あれから、数週間。
獪岳は転職活動をしていた。
前職――社長がどこか“怖くて優しすぎる”会社を辞めてから、
どこか落ち着かない日々が続いていた。
けれど、今回は違う。
条件も良く、成長企業で、業界でも話題。
面接までこぎつけたとき、
彼はふと思った。
彼女の影を振り払うように、ビルのドアを開いた。
案内された部屋。
そこにいたのは________仮面。
変声器から発せられる、低く加工された声。
髪も、服装も、性別も読めない。
不自然なくらい“人間らしさ”が抜けた存在。
不審な気配に全身が警戒モードになる。
けれど、質問内容は非常に的確。
業界の動向、個人の実績、性格テスト――全部がプロの域。
一瞬、空気が止まった。
変声器ごしの声。
加工されているのに、どこか響く“懐かしさ”。
ビルの最上階――社長室。
鏡の前で仮面を外すのは、
そう、もちろん“ あなたの名字 あなた “
汗ばんだ顔で、スーツを脱ぎ、首元をゆるめながら_______
デスクには、獪岳の履歴書。
裏には、過去の小学校の成績表、筆跡、健康診断のコピー。
笑う彼女の表情はどこか狂気に満ちていた______












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。