ついさっきまで部活をやっていた
疲れた中、私は鏡の前へ移動する
本気で笑ったのは
今から何年前の話だろう
それからはずっと
ずっと
何かを盾にして
現実なんか見たくなくて
紙に書いたような下手くそな笑顔を
貼り付けて
みんなに感情のない人間だと思われたくなくて
嫌われたら、なんかと心のなかで復唱する
洗面所でひとり
寂しく乾いた笑い声が響いた
嫌われないように
どうしたら嫌われないか
自分の中の検索窓で検索して
答えなんか見つからなくて
そんな事考えていたら
食欲なんか二の次だった
ピーンポーン
誰もいない部屋で音が鳴る
及川先輩が差し出す袋の中には栄養ゼリーやヨーグルトなど食べやすいものがいくつか入っていた
心配なんかさせてはいけない
ましてや私の心配なんか
この人はしなくていい
無駄人間だと思われたくない
存在価値があると思いたい
例えなにもなくても
"ごめんなさい"
を言いかけたとき
口を手で塞がれた
この人は女の子と少し距離が近いじゃないかと思う
納得はしないものの
言っといた
嫌われたくはないから
絶対に
嫌われてはいけないから












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!