第2話

二人きりの部屋 本編(※微キラルビ)
1,389
2024/05/26 10:39 更新
紫霊side








紫霊
紅魔館のロビーの柱にもたれかかって、相棒の赤髪が先程出ていった玄関の方をぼーっと見つめる。
相棒の赤髪というのは、ご存知の通りルビーのことだ。
今日は依頼は入っていないと言っていたから、十中八九あのバカの喫茶店にでも行っているのだろう。
俺の相棒のルビーと金髪バカ…キラは、どうやら付き合っているらしい。
あいつは相変わらずバカなもんだから、この前紅魔館で食事会をしていた時うっかり口を滑らせていた。
それからは随分騒がしかった。
ただ、意外にも2人に奇異の目を向けるやつはいなかったのを覚えている。
流石は幻想の郷…幻想郷といったところか。
…でも
それを聞いた時から…俺の心は何故か、キラに対する嫌悪とルビーへの何かで埋め尽くされている。
想い人を横目に見て幸せそうな顔をするキラに虫唾が走る。
騒ぎ立てながら「俺のものだ」と言わんばかりに後ろからルビーに抱き着くキラに虫唾が走る。
俺の相棒に想いを伝えたキラに虫唾が走る。



バカな恋人をあしらいながらも、満更でもなさそうに頬を赤く染めるルビーが気に食わない。
俺と話していたのに、キラがキラがと言ってすぐそいつの元に向かうルビーが気に食わない。
俺の相棒のくせにキラのものになったルビーが気に食わない。
紫霊
クソ
俺の方がルビーとの付き合いは長い。
それなのに…
…。
紫霊
(俺はあいつの相棒だ…)
紫霊
(俺の方が上だ…)
紫霊
(ルビーは…あいつは…)
紫霊
俺のものだ…
咲夜
紫霊!
紫霊
っ!
その時、突然この館のメイド長から大声で名前を呼ばれる。
紫霊
ってなんだ、お前か…。
紫霊
急に大声出すなよ、びっくりしただろうが。
咲夜
さっきからずっと呼んでたわよ。
はぁーっと溜息をつき、呆れたという顔で俺の方を見る。
咲夜
全く…あなた最近、ぼーっとしてることが多いわよ。
咲夜
やって欲しいことだってあるんだから…しっかりしなさいよ。
紫霊
あぁはいはい、悪い悪い。
咲夜
全く悪びれていない様子の俺を見て、目の前の番犬は肩を落とす。
咲夜
はぁ…まぁいいわ。
咲夜
妹様が呼んでたから、相手してきて頂戴。私はしばらくしたらお茶でも持っていくわ。
紫霊
…そうか。わかった。
紫霊
じゃあ行ってくる。
メイド長には目も向けず、そのまま俺は金髪のちびコウモリが目を輝かせて待っているであろう地下室に向かった。







咲夜
(…紫霊がなぜ、最近ずっとあんな様子なのかは…大体分かっている…)
咲夜
(あの虚ろな目…視界には無いただ一点を見つめているような目…)
咲夜
(あれほどでは無いけれど…お嬢様にも向けられている、あの感情は…)










咲夜
依存と…執着。
紫霊side







地下の訓練場
フラン
…もー。
フラン
真面目に相手してよ、紫霊。全然ちゃんとしてくれないじゃん!
目の前の幼い吸血鬼は、不服そうに頬を膨らましながら壁にもたれかかって座り込む。
紫霊
あぁ…悪い悪い。
フラン
何それ…
紫霊
フラン
フラン
…ねぇ
しばらく間を置いて、フランが口を開く。





