第9話

8.僕のエゴ
428
2025/09/12 06:00 更新
どこまでも青空が広がる、不思議な場所。
 
「ごめん、ごめんね…█くん」
 
誰かが、誰かに謝っている声。
透き通った、綺麗な声。
でも、すごく聞き覚えのある声。
 
「大丈夫、これでいい」
 
そう言いながら、少し悲しそうな声。
力強く、暖かい声。
とても、とても聞き覚えのある声。
 
2人ともとても辛そうだ。
だから、すぐにでも笑顔にしてあげようと、僕は手を伸ばす。



















手を伸ばした先には見慣れた犬型ロボット。
…作業中に寝落ちしたようだ。
神代類
…司くん
あの声。力強いのに、暖かいのに、どこか悲しそうな声…
司くんが居なくなった日に一度見たきり不思議な夢を見ていなかったが、司くんを思い出した日から毎晩、同じような夢を見るようになった。
神代類
…早く学校へ行かないとね
沈むような感情を誤魔化すように、早く支度をして家を出た。
草薙寧々
で、その後えむが東雲くんに衝突しちゃってさ…本当に元気だよね
神代類
…ああ、そうだね
苦しい。
寧々の話に、司くんの名前が出てこないことが。
司くんがいない学校は、どこか物足りない。
いつも司くんに協力してもらっていた実験も、今では僕1人で行っていて
面倒事に巻き込まれてくれる彼も
廊下を走った僕を叱る彼も
怒る先生から逃げる時、いつも隣にいてくれる彼も

僕を、決して独りにしなかった彼も
全部、過去の思い出どころか、存在しない記憶と化したようだ。
本当はあったはずの、大切な記憶だというのに。













─ぃ
 
るい



















暁山瑞希
るーいー!!
神代類
!?
神代類
み、瑞希…?
暁山瑞希
あ!やっと反応してくれた!
暁山瑞希
本当にどうしたの?大丈夫?
暁山瑞希
草薙さんから最近の類の話を聞いたから、心配になって屋上に来てみたら、類がひとりで考え事してるし、ボクの声聞こえてないし!
神代類
寧々が…?
暁山瑞希
気づかなかったの?草薙さんもえむちゃんも、それどころか弟くんも青柳くんも杏も!みーんな類の心配をしてるんだよ?
暁山瑞希
最近の学校、前と比べて不自然なほど静かだし!
えむくんも、他のみんなも、僕を…?
暁山瑞希
もう独りぼっちじゃないんだからさ、せめて、ひとりで抱え込んだりしないでほしい。まあ、ボクが言えたことじゃないけどね…
…そうだ
この世界でも僕は、独りじゃない。
寧々やえむくんも、瑞希たちも
みんな、僕の傍にいてくれる。司くんがいないこの世界でも、仲間でいてくれる。友達でいてくれる。
…少しくらい、打ち明けてもいいのか?
こんな信じられないような話も、瑞希なら…みんななら、受け入れてくれるかもしれない。

















でも
神代類
…そんなに心配しなくて大丈夫だよ、瑞希
神代類
決してひとりで抱え込んでいるわけではないからね
今の僕も独りじゃない。
僕の話を聞いて、一緒に悩んで、支え合える仲間がいる。
それに、辛いことを乗り越えたばかりの瑞希を巻き込みたくない。
でもこれは、瑞希の気持ちを何も考えられていない、僕のエゴだけどね。
暁山瑞希
それならよかった!
暁山瑞希
ほんと、いい人たちに恵まれたよね、ボクたち。
神代類
…そうだね
確かに、いい人たちに恵まれた。桃井くんたちだってとても優しい人だし、えむくんも寧々も、大切な仲間だ。
でも、やっぱり








その中に司くんがいないということは、納得がいかない。

プリ小説オーディオドラマ