You side
結局銃兎さんから会話内容を聞く事は叶わず、押し問答をしている内に次の目的地に着いてしまった
此処はシンジュク中央病院の近くにある八百屋
新鮮な野菜と果物を取り扱っており、店内BGMが麻天狼の曲という“わかっている”お店だ
此処では見舞いの品として、目が覚めた時に食べられるよう果物を毎日買っている
お陰様で大体同じ時間に来る私と、店先で旬の食材を宣伝している店長とは顔馴染みになった
選ぶ物は直ぐにでも食べられるように極力熟している物
その代わり院内で常温保存することも相まって傷みやすく、花と違って毎日新しい物を持って行っている
勿論フードロスなどはせず、前日の果物は家に持ち帰ってその日の夕飯か翌日に回している
そう言って目立つ位置に置かれた愛媛県産の高級苺、レッドパールを指す店長
上反りのヘタと艶のある実、果肉はヘタの元まで甘く柔らかい
他にも同じく愛媛県産の蜜柑、紅まどんなやせとかが丁寧に陳列されている
どちらも愛媛を代表する蜜柑で繊細な甘さが特徴的な品種で個人的な好みだとせとかが好きだ
なんて考えながら、折角なのでどちらも手に取り優しくカゴに入れる
後は見舞いの定番である林檎、蜜入りのサンふじを選ぶ
他にも旬のキウイフルーツや梨を選び、形が綺麗で甘そうな物を選ぶ
店長の言う通り人並み以上には目利き出来る様になったが、本職相手じゃまだまだ可愛いものだろう
野菜や肉、魚なんかの食品全体で見た目利きなら一二三さんの方が出来るだろうし……
というか普段通り値段を気にせずカゴに入れてしまっているが、まさか此処の会計も銃兎さんが持つのだろうか
じゃなきゃ用もなさそうなのにわざわざ着いてこないよな……
そう思い申し訳ないが商品を戻そうとカゴに手を伸ばせば、察したのか優しく手を掴んで制される
あ、多分駄目だこりゃ
ある程度の付き合いがあるので譲らないだろうと早々に諦め、せめてもの抵抗で見舞い以外の品は入れない様にする
軽くため息を吐かれたが銃兎さんの頑固さに比べたら可愛いものだろう、うん
そう結論付けて真っ直ぐレジに向かう
キャベツ安かったけど仕方ない、ジャガイモの形良さげだったけど仕方ない……
少し悔しさも感じるが案の定銃兎さんがカードを切ったので、私の行動は間違っていないのだと自己暗示を掛かる
なんて思っていれば、店長から予想外の返しをされ思わず振り返る
そして弁明する間も無く銃兎さんに肩を引かれて店を後にした
いやいや明らかな成人男性と中学生が交際関係なことなくないか
でも銃兎さん美形だし私服だしワンチャン大学生か新卒に見られてるとか……?
だとしても私中学生で、それは店長も知ってる筈……
実際歳の差は13だが銃兎さんを新卒に見積もっても7つ差がある訳で
一回りとはいかないがそこそこ歳の差があるというか……
さて、ガキの彼氏に見られて不機嫌になっていなければ良いのだけど……
そう銃兎さんに目配せするも、何故か笑みを浮かべていた
まあ気を悪くしてないなら良いのか……?
なんて飲み下して再び車に乗り込む
でも万が一あの場に銃兎さんの事を知っている存在が居たとしよう
現役警察官が未成年と交際しているという噂が立ったらと思うと申し訳ない……
彼の職歴に傷を付ける訳にも行かないし、念の為そう尋ねてみる
しかし答えになっていない様な返答をされ、曖昧なまま返事をする
花屋でも似た様なこと言われたっけな……
でも彼の表情は穏やかな雰囲気を醸し出しており、寧ろ普段より砕けた口調からして機嫌が良さそうだ












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。