍵
………は
青い空、白い雲、緑の草木、色とりどりの花。

そして、洋風の小さな家。










目が覚めると俺は、俺の描いたセカイの中にいた。
 

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