代表への昇進と父親への反旗を翻してやろうと決めたあの日から早一週間。
珍しく三連休で部活がないということで密かな計画を立て始めてるわけだが何一ついい案が浮かばない。
仕事の引き継ぎを兼ねて社に赴いてるが穴という穴もなく、只々順調に仕事を覚えてるだけ。
やっぱりそう簡単にボロが出るなんてことはあり得ないよな。
皮肉なことに世界に通用する会社だから、私一人がひっくり返そうとしてもあと何年かかることか。
このままだとあの父親が死なない限り無理なんじゃないか?
タイムリミットは私が見え隠れするくらいだって言うのに。
ミンジュさんのためにも頑張らなきゃ….
ん….?ミンジュさん?
“ピリリ”
それから何度チェウォンに軽い脅しと、いつものように言ってくる「バカ」を送られたことか。
この子が私に電話してきた目的は何なんだ?私にバカということか?とか思っちゃったり。
まあ私としても良い休憩時間ができたからいいんだけれども。
私の人生の中でこんなに言われるなんてなかったよな….笑
一応お嬢様として育ってきたけど….流石チェウォンだ。
お嬢さん….ね。
深いソファにグッと身を任せる。沈んでいくように飲み込まれて深いため息が一つ。
近くに置いてあったクッションを顔の上に被せて、息を止めてみる。
無音の部屋に、光の入ってこない視界と浮いているような感覚がどこか心地よい。
ちょっと苦しくなったあたりで入ってくる酸素はあまりにも新鮮だ。
吐き出すように吐いた言葉は何処に反射する訳でもなく静かに消えていく。
この家も寂しくなってきたな….
「ただいま。」
どこか聞き馴染みのある声。誰よりも深くて品があって。落ち着きをくれる声。
何故こんなにも聞きたくなるのか分からないほど欲していた。
やっと。帰ってきてくれた。
長く感じる廊下の先に立っていた。優しい笑顔を見せながら。
でも….違う。
私の知っているおじいちゃんは、もうちょっと背が伸びていて、こんなにやつれていない。
本人ではある。それは確信的だけど。この変わり様は一体何なのだろう。
「少しだけ。手こずってしまってね。」
そうやって笑うおじいちゃんは私が今まで見た中で一番苦しそうだった。
まるで全ての罪を背負っているような表情を見るのは、余りにも辛いから。
何があったか聞いても「あなたの下の名前が気にする必要はない」と優しさを最大限に込めて言ってくる。
その優しさは、私にとっては優しくないってことをおじいちゃんは知ってるのかな。
誰よりも大切に思ってくれてる人だから。私だって守りたい。
そんな在り来たりな正義でもダメ….?
こんな声でも届けば良いのに。
ああ。大人の社会は難しいんだ。私一人じゃ何の嫌がらせにもならないのかな。
優しい言葉なんて、ただの甘えなんて一掃されて終わっちゃうの?
私が望んでいないように、おじいちゃんも望んでないはずなのに。
何で。何でそんなに無理に隠そうとするの?
聞いてよ。私はね。私は….
「あなたの下の名前?どうした。」
まだ….弱い人間だ….












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!