生物室の前で1つ息を吐いて、ドアを叩く。
シーン。
目の前にある棚の横から物音たてずに、ひょこっと顔を覗かせてきた。
どいてもらってる?
この先生、権力者なの?
パワープレイにも程があるでしょ。
この時、私は少しだけ調子に乗った。
こんなドライな会話をしている2人が、果たして付き合ってると思われるだろうか。
このテンションを保てているならば、
"まだ" 好きでいてもいいんじゃないかと。
ズバッとすぎるわ。
まさか、先生からその話されるなんて…
心の準備が出来てないっての。
正直なこと言ったら、
…終わっちゃうんかな。
自分から聞いといて肝心なとこ私に委ねないでよ。
続けて言葉を並べようとしたが、声が出せない。
喉に蓋をしたように。
いざ、言うってなったらやっぱり苦しいんだわ。
ミナ先生の声が震えている。
ぐすっと鼻をすする音もする。
怖くて先生の顔を見れない。
それは別にいいかもしれないのに、うんって言っちゃった。
言い直しもできたのに、言い直しもしない。
常々思う。私はもっと考えるべきだと。
考える前に口にするのは良くないよ。
ほらまた。
好きでいちゃだめって自分から言っといて馬鹿じゃないの。
そう言って、いつから流れていたか分からない私の涙を優しく拭ってくれた。
「それだけは変わらない」と言いたそうなのは何となくで分かった。
ミナ先生は、息を一気に吐き出した。
「もう一度彼女にしたるから。」
その言葉を聞いた瞬間、全身を張り詰めていた何かが緩んで、ひたすらに泣いた。
泣きながらも、「卒業まで待ってて」って言いたくて、
涙を止めようと必死になっても、簡単には止まってくれない。
それを今でも後悔している。
私が、たった一言言えていれば、
ミナ先生が姿を消すことはなかったんじゃないかと。
私が、
恋をしてはいけない恋を
2度することもなかったんじゃないかと。
7年後の私はそう思ってるよ。
━━━ END













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。