完成したキャンバスを丁寧に梱包して、
郵便局へ持って行って
郵送した。
「送り主は・・・これでいいんですか?」
From JKとだけ書いた、送り主の欄。
不思議そうな顔をした局員さんに、
大丈夫だ、と伝えて、
料金を支払って外に出た。
届いたら、彼女は泣くだろうか
それとも、笑うだろうか。
あの、古びた店で、
梱包を恐る恐る開く彼女の姿を想像する。
その絵は、お店の家族写真が飾ってあったところに、
一緒に飾ってほしい。
ビルで切り取られた小さな空。
それでも、彼女と繋がっている、
唯一の空。
ソウルも、そっちと変わらず、
暑いよ、ヌナ。
ふわっと、生温い風の間に
潮風を感じたような気がして、
振り返った。
そして、また前を向いて歩き始めた。
いつか、胸を張って会いに行けるように。
END
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!