仮面社長の正体は…あなたの名字あなた
そう確信したわけじゃない。
けれど、心のどこかで「アイツだ」とわかってしまった。
変声器の“奥にある声”
質問の“クセ”
優しい“喋り方”
そう呟いて、獪岳は合格通知を机に放り投げた。
メールも未読。通知も切った。
彼は、東京から北海道へ逃げるように引っ越した。
雪がまだ残る北海道の地方都市。
そこにひっそりとある、小規模ながら堅実な会社。
獪岳はそこで、再び面接を受けていた。
応接室に入ってきた社員の男性____
あなたに、瓜二つだった。
背丈は高い。
声も、ちゃんと低くて男の声。
仮面もしていないし、変声器もついてない。
でも顔立ちがあまりにも“似ている”
男は一瞬、目を細めた。
そして_______
その“自然な戸惑い”
“反射的な返答”
“ごまかすでも、演技でもない”空気
ようやく、胸が軽くなるのを感じた。
二人で、少しだけ笑い合った。
結果は合格。
小さな会社だったが、社内の雰囲気も穏やかで、上司も癖がなく、何より______
ようやく、平穏が戻ってきた。
いや、戻ったように思えた。
最初の3ヶ月は、夢のようだった。
朝、雪かきをして出勤。
昼はあたたかい味噌汁。
夜は誰にも尾けられずに帰宅。
休日はジムにも通い始めた。
4ヶ月目に入ったある日。
獪岳はふと、違和感を覚える。
しかしその小さな違和感は後に当たることになることをまだ知らない______












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。