フラン
ルビーのこと?
紫霊
っ!?
こいつが口にしたその名前に過剰に反応してしまい、目を見開いてフランを見つめる。
紫霊
…そうだけど。
フラン
ふーん…。
目の前のそいつは、見た目にそぐわない憂い顔を浮かべ天井を見る。
フラン
…紫霊ってさ
フラン
ルビーに恋してるんだよ。
紫霊
…は?
外の世界の少女漫画の読み過ぎだろうか。突拍子もないことを言い出すフランに、俺は思わず間抜けな声が漏れる。
フラン
だってそうじゃん。
フラン
結構前から紫霊、ルビーのことずっと見てたり、こうやって私と話してる時もよくルビーのこと話の中に出してきたり。
フラン
最近だって、キラに嫉妬してるんでしょ?
これまた大人っぽい余裕そうな笑みを浮かべながら、口角を上げて俺の方に視線を移す。
紫霊
…嫉妬…
紫霊
(…そうか。)
ルビーに対する、あの得体の知れない思いは恋だったのか。
キラに対する、あのどうしようもない嫌悪感は嫉妬だったのか。
紫霊
フラン
…?
フラン
…し、紫霊?
紫霊
盗られた…?
フラン
っ!
ルビーは俺の相棒なのに?
俺の方がルビーのことを好きなのに?
この世で1番ルビーのことを好きなのは俺なのに?
それなのに…
紫霊
(…なんだ、単純なことじゃんか。)
紫霊
(俺は、ルビーのことが好きなんだ。)
紫霊
(あぁ…これで全部繋がった。)
紫霊
(あいつに…俺のルビーが盗まれた。だからこんなに…)
フラン
…で、でも紫霊…ルビーはもうキラが…
紫霊
フランがその名前を口にした瞬間、自分の中の何かが切れ、衝動的にフランの顔のすぐ隣の壁を思い切り殴る。
フラン
…っ…
紫霊
…キラが…なんだって…?
目と鼻の先にあるその顔は、怯えた様子で俺のことを見つめている。
その瞳は恐怖のせいか、小刻みに震えている。
フラン
…なんでも…ない…
フランのその怯えたか細い声と、自らの拳から流れ出る血を見て、段々と頭が冷えていく。
紫霊
…ごめん。
フラン
…ううん。
紫霊
ちょっと俺…部屋行ってるわ。
フラン
…うん。
おぼつかない足取りで、俺はこの部屋を後にした。
紫霊side







紫霊の部屋
紫霊
(そうか…俺は…ルビーのことが好きだったのか。)
仕事柄他人に情を移すなんてことなかったから、「恋」だと言われても、正直あまりピンときていない。
でも、今まで俺が暗殺者アサシン時代の任務の中で見てきた男女のあの煌めきと同じだと言うなら、納得はできる。
紫霊
…ああぁ…
あいつが憎い。
ルビーの隣にいるあいつが。
どうにかしてあのポジションを、ルビーを奪い取りたい。





でもどうやって?






あいつを消せばいい。





そうだ。簡単な話。
隣がいなくなれば、俺はそこに行ける。
正真正銘俺はルビーの相棒だと、真にルビーの隣にいるべきは俺だと。
ルビーは俺のものだと。そう証明できる。
紫霊
…。







