第53話

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2026/05/03 07:59 更新
そんなムアラニの言葉に、
あなた
まっさかあ!
あなた
それはないって!


と回答した数日前の私を許さない。



ところ変わって、現在地は“聖火競技場”。



今日は帰火聖夜の巡礼があるらしく、私はキィニチにチームに勧誘され、それを快諾した。



そして、競技はキィニチ大活躍で早々に終了し、私はあまり活躍していない。



キィニチはいつも通り動いていたし、私も調子が良かったので動き続けた。



そう、キィニチはいつも通り。



なんだけど。



なんだか。とっても違和感を感じる、ような。

キィニチ
どうした、あなた。どこか怪我でもしたのか?
あなた
ううん、してないよ。大丈夫。



隣の席に腰掛けているキィニチにそう聞かれたので、普通に返事をする。




けれど。




私とキィニチの距離、なんか......近くない.........?




でも、なんにも変わってないような気もする。




もしかして____________


キィニチ
もう個人戦が始まるみたいだな。
キィニチ
......行ってくる。
あなた
うん、いってらっしゃい。
あなた
応援してるね。


放送が鳴り、キィニチが呼び出される。キィニチは少し目を細めてから、入場していった。



......う。



あぁぁ......。




しっかり理解しちゃった。



キィニチとの距離が、いつもと同じなのに近く感じる原因。





________私が、キィニチを意識してるだけ。









今回に限っては、小説に出てくるような鈍感天然キャラが羨ましいかもしれない。


あなた
顔、あっつ......。


顔を隠すように机に突っ伏した。




なんとか顔の熱を覚まして、やってきました観客席。



部族問わず、たくさんの人がいる。そしてみんながみんな、会場の中心に視線を注いでいた。




キィニチの試合は、もうすぐ始まるみたいだった。




私がワクワクして待っていると、隣のこだまの子の男性から声がかかった。

こだまの子の人
......なあ、嬢ちゃん。もしかして嬢ちゃんって、数年前にここで迷子になってなかったか?
あなた
え゛。
ちょっと待って。




待って。




迷子って......あの!!??




黒歴史じゃん!待ってよなんで覚えてるの?


こだまの子の人
確か名前は______
あなた
ちょっと!恥ずかしいので言わないでください!
こだまの子の人
もごもご......



大慌てでその人の口を押さえる。



その人はもごもご......と言った後、押さえている私の手を軽く叩いて、解放を要求した。


こだまの子の人
ぷは、悪かったな。
でも俺の世代で帰火聖夜の巡礼を見てた連中は、多分覚えてると思うぜ。
あなた
え。


私の中のイマジナリーアハウが、大爆笑している気がした。




そして同時刻。




私が机に突っ伏していた所から今までを、すべて本物のアハウに見られているなんて知らなかった。


アハウ
っはは、おもしれえもんが見えたな。
キィニチ
どこに行ってたんだアハウ。もう試合が始まる。


しばらく行方をくらませていたアハウが、試合開始直前になってやっと俺のもとに現れた。



問い詰めようとすれば、アハウはなんだかニヤニヤしている。



一体なんなんだ。アハウがニヤけるようなことなんて、大抵ろくでもない事ばかりなんだけどな。


キィニチ
話すことがあるんなら、試合後にしてくれ。
アハウ
ふーん、いいのか?












アハウ
あなたの話なんだけどな。
キィニチ
話せ。
懸木の民の人
やっぱりマリポは強ぇなあ。
こだまの子の人
竜狩り人だしな。俺も世話になったことあるわ。


個人戦では、キィニチが他に圧倒的な差をつけて優勝した。

あなた
うおーーーーーー!
あなた
すごーーーーい!


私もMAXハイテンションになりながら応援した。柄にもないけどめちゃくちゃはしゃいだ。



気分はスタンディングオベーション。バカほど盛り上がっております。

あなた
すごかったよ〜!キィニチ〜〜!


と、ものすごくニッコニコしながらぶんぶん手を振る。



キィニチの視線がこちらを向く。



するとキィニチが少し目を丸くした。と思えばアハウが出てきてキィニチに何やら耳打ちをしている。



なんだなんだ?と思っていると、キィニチとばっちり目が合って。

























ウインクされた。





あなた
え?
こだまの子の人
ん?
懸木の民の人
今こっちに向けてウインクしなかったか?
流泉の衆の人
うわ......しぬ......この席で良かった......。


キィニチはその後こちらに向けて小さく笑い、控室に戻っていった。


こだまの子の人
......嬢ちゃん顔真っ赤だぞ。大丈夫か?
あなた
あなた
だいじょ、ぶ、です。



自分の心臓の音が、やけにうるさかった。



アハウ
っはは!見てみろキィニチ!リンゴみたいに真っ赤じゃねえか!あはははは!


アハウがそう言って、俺の隣で笑っている。



控室の天井を見上げて、少しさっきのことを思い返してみた。



試合の前、アハウがこんなことを言った。
アハウ
あなたのやつ、お前が居なくなった途端に顔赤くしてたな。
アハウ
うめき声もあげながら随分悶えてたぞ。
アハウ
_______こんなの脈しかねえだろ。


アハウはその時、とても悪い顔をしていた。




正直に言えば、すごく嬉しかった。自分の見えないところででも、ちゃんとあなたが俺を意識してくれているという事実が。




ただ、アハウの言葉には続きがあった。


アハウ
今だからこそハッキリ言っとくが、あなたは相当モテるタイプだぞ。
アハウ
それにキィニチ。この偉大なる聖龍クフル・アハウ様がいる限り、お前もナタの中心人物ってことに変わりはねえ。
アハウ
どちらにも、“虫”は大勢つくんじゃねえか?


そこまで言われて、試合に呼ばれてしまった。



心情の切り替えは得意分野なため、動揺せずに決勝まで勝ち残れたし、優勝だってできたが。



終わった途端に考えるのはそればかり。



群衆の歓声の中、モヤモヤと1人考えていると。

あなた
すごかったよ〜!キィニチ〜〜!
背後からあなたの声が聞こえて、無意識にそちらを向いた。
アハウ
ファンサービスの1つでもしてやれば、虫除けにでもなんじゃねえの?


アハウが出てきて、俺にそんな耳打ちをする。



多少のためらいはあったが、



___取られるわけにも、いかないしな。

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