第8話

#06
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2026/07/26 02:10 更新
乃依
__ねえ、本当に寝てる?
夏月
(寝てないです、ごめんなさい!!!)
そう、私は今全力で寝たふりをしている。
乃依
...危機感無さすぎでしょ...
しばらくして、小さく布擦れの音がする。

やがて、すー、すーと静かな寝息に変わった。
夏月
(やっと寝てくれた...)
そっと目を開けて、ベットからゆっくり出る。

カーテンの隙間から覗いた月明かりが、

乃依さんの寝顔を照らす。

その寝顔は、昼間の冷たさがすっかり消え、

すごく綺麗だった。
そんな乃依さんに、不覚にも少しドキッとして、

慌てて首を振る。
私は足音を立てないように、静かに窓を開けて

ベランダへ出た。
夏月
...冷たい
夜風が頬を撫でる。

空を見上げると、そこには恨めしいほど綺麗な

白く、丸く、輝く月が浮かんでいた。

ツクヨミでは、かぐやと久しぶりに騒げて楽しかった。

彩葉さんも、黒鬼の皆さんもとても温かかった。

でも__
夏月
やっぱり、思い出しちゃうなぁ...
夜の静けさに包まれると、

どうしても思い出してしまう。

自分が、月の全てを背負う__

__『最高管理者』だということを。

あの退屈で、孤独で、冷たい宮殿の記憶。
夏月
...眺めている〜ばかり〜♪
夏月
手を伸ばして〜思い出す〜♪
夏月
聞かれたくな〜い弱音〜♪
夏月
聴かせたい声〜♪
気づけば、唇からメロディーが溢れていた。

それは、私が大好きな、私と_____しか歌えない、

神聖な月の旋律。

ツクヨミでの私からは想像もつかないような、

消え入りそうで、透き通った歌声が

夜の闇に溶けていく。
月の光を浴びながら歌う私の姿は、

そのまま光になって消えてしまいそうなほど、

儚く揺れていた。

最後の音が夜風に消え、小さくため息をついた。

__そのとき
パチ、パチ、パチ
暗闇から、静かで、ゆっくりとした拍手が聞こえてきた。
夏月
ひゃいっ!?
その音に驚いて振り返る。

ベランダの仕切りの向こう、隣の窓辺に、

スマホを片手に持った人が立っていた。
夏月
み、帝さん...!?
そこには、ツクヨミで私に意地悪な質問をしてきた、

黒鬼のリーダー、帝アキラさんが居た。

あの後、ちゃっかり乃依さんの家に泊まっていたらしい。
帝さんは、月の光を浴びながら、

フッと口元を緩めてニヤリと笑う。
酒寄朝日
綺麗な歌だね。ツクヨミの検索データ
には引っかからない、不思議な曲。
夏月
あ、あはは...!月の、その、
流行りのポップスなので...!
慌てていつものトーンを作ろうとしたけれど、

帝さんの瞳は、私の嘘を完全に見抜いていた。

帝さんは、ゆっくりと歩み寄り、低い声で囁く。
酒寄朝日
へえ、そんな寂しそうな顔で
歌うポップスがあるんだ?
夏月
ぅ...
酒寄朝日
__ねえ夏月ちゃん。
酒寄朝日
そんな顔で消えちゃったら、
監視役の乃依が泣いちゃうよ?
全てを見透かしたような帝さんの言葉に、

私は息を呑むことしかできなかった。

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