しばらく座って待っていると、
音楽の先生が入ってきた。
優しそうな、女性の先生。
…優しそう、か…。
人は見た目で判断しちゃいけないのに、
私はまだ人を見た目で判断している。
やっぱり。
優しそうでもそういう所があるのが人間。
どんな人間にもそういう所があるから、
私は信用できない。
したくない。
そう言って先生は楽譜を配り始めた。
曲名は「マイヒーロー」と「ヴィヴァナッジ」。
先生の推しグループのオリジナル曲らしい。
「マイヒーロー」はクラス全員で、
「ヴィヴァナッジ」は女子だけで歌うらしい。
選曲を否定する人は誰もいなかった。
私も歌詞だけ読んで判断したけど、
なんだか勇気がもらえる歌詞だった。
まだ聞いてすらいない私でも、
いい曲なんだなってことが分かるような気がした。
圧をかけてにこっ、と笑う先生。
確かに、こういう所が"怖い"って思われるんだろう。
でも、愉快な人そうだった。
…ダメだ。また、決めつけてる。
会って数分しか経ってないのに、
分かったような事思っている私は馬鹿だ。
人なんて簡単に180°変わる。
そんなの私が一番よく分かっている。
練習を始める前に2,3回曲を聴いた。
歌詞と明るいメロディー。
本当に勇気がもらえるような、
なんだか心が軽くなる様な不思議な感じがした。
私は音楽を、曲を、ここまで「良い」と、
思ったのは凄く久しぶりだった。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!