そんなムアラニの言葉に、
と回答した数日前の私を許さない。
ところ変わって、現在地は“聖火競技場”。
今日は帰火聖夜の巡礼があるらしく、私はキィニチにチームに勧誘され、それを快諾した。
そして、競技はキィニチ大活躍で早々に終了し、私はあまり活躍していない。
キィニチはいつも通り動いていたし、私も調子が良かったので動き続けた。
そう、キィニチはいつも通り。
なんだけど。
なんだか。とっても違和感を感じる、ような。
隣の席に腰掛けているキィニチにそう聞かれたので、普通に返事をする。
けれど。
私とキィニチの距離、なんか......近くない.........?
でも、なんにも変わってないような気もする。
もしかして____________
放送が鳴り、キィニチが呼び出される。キィニチは少し目を細めてから、入場していった。
......う。
あぁぁ......。
しっかり理解しちゃった。
キィニチとの距離が、いつもと同じなのに近く感じる原因。
________私が、キィニチを意識してるだけ。
今回に限っては、小説に出てくるような鈍感天然キャラが羨ましいかもしれない。
顔を隠すように机に突っ伏した。
なんとか顔の熱を覚まして、やってきました観客席。
部族問わず、たくさんの人がいる。そしてみんながみんな、会場の中心に視線を注いでいた。
キィニチの試合は、もうすぐ始まるみたいだった。
私がワクワクして待っていると、隣のこだまの子の男性から声がかかった。
ちょっと待って。
待って。
迷子って......あの!!??
黒歴史じゃん!待ってよなんで覚えてるの?
大慌てでその人の口を押さえる。
その人はもごもご......と言った後、押さえている私の手を軽く叩いて、解放を要求した。
私の中のイマジナリーアハウが、大爆笑している気がした。
そして同時刻。
私が机に突っ伏していた所から今までを、すべて本物のアハウに見られているなんて知らなかった。
しばらく行方をくらませていたアハウが、試合開始直前になってやっと俺のもとに現れた。
問い詰めようとすれば、アハウはなんだかニヤニヤしている。
一体なんなんだ。アハウがニヤけるようなことなんて、大抵ろくでもない事ばかりなんだけどな。
個人戦では、キィニチが他に圧倒的な差をつけて優勝した。
私もMAXハイテンションになりながら応援した。柄にもないけどめちゃくちゃはしゃいだ。
気分はスタンディングオベーション。バカほど盛り上がっております。
と、ものすごくニッコニコしながらぶんぶん手を振る。
キィニチの視線がこちらを向く。
するとキィニチが少し目を丸くした。と思えばアハウが出てきてキィニチに何やら耳打ちをしている。
なんだなんだ?と思っていると、キィニチとばっちり目が合って。
ウインクされた。
キィニチはその後こちらに向けて小さく笑い、控室に戻っていった。
自分の心臓の音が、やけにうるさかった。
アハウがそう言って、俺の隣で笑っている。
控室の天井を見上げて、少しさっきのことを思い返してみた。
試合の前、アハウがこんなことを言った。
アハウはその時、とても悪い顔をしていた。
正直に言えば、すごく嬉しかった。自分の見えないところででも、ちゃんとあなたが俺を意識してくれているという事実が。
ただ、アハウの言葉には続きがあった。
そこまで言われて、試合に呼ばれてしまった。
心情の切り替えは得意分野なため、動揺せずに決勝まで勝ち残れたし、優勝だってできたが。
終わった途端に考えるのはそればかり。
群衆の歓声の中、モヤモヤと1人考えていると。
背後からあなたの声が聞こえて、無意識にそちらを向いた。
アハウが出てきて、俺にそんな耳打ちをする。
多少のためらいはあったが、
___取られるわけにも、いかないしな。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。