紫霊
待ってろよ…ルビー。











































































霊夢
…キラがいなくなって…もう一週間…。
紅魔館のロビーには、重苦しい空気が流れていた。
一週間前、霊夢たちの仲間であり、ルビーの恋人であるキラが突如失踪したのだ。
紅葉
…キラ…
レミリア
紅葉…。
魔理沙
…なぁ、ほんとに…何も手がかりがないのか…?
普段より深く魔女帽子を被った魔法使い、霧雨魔理沙が口を開く。
霊夢
…えぇ…
霊夢
いつどうやっていなくなったのか…それすら分からない…。
霊夢
右手を腰に当てたまま、霊夢はちらっと左側に目をやる。
その視界には、ソファに横たわって塞ぎ込んだ様子のルビーがいた。
そのすぐ側には、ソファの背もたれにもたれかかってルビーのことを心配そうに見つめている紫霊がいる。
紫霊
…ルビー…
紫霊
…大丈夫か…?
ルビー
紫霊
紫霊
…せめてなんか…水くらいは飲めよ。
ルビー
紫霊がいくら話しかけても、ルビーは微動だにしない。
霊夢
…昨日から、哀音と妖夢にキラの魔力の残影を追ってもらってるわ。あの子はエネルギーに敏感だから…。
霊夢
…正直、藍の鼻でも追い切れなかったから…不安ではあるけど…
紫霊
それ以上は…
霊夢の言葉を遮り、紫霊は顔を伏せたまま続ける。
紫霊
…言わなくてもいいだろ。
霊夢
霊夢
…そうね。無粋だったわ。
ルビー
キラは…
その時、ルビーが小さく口を開く。
何日も泣いていたのだろう。その声は酷く掠れている。
ルビー
…キラは…無事なのか…。
紫霊
…ルビー。
紫霊
ルビーのその言葉を聞いて、紫霊は少し顔を曇らせる。
ザキ
キラは無事だ。
全員
その時、今の今まで全く喋っていなかったキラの相棒、ザキが口を開く。
ザキ
キラは…あいつは無事だ。
ザキ
そう…俺は信じる。
目を伏せたまま、震えた、でもはっきりと思いの籠っているその声で、ザキはそう告げた。自らにも言い聞かせるように。
全員
…。
霊夢
…えぇ、そうね。あいつならきっと大丈夫よ。
霊夢
私たちは…あいつを…キラを信じて、帰ってくるのを待ちましょう。
真っ直ぐとした力強い目で、霊夢はそう言う。博麗の巫女としての強さがよく分かる。
紅葉
…そうだね。
レミリア
…みんな…暫くは、うちに泊まっていくといいわ。
レミリア
咲夜たちにも、もう話しているから。
霊夢
えぇ…助かるわ。ありがとう。
霊夢
じゃあ、今日はもう、各々の部屋に戻りましょうか。
魔理沙
…私は、パチュリーの方に行ってくるな。
魔理沙
魔法で何とかして手がかりをつかめないか…研究してくる。
霊夢
…いいけど…程々にね。
霊夢は、自分の親友の目の下にある隈を気にしながらも、止めることはせず、自分も部屋に戻るため階段を昇って行った。
そのまま、ルビーと紫霊を除いた他数名も、各々の部屋に戻るためロビーを後にした。
紫霊
紫霊
…ずっと、動いてないのか?
全員がいなくなってからしばらくして、紫霊がゆっくり口を開く。
ルビー
…少しは…動いている…。
紫霊
…そうか。
紫霊
紫霊
…毛布持って来てやるから…ちょっと待ってろよ。
はぁ、と小さくため息をつきながらも、どこか愛おしそうな表情を浮かべて、毛布を取りに自分の部屋へ戻って行った。
ザキの部屋の前
ザキ
咲夜
ザキ。
ザキ
ザキがしばらく寝泊まりする仮の自室に入ろうとドアノブに手を掛けた時、どこからともなく現れた咲夜に引き止められる。
ザキ
…メイド長か。なんだ?
ドアノブから手を離し、体ごと咲夜の方に向けそう聞く。
咲夜
あなたに話があるの。
咲夜
部屋、入ってもいいかしら。
真剣な眼差しでザキのことを見つめる。
ザキ
ザキ
…あぁ。わかった。
何か心当たりがあるように目を逸らすと、ザキはまたドアノブに手を伸ばし、咲夜と共に部屋に入っていった。


























魔理沙
な!?霊夢までいなくなった!?
数日後。魔理沙のその叫びが紅魔館中に響き渡る。
紅葉
あの…あの、霊夢の…部屋に、行ったら…
かなり混乱しているのか、過呼吸気味になり途切れ途切れに言葉を発する紅葉を、魔理沙は背中をさすって落ち着かせる。
魔理沙
大丈夫だ紅葉、大丈夫だから…一旦落ち着け。
紅葉
落ち着けないよ!無理だよ!
紅葉
紅葉
…違うの魔理沙…いなくなっただけじゃなくて…
魔理沙の服を掴むその手は、小刻みに震えている。






紅葉
…血が…壁に…
魔理沙
っ!
紅葉のその言葉を聞いて、魔理沙も絶句し、どんどん顔色が悪くなる。
魔理沙
魔理沙
…嘘…だよな…?
紅葉
…こんな嘘…言うわけないよ…。
魔理沙
…。
















ザキ
おい紅葉!白黒!
その時、正面にある階段から切羽詰まった表情をしたザキと咲夜が駆け降りてきた。
魔理沙
…ザキ…咲夜…
魔理沙
…どうし
ザキ
詳しい話はあとだ!お前ら吸血鬼達連れて早くここから離れろ!
ザキ
俺はルビーを連れて後から追いつく!
魔理沙の言葉を遮り、ザキは大声を上げて早口で指示をする。
魔理沙
は?いや…急に…なんで…
咲夜
私が時を止めてできるだけみんなを遠くに連れていく!でもあまり遠距離を私だけで移動させることは出来ない…
咲夜
だから早く急いで!
魔理沙の疑問には答えず、いつの間にか寝ているレミリアとフランを抱えた咲夜が外に向かって走り出す。
魔理沙
おい待て、少しくらい説明したら…
ザキ
俺らは博麗のことを知っている!
魔理沙・紅葉
ザキ
そして…こういう言い方をしてやる…






ザキ
今この場にいなくて…誰にもバレず人を殺し連れ去る芸当が出来るやつは誰だ。


















ザキ
ザキ
…それで、話というのはなんだ。
咲夜
…だいたい察しがついているでしょ。
ザキ
…あぁ…そうだな。
壁にもたれかかって腕を組み、メイド長の次の言葉を待つ。








