どこまでも青空が広がる、不思議な場所。
「ごめん、ごめんね…█くん」
誰かが、誰かに謝っている声。
透き通った、綺麗な声。
でも、すごく聞き覚えのある声。
「大丈夫、これでいい」
そう言いながら、少し悲しそうな声。
力強く、暖かい声。
とても、とても聞き覚えのある声。
2人ともとても辛そうだ。
だから、すぐにでも笑顔にしてあげようと、僕は手を伸ばす。
手を伸ばした先には見慣れた犬型ロボット。
…作業中に寝落ちしたようだ。
あの声。力強いのに、暖かいのに、どこか悲しそうな声…
司くんが居なくなった日に一度見たきり不思議な夢を見ていなかったが、司くんを思い出した日から毎晩、同じような夢を見るようになった。
沈むような感情を誤魔化すように、早く支度をして家を出た。
苦しい。
寧々の話に、司くんの名前が出てこないことが。
司くんがいない学校は、どこか物足りない。
いつも司くんに協力してもらっていた実験も、今では僕1人で行っていて
面倒事に巻き込まれてくれる彼も
廊下を走った僕を叱る彼も
怒る先生から逃げる時、いつも隣にいてくれる彼も
僕を、決して独りにしなかった彼も
全部、過去の思い出どころか、存在しない記憶と化したようだ。
本当はあったはずの、大切な記憶だというのに。
─ぃるいえむくんも、他のみんなも、僕を…?
…そうだ
この世界でも僕は、独りじゃない。
寧々やえむくんも、瑞希たちも
みんな、僕の傍にいてくれる。司くんがいないこの世界でも、仲間でいてくれる。友達でいてくれる。
…少しくらい、打ち明けてもいいのか?
こんな信じられないような話も、瑞希なら…みんななら、受け入れてくれるかもしれない。
でも
今の僕も独りじゃない。
僕の話を聞いて、一緒に悩んで、支え合える仲間がいる。
それに、辛いことを乗り越えたばかりの瑞希を巻き込みたくない。
でもこれは、瑞希の気持ちを何も考えられていない、僕のエゴだけどね。
確かに、いい人たちに恵まれた。桃井くんたちだってとても優しい人だし、えむくんも寧々も、大切な仲間だ。
でも、やっぱり
その中に司くんがいないということは、納得がいかない。








![# 攻略対象より悪役に惚れました . [ 冬司ver ]](https://novel-img-gcs.prepics-cdn.com/prcmnovel-tokyo-prod-converted-images/p/463Ienje96SMnaxqeg7tvIaFh9p1/cover/01K566339R5TNCGP01WCWNSK9G_resized_240x340.jpg)



編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。