上を見上げると綺麗な海色が。
下を見下ろすと暗い暗い暗闇が広がっている。
…さて、どっちに行こうか…。

ただひたすらに落ちていくのが怖くて、
無意味かもしれない足掻きをしてみせた。
するとどうだろう。
急に落ちていた身体が、ゆっくり落ちるようになった。
身体に器用に動かすと上に向かえた。
まるで、水の中を泳いでいるような感覚…。
…水の中?
ここは水の中なの?
でも、息は出来てるから違うはず…。
ただ何となく出てきた本音。
すると水の中で息を吐き出した時のように泡が出る。
…本当に何処だろう。水だけど水じゃない。変なの。
取り敢えず上へ向かおう。
この調子で泳げば上まで行くのは難しくないはず。
そう思いながら上へと泳ぎだす。
上下の感覚が分からなくなりそうだった。
水面から顔を出す。
酸素があったから呼吸は浅くなってない。
つくづく不思議な場所だと思った。
ここは何処かと辺りを見回してみると、
見覚えのある墓石のような建物がみえた。
青い屋根が特徴の美しいホテル。
間違えなく、ホテペトに出てくるホテル…。
だとすると、ここは『空が泣く街』だろうか…。
暗雲が立ち込めていて、街の灯は揺れていた。
紫陽花が咲く道が広がり、咲き頃を迎えていた。
ただ、マイクラの世界にあったはずの
建物、路面電車等は無くホテルだけが佇んでいた。
あまりにも静かで、まるで…何だろ、
ホテルだけが閉ざされているようで奇妙な感じ。
人の気配は無いのに、灯りはついている。
やっぱり、どこかおかしい。
行くだけ行ってみよう。
この奇妙さの秘密を明かせるような気がする。
ホテルの扉を開けると『GRAND FLOOR』へ辿り着く。
ベルマンである〝Nakamu〟が居た場所。
カトラリーの音が静かに響き、クラシックが
奏でられていて人気を感じる音だった。
聞こえるのは蓄音機から聞こえる音。
どこか機械的で一定のリズムを刻んでいる。
フロント近くにはパンフレットがあったはず。
地図は一応頭の中には入ってるけど持ってて良いし。
そんなこんなでパンフレットを取る。
せっかくここに来たのだから捜索でもしようかな。
現実でこの世界を見ることなんて出来ないはずだし。
少なからず誰かはこの世界に関与している気がする。
ホコリ一つも落ちてないし、電気だって通っているし。
迷わすエレベーターまで行き、ボタンを押す。
少し待つとチーン、とエレベーターの扉は開いた。
一応エレベーターは動いてるっぽいな。
…何故だろう。
何処に行けば良いのか何となくわかる。
ひとまず428号室…焼却炉へと向かうか。
428号室に向かうため、四階で降りると
思いがけない人物がそこに居た。
最後不穏な感じで別れたシャーク・んさんだ。
何でここに居るだろう。ちょっと変なの。
うん、それ俺のセリフだから()
まるで行く場所がわかっていたような反応だ。
もしかしたら428号室に何かあったりなかったりする…?
焼却炉以外の、何かがあるかも…。
少し談笑した後、428号室へと直接向かう。
…迷いなんてものは、元から無かった。
428とプレートに示された部屋を見つけた。
そして鍵の交換をして428号室へと入る。
あったのは他の部屋とも変わらない物たち。
ここまではよく知っている。
大切なのは閉め切られたドアの先にある焼却炉だ。
もくもくと煙が漂う焼却炉があった。
更に本来無いはずの空間にドアがあるのを見つけた。
なんか、おかしい気がする。
開けた先にあったのは開かれた空間だった。
水が一定のスピードで流れ落ち、滝を成して
水が下へ下へと溜まっている。
まるでこの世界だけが切り離されたよう。
「シャークん、無理しない方が…。」
「もう、戻れないんだよ。あの頃の俺達に。」
懐かしい、あの声が聞こえる。
すると耳を突き刺すような言葉の数々が心を抉る。
誰かが謝るように言った、助けられなくてごめん、と
いう言葉が理解出来てまた苦しくなった。
それは誰もが忘れたいと願わずにはいられないものだ。
知りたい。あいつ等のこと。
俺が居なくなった後にきっと何かが起きた。
何も知らなかったで済ませたくない。
これから聞く言葉が少し怖いけど
進まないからには何も得られないから。
そう思い一歩踏み出したものの、
視界がグラッと暗転し叶わなかった。
どうやら寝ていたみたいで
めちゃくちゃ体を揺すられていた。
うわぁ…それはちょっと申し訳ない…。
聞いて良いかなんてわかんないけど、
でも聞くだけ聞いてみようと思ったから、聞く。
もしかしたら皆100歳くらいまで生きて
転生してるかもと思い考えないようにしていた。
だがその願いは叶っていなさそうだ。
想像よりも余りにも早すぎた。
二ヶ月なんて、あっという間に過ぎちゃうのに。
スマイルの言葉一つ一つが重い。
話の一つ一つが俺でさえイマイチ飲み込めていないのに
記憶が無いにも関わらず話に耳を傾けるきんとき。
Broooockがぽつ、ぽつと語りだす。
多分、目の前に居る彼等は
いっぱい考えて悩んでくれたのだろう。
ごめん、という言葉は無意識に飲み込んだ。
もし俺の言う言葉に〝正解〟があるなら…
きっと、これが正解だ。
なら、昔の俺が報われる。
仲間と合流する、というのは
何となくよぎった使命だった気がする。
人手が増えたし、多分これが好都合だ。
その後クエスト諸々やって、
色々聞いてみたけどやっぱり大した情報が無い。
その言葉、何か核心に迫っている気がする。
多分今までのどの仮説よりも正解に近いような…。
懐かしい気配もあるのに目の前に居る人、別人だった…
そんなことありませんか???