咲夜
キラを連れ去った犯人に…心当たりがあるんでしょう。
ザキ
…あぁ。
咲夜
私もよ。
ザキ
咲夜の想定外の返答に、ザキは思わず目を見開く。
咲夜
…でも…お嬢様はあいつのことを気に入っているし、何より信用している。
咲夜
もちろん、いつかは伝えなければならないわ。でも、今すぐである必要はない。私はできるだけお嬢様を傷付けたくないの。
咲夜
だから…あいつと1番付き合いが長くて、もう勘づいているであろうあなたに協力して欲しい。
表情1つ変えず淡々と告げる咲夜に、ザキは少しずつ険しい顔になっていく。
ザキ
…ひとつ聞かせろ。なぜお前はあいつが犯人だとわかった。
ザキ
お前の言う通り、俺はあいつとは暗殺部隊の時からの付き合いだ。
ザキ
痕跡が何もなくキラがいなくなった時点で、そんなことができるのは…そんなことをするのはあいつだけだろうと、予想はついていた。
ザキ
だが…お前はそうでは無いはずだ。
ザキ
なぜ…気づいた。
咲夜
…。
普段よりさらに低い声で、俯きながらメイド長を問い詰める。
それを聞かれると、咲夜は初めて答えずらそうに眉をしかめた。
咲夜
…あいつが…
咲夜
紫霊が、ルビーに向けている視線に…執着に、気がついていたから。
ザキ
咲夜
紫霊が、キラに向けている嫌悪に…嫉妬に、気がついていたから。
咲夜
動機があるのは、キラに嫉妬していた紫霊だけ。だから疑うことが出来た。それだけよ。
ザキ
…そう…か。
ザキ
ザキ
わかった。協力する。
咲夜
ザキは覚悟を決めたように、顔を上げ咲夜の目を真っ直ぐ見つめた。
咲夜
…えぇ。頼りにしてるわよ。




















咲夜
(本当は…次に狙われるであろう霊夢が殺られる前に動きたかったのに…)
咲夜
(まさか、こんなに早く行動するとは…)
咲夜
(こんなことになるなら、もっと急げば良かった…!)
咲夜
(…でも…私でも、そこまで時間を巻き戻すことは出来ない…)
咲夜
(この状況になってしまったのなら、その時の最善の選択を取る。それが…私のできることよ。)
咲夜
(もう後がない…でもそれはつまり、まだ最悪な状況では無いということ。)
咲夜
(こっちはちゃんとやるから…ルビーのことは頼んだわよ…ザキ。)
魔理沙
咲夜!パチュリー達連れてきたぞ!
魔理沙が、不安そうな顔をしたパチュリーと小悪魔を連れて奥から走ってくる。
こういう時の冷静さと理解の早さは、流石、博麗の巫女と異変を解決し回っていた魔法使いといったところだ。
咲夜
えぇ、ありがとう。
紅葉
さ、咲夜…
紅葉
僕…どっちか抱えるよ。
咲夜
そう。なら、妹様の方を頼んだわ。
声は震えているものの、力強い意思の篭った目で咲夜を見つめる。
そんなところに、紅葉の芯の強さを感じる。
そうして咲夜たちは、紅魔館のロビーから消えた。



















