前世の『主』としての記憶が戻ってから1年……
静かな暮らしは,とても文句なしなほど快適だった。………あるコトを除いては………。
それは『食生活』である!!
記憶を取り戻してからの1年,食生活だけはそろそろ我慢の限界だった私。 何故なら,
私がいた時代から何年経っているが分からないが『食』文化が私の時よりも衰えていることがわかった。
まず,毎日の献立が小麦粉で作った普通のパンに
毎日[具]部分の野菜が少し変わるだけの塩スープなんとこの庶民的な献立がこの時代の一般的な料理文化なのだ。
次に,これがまたなんとも『勿体無い』作法である。実はこの時代の作法では,例えば野菜では
右半分が食べられて,左半分が食べてはいけない
というバカげた作法があるのだ。
※野菜は,端っこのヘタ部分だけを取ればあとは
しっかり食べられます。
しかもその余った左半分を『捨てて』終わりなのだという,この2つが一般常識となっているので
この情報はもちろんこの我が家で聞いたことだ。
……もちろん,私の前世ではちゃんと左半分も
しっかり食べていたぞ?
そして我が家の料理場,そんな問題点を見つけてから1年が経ったが今回やっと私は椅子台に上って
料理台まで[身長]が届くようになったのだ。
この問題についてはすぐに改善策を練ろうと思っていたのだかが,そもそも台所に手が届かなければ何もできなかった。
………今更自分の小さな身長を恨んでしまった……
それで,少し『大きめな』?(4歳の身長です)
身長になった今,早速改善策を練ろうと私は
調理場に向かった。
「おや,坊っちゃん。何か御用でも?」
調理場にいたのは,毎日三食この家でご飯を作ってくれている料理長・バンダさんである。
「うん,ちょっとね……。」
………多分,今からするのは『ちょっと』どころではないと思う………なにせ,今からここでするのは
『貴族』(一応)である私が【料理】をするから!
今,私が料理ちゃんと出来るか疑った者。
一応言っておくが出来ないと分かっていたら
しっかり諦める男だからな私は……。
ていうか,前世でもよく子供たちの世話でご飯
作っていたし,喜んでたし………
と,一応前世経験で料理はある程度作れるので
早速料理長に頼んでみた。………しかし
「坊っちゃんが料理!?駄目ですよ,まだ早いですし………」
もちろんNGだった。
理由は『年齢的に』なのだそうだ。普通だったら
貴族様に怪我をさせてしまうから が多いが
母は元平民だし,母も昔同じことをして料理長に頼んでいたことがあったからで,その時は母の
勢いに負けてそれからは母も一緒にご飯を
作るようになったのだと。
まぁ,確かに4歳になりたての料理についての知識もないちびっ子がいきなり料理をしだすと
何が出来上がってしまうかは予想がつく。
だが,一刻も早く食生活を改善したいのでここは
粘り強く言わせてもらう……
「お願いします!!自分で作ったものは,ちゃんと
自分で食べるので!!!」
「………なら,良いですけど危ないので私も見てますからね。それと食材は,遊び道具ではないんですからね?」
「はい!大丈夫です。絶対に[無駄]にはしません
絶対に!!」
「ご丁寧に。」
ヤッタ!!
これで調理場を使う許可がとれたので,早速
料理を始めようと思う!
「ちなみに坊っちゃん,その様子だと何を作るかもう決まっていらっしゃるご様子ですが
一体何をお作りに?」
「【ハンバーグ】だよ。」
「ハンバーグ?」
まず,改善策として最初に作ろうと思ったのが
材料があれば手軽に作れる【ハンバーグ】。
食改善のために,いざハンバーグ作り!!!
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!