もしかしたらそれ、〝分身〟かもしれない!?!?
それだったら持ってる気配は似てるはず!
まぁそもそも分身が可能なのかって話だけど。
流石きんとき、記憶無いかもだけどやっぱ俺のズッ友。
ま、まさか偽、者…!?!?
するときんときは黙って頷いてくれた。
他の二人も続くように頷く。
何か大きな存在が背後に居る事は間違いないはず。
スマイルの言う高度な魔法を
維持できる力を持つ者が居るということだから。
うん。さっぱりわからん!!!
スマイルは、きっと気付いていた。
俺がまだあのシャークんを忘れてない事。
ずっとずっと引っかかっていた。
あのシャークんが一番〝本物〟に近かった。
他のシャークんにはどこか〝造り者〟があった。
それは俺がかつて生み出したブラテの登場人物に
そっくりなシャークんだからだと思っていた。
Broooock、鋭い。
前世で見たあの優しい瞳とは違った。
俺が羨ましくて憧れた、翡翠色の瞳じゃない。
あれは、敵を見定めるような感じだった。
こんがらがった話をきんときがまとめてくれる。
段々難しくなっていく話に、きんときが声を上げた。
あの花龍列車のシャークんがそんなことを…?
きんときはどうやら有名な格闘家らしいので
シャーソんさんはそれで知った可能性はあり得る。
きんときの記憶では会ったことない。
でもツャーワんさんの記憶では〝会ったことがある〟。
あり得る可能性は、〝前世〟で会ったということ。
これは単なる偶然とは思えない。
「あの、あなたから…(以下省略)」という
明らかに怪しい一言が最初に聞いた言葉だった。
でも俺はスマイルを怪しまなかった。
それは〝前世〟があってそこでスマイルと会ってて、
親友としてたくさんの思い出があったから。
記憶があれば〝再会した親友〟に。
記憶がなければ〝知らない赤の他人〟に。
皆で悶々と悩んでいるとこんこん、とノック音がした。
お話中にすみません、という声が聞こえたので
そこに居る誰もがシャーソんさんだと理解した。
いってらっしゃい、と一言付け足して
きんときはどこか曇りのある笑顔で見送った。
きんときは少し黙りこむと
「少し話しても良い?」と呟いた。
深く頷くときんときはホッとしたように息をついた。
きんときは一応前世の日本の記憶がある。
けれど、どうやら〝ワイテ関連〟の記憶が全くない…。
なんというんだろ、すごく引っかかる。
これは単なる不安ではなく
これでもかという程強い〝トラウマ〟見える。
「人はトラウマによって記憶を失うことがある」
ふとよぎった知識王(?)スマイルの一言。
不意に思いついたその言葉がつっかかる。
きっときんときの記憶が無いのは理由があり、
〝その理由を取り除こう〟としていた。
結局は何も分からず遊び倒したけど…。
俺の一言にBroooockもスマイルもハッとした。
Broooockの一言に、きんときは目を見開いた。
スマイルが寂しそうに微笑んだ。
あまりにも永い時を過ごしたような言い方をする。
気付けばそんな事を口にしていた。
これを〝言うべき〟だと感じたから。
前世で見たような、懐かしい笑顔だった。
すると意識を失ったのか彼は瞳を閉じた。
どこかすっきりしたような、あどけない顔をしていた。
きんときが寝ていたはずだが
逆に俺が起こされている。何でだ。
目の前に居る彼はまるで〝記憶がある〟ように見えた。
だから一つ、質問をする。
ニコッと笑ってくれる彼に俺もまた安心した。
…そして一つ疑問が浮かんだ。
「どうしてきんときは気絶したのか」と。
俺の心を読んだかのようにきんときは答えた。
そりゃ数十年分の記憶が一気に流れ込めば
脳みそがキャパオーバーになって気絶してしまうのも
納得出来る、というか納得しかない。
スマイルにきんときの事を伝えるため、質問をする。
あ、スマイルの目がキラキラしている…!
先程までのテンションは何処へやら。
行動がとてつもなく早い。Broooockどんまい。
何日間食べ損ねたのか…。
しかも集中力を使ったからかマジでヤバい。
父さんの修行で、ある程度ご飯食べなくても
大丈夫なようにしていたんだけどなぁ…。
その後の事は…あんま覚えてない!
でも皆でズッ友の彼とたくさん話して、
いっぱい遊んだような…うん、そんな感じがする。
Broooockがニコニコして言った。
段々とあの二人と会いたくなってくる。
〝六人〟で机を囲めたら良いのに。
そんな夢を抱きつつ、四人で談笑し続けた。
皆様お久しぶりです菫でございます…。
えーーまぁ…はいあのお察しくださいな()
マジで忙しいしスランプだわで大変でした。
今回の話が一番難しかったです(ガチ)。
こう…ワイテ皆の過去の設定は練れたんですけど
それを明かすまでのストーリーが
全くというほど思いついてなくてですねぇ…。
まだまだ時間はかかるかもですが
更新はもう少し早くなると思うので乞うご期待です。
お気に入りとかして待っててくださった方、
本当にありがとうございます…!🙌
低浮ながら時たま浮上して通知に喜んでいました。
どんどん精進していきます。
それではまた…!











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!