「人は絶対どこかで嘘ついてる。
嘘をつかなきゃいけないことがある。
避けられない事がある。私だってそう。
岩本くんだって、嘘、ついてるんでしょ」
『………俺は』
嘘をついている
言いまくってる
〇〇に出会うまで、嘘偽りの人生だったから
「……やっぱり」
『っ…………』
呆れたような声が聞こえ、俺は〇〇を見た
俺の事ばかりで少し腹が立った
「…人に言ってる事と自分の言ってる事、矛盾してるじゃん」
『それは分かってる …けどさ、雪島さんだって、
嘘つくんだろ?だったら一緒じゃね?』
「っ…………」
『人にそんなこと言ってっけどさ、お互い様なんじゃねーの?』
そう言うと、彼女は俯いて、少し震え出した
俺はポケットに手を入れて様子を伺った
そうしていると、勢いよく顔を上げ、俺を睨みつける
「岩本くんには分かんないよっ!
私の気持ちなんかっ!…嘘ついてる理由なんか、
ホントの事なんか知らない方がいいこともある。
だから嘘ついてるの!……分からないなら、単刀直入に言うよ」
『あー、そうだな。俺には雪島さんの考えてる事なんか分かんねーよ。俺だって俺の為に嘘ついたりしたよ。
…俺には雪島さんの事は分かんねーよ。…言えば?』
そう言った俺が馬鹿だった
この時、大切な事を忘れてしまっていた
頭に血が登りすぎていたんだ
「私はっ……」
「本当は岩本くんが嫌いなのっ!!」
『……………はっ?』












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!