第8話

#.謎の男
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2025/09/14 07:27 更新


仮面社長の正体は…あなたの名字あなた

そう確信したわけじゃない。
けれど、心のどこかで「アイツだ」とわかってしまった。

変声器の“奥にある声”
質問の“クセ”
優しい“喋り方”

獪岳
あぁ“ーくそ…


そう呟いて、獪岳は合格通知を机に放り投げた。
メールも未読。通知も切った。

彼は、東京から北海道へ逃げるように引っ越した。



雪がまだ残る北海道の地方都市。
そこにひっそりとある、小規模ながら堅実な会社。

獪岳はそこで、再び面接を受けていた。

応接室に入ってきた社員の男性____
あなたに、瓜二つだった。

獪岳
(……え。いや、ちょっと待て……)


背丈は高い。
声も、ちゃんと低くて男の声。
仮面もしていないし、変声器もついてない。

でも顔立ちがあまりにも“似ている”

不思議な男性
本日はお越しいただきありがとうございます。
面接官の あなたの名字あなたの弟の名前 と申します…
獪岳
(……あか、ほし……?)


獪岳
あの、すみません。一つだけ、個人的な質問いいですか
不思議な男性
ええ、構いませんよ
獪岳
……姉妹、いらっしゃいます?
不思議な男性
……


男は一瞬、目を細めた。
そして_______

不思議な男性
なんで知ってるんだい!? あまり姉妹の話はしないんだけど……
獪岳
(っ……!)

その“自然な戸惑い”
“反射的な返答”
“ごまかすでも、演技でもない”空気


獪岳
(……この人は、“アイツ”じゃない)


ようやく、胸が軽くなるのを感じた。

獪岳
すみません。実は以前、赤星って名字の……まあ、いろいろあって
不思議な男性
はは、よくある話ですよ。親戚が多い名字ですしね。……彼女、強烈だったとか?
獪岳
…はい。いろんな意味で…


二人で、少しだけ笑い合った。



結果は合格。
小さな会社だったが、社内の雰囲気も穏やかで、上司も癖がなく、何より______

獪岳
( 変な仮面も、変声器も、ストーカーの気配もない。完璧だ…… )



ようやく、平穏が戻ってきた。
いや、戻ったように思えた。

最初の3ヶ月は、夢のようだった。
朝、雪かきをして出勤。
昼はあたたかい味噌汁。
夜は誰にも尾けられずに帰宅。

休日はジムにも通い始めた。


獪岳
( ……やっと、人間らしい生活ができる…… )


4ヶ月目に入ったある日。
獪岳はふと、違和感を覚える。

獪岳
( 本当に俺は逃げられたのか?あいつが簡単には逃さないと思ったが )


しかしその小さな違和感は後に当たることになることをまだ知らない______


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