今日は日曜日。朝9時から夕方の5時まで部活がある。中山はウザイし、5月の晴天は暑い。キツいけど、私はソフトテニスが好きだ。好きだから、キツイのも乗り越えられる。
今日は中山の機嫌が良い。私たちも少しずつ迫ってきている最後の中体連に向けて気合いが高まってきている。
午前中の練習が終わり、昼ごはんの時間になった。これは少し自慢なんだけど、私たちの部活は本当に仲がいい。同じ学年とはもちろんだけど、後輩とも仲が良くて、昼ごはんは大体全員で円になって食べる。
「莉子ちゃーん、そのトマトちょうだーい!」
「じゃあ、舞子先輩のその肉、ひと口くださーい」
舞子は誰とでもすぐに仲良くなれる。すごく素直で、羨ましい。後輩とこんなに仲良くなれたのも、舞子のおかげかもしれない。
「おーい、じょしー。元気にやっちょー?」
私たちが昼ごはんを食べていると甲斐先生がやってきた。
「甲斐先生ー!どうしたんですかー!?男子はー?」
「男子は今日は、午後から練習。今日、すげーあちいから、お前らが生きてるかなー、と思って様子見に来たんよ。美味しそうな弁当食っちょんねー」
「甲斐先生、昼ごはんたべてないんですかー?」
「さっき、コンビニ弁当食ってきた」
「あはは!作ってくれる彼女いないんですかー?」
「うるせー!おらんわ!」
「あははは!!」
これがいつもの流れ。誰かが彼女のことを聞いて、甲斐先生が、おらんわ!と言って、その後甲斐先生は「頑張れよー」と言って職員室に戻っていく。
でも、今日は違った。
「えー!でも、河野先生と付き合ってるんじゃないんですかー?」
友達が多い分、いろんな情報を知っている舞子が言った。
「うそー!?ほんとにー!?」
その場にいた全員が驚いた。甲斐先生も。
「いやいやいや、何それ!?俺が1番驚いてるわ!」
甲斐先生が言った。
「いや、なんか、甲斐先生と河野先生が一緒に歩いてるところ見た、って人がいたんですよ」
「ははは!別に、一緒に買い物に行くことぐらい、よくあることだよ。学校で必要なものとかさ」
甲斐先生は笑いながら言った。
なんか、ショックだった。先生に彼女がいるということが。しかもそれが同じ学校の先生だなんて。
皆はホントですかー!?とか、ヒューヒュー言いながら楽しそうにしてるのに、私はできない。
モヤモヤする。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!