ザキ
…よし…メイド長たちは行ったな…。
ザキ
(ルビーの部屋は確か…2階の東側の角部屋だったな…。)
ザキ
(紫霊の部屋とは反対…急げば大丈夫だ…。)
ザキが正面の階段から2階に駆け上がろうと振り向いた時、手すりを伝ってルビーがフラフラと降りてくる。
ザキ
な、ルビー!?
ザキ
お前、大丈夫なのか…?
ルビー
…朝起きたら…博麗の気配を感じなかった…
ルビー
…それにさっきから…慌ただしい声が聞こえていたからな…
ルビー
…流石に…気になるだろ…。
ルビー
…十六夜達が行くまで…待っていたんだ…。
掠れた声を絞り出し、ルビーはそう答える。
ザキ
(…キラがいなくなって、まだ精神的にギリギリなはずなのにこの判断力…流石だな…。)
ザキ
…聞こえていたんだな。
まだ喋るのは辛いのだろう。ルビーは俯いたまま、無言で頷く。
ザキ
…そうか。それなら話は早い。
ザキ
走れそうか?
ルビー
…すまない…体力が落ちてしまって…それはまだ…
ザキ
…そうか。
ザキ
なら、俺がお前のことを担ぐ。早く行くぞ。
そうしてザキがルビーのもとへ駆け寄る。
その時、少し顔を上げたルビーの目がザキの後ろにあるものを捉え見開かれた。
ルビー
ザキ、後ろ…!
ザキ
ザキが何事かと振り向いたその瞬間、紫髪の男の手に握られている血の着いたナイフで、ザキの首が掻っ切られ血が飛び散る。
ザキ
…は…?
ザキ
(気配を全く感じなかった…それなのに…なぜ…こんな近くに…)
ザキ
(ここまでの技術はなかったはずだろ…。)
ザキ
(クソッ…もっとちゃんと警戒していれば…!)
ザキ
クソ、が…おまえ…。
床に倒れ込み、首を抑え紫霊を睨みつける。
相当深く切り込んだのだろう。ザキの首から流れ出る血が止まる様子は無い。
紫霊
まぁそうだよなー。ザキは気づいちゃうよな。俺が犯人だって。
紫霊
でもまさかメイド長様にも気付かれるなんてな。あのクソ犬…。
紫霊
お前はもう助からねぇよ。元暗殺者アサシンなら分かるだろ。
ザキ
…クソ…
視線だけをザキに向け、自分の足元にいるその死にかけの人間を見下ろす。
紫霊
紫霊
…ははっ。
紫霊
でもやっと…これで2人きりの時間が出来たな…
紫霊
…ルビー。
紫霊の眼中には、もう虫の息となったザキなど微塵も映ってないのだろう。
恐怖に塗れた顔で茫然と立ち尽くしているルビーのもとに、紫霊はさっきとは別人のような柔らかい笑みを浮かべ近付く。
ルビー
…し、れい…
紫霊
もー。そんな怖がるなよ。
紫霊は愛おしそうに、軽く笑いながらルビーを宥める。
ルビー
…なぜ…こんなことをした…。
怒りを含んだその声を絞り出しながら、精一杯紫霊を睨みつける。
紫霊
理由なんて別にいいじゃん。
紫霊
俺はルビーのことが大好きだから、お前に集ってるアイツらが邪魔だっただけ。
淡々とした表情で紫霊は理由を告げる。
ルビー
…だけ…だと…
ルビー
…そんな理由で…お前は…
ルビー
キラを…
紫霊
あ゙?
ルビー
…ッ…
ルビーが口にしたその名前を聞いた瞬間、紫霊は目の色を変えルビーを睨みつける。
すぐ目の前の人物から溢れ出るそのあまりの威圧感に、ルビーでさえも萎縮してしまい背筋が凍る。
紫霊
…すぐお前はそうやって…キラがキラがって…
紫霊
ふざけんな…。
紫霊はすぐ隣の柱にナイフを思い切り突き刺し、両手をゆっくりルビーの首元に伸ばし首を絞める。
ルビー
ッ…ぐ…
紫霊
紫霊
まぁ…もう…いいか…
紫霊
もうお前は…俺のものだもんな…。
ルビーの首からゆっくりと手を離し、壁に突き刺したナイフを手に取ってそのままルビーを優しく抱きしめる。
ルビー
ッ…
ルビーは恐怖のあまり、身体が震え息が詰まる。
紫霊
(あぁ…ルビーが今…俺の腕の中にいる…。)
紫霊
(俺のものになったんだ…やっと。)
紫霊
…なぁ、ルビー。
返り血の付いた顔を愛おしそうに歪めて、紫霊はルビーの耳元で囁いた。


















紫霊
大好き。






















数日後
紅魔館
紫霊
もうそろそろ…あのクソ犬共が帰ってくるかなぁ…。
紫霊は自分の目に映る最愛の人が「…さぁな」と言って首を傾げる仕草を見て、ふふっと微笑む。
紫霊
…そうだよなぁ。
紫霊
相変わらず可愛いなーお前。
少しからかってやろうと、自分の目線より低い位置にある赤髪に手を伸ばしくしゃくしゃと撫で回す。
その赤髪が少し恥ずかしそうに顔を逸らす仕草にすら、愛おしそうに顔をにやけさせる。
紫霊
…なぁ、ルビー。
紫霊の視界には、不思議そうに自分を見上げるルビーが映っている。
紫霊
何があっても、これからもずっと一緒にいような。






























一人静かな部屋で、紫霊はそう呟いた。




























一人きりの部屋                                END.

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