次の日。
陽葵は学校を休んだ。
「日向さん珍しいね」
朝のホームルームで、担任がそう言った。
「風邪かな?」
「昨日ちょっと顔色悪かったよね」
クラスメイト達が話している。
私は何も言えなかった。
空っぽの席を見るたび、昨日のメッセージを思い出す。
『明日には元気だから!』
——嘘じゃん。
そう思った瞬間、自分が嫌になった。
心配しろよ。
普通はそうだろ。
でも胸の奥では、別の感情が静かに広がっていた。
陽葵がいない教室は、不思議なくらい静かだった。
誰かが笑っても。
誰かが騒いでも。
いつもみたいな明るさがない。
「朝倉さん」
不意に、クラスの女子が話しかけてきた。
「日向さん大丈夫かな?」
「親友なのに?」
親友。
その言葉に、胸がざらつく。
「最近ちょっと元気なかったよね」
「朝倉さんなら何か知ってるかと思った!」
私は小さく首を振った。
……知らない。
陽葵のこと、私は何も知らない。
いつも隣にいたのに。
帰り道。
一人で歩く住宅街は、妙に静かだった。
いつもなら隣から聞こえる声も、笑い声もない。
そう呼ばれないだけで、こんなに違うんだ。
ポケットの中でスマホを握る。
“大丈夫?”
その一言を送るだけなのに、なぜか指が動かなかった。
心配してるふりをする自分が、気持ち悪かった。
本当は。
本当は少しだけ、安心してるくせに。
陽葵がいないだけで、比べられなくて済むって思ってるくせに。
「……最低」
最近、そればかり思う。
家に帰ると、スマホに通知が来ていた。
『今日休んでごめんね!』
『また明日学校行くね!』
いつも通りの文。
絵文字までついている。
その明るさが、今は少し怖かった。
——陽葵は、本当に大丈夫なの?
初めて、そんなことを思った。














編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。