第72話

鍵。
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2018/01/26 23:57
「どうして!どうして華が死んじゃうの!」
「仕方ないだろ、運命、だったんだろ…」
「華…目を覚ましてよ…!」

体育館のステージの上。舞子がセリフを言ったところで、先生から声がかかった。

「うん、今日はこの辺で終わろうか」

時計は18時を指している。もう下校時刻だ。

先生の話を聞いて、みんな帰り始める。

「かのーん!ばーいばい!」

友達に手を振って、私は職員室へ向かう。体育館の鍵を返すために。



「失礼します」

職員室には、まだ、たくさんの先生が残っていた。学校はブラック企業だ、と言われるのはこういうところなんだろうな、と思いながら鍵を返す。

「あ、花音!」

職員室を出ようとしたところで、甲斐先生に呼び止められた。

「はい?」

先生は私を手招きして呼んだ。

「これ、明日の練習でみんなに配ろうと思ってるんだけど、どう?」

先生が見せてきたプリントには、先生から劇に出る人、一人一人へのコメントが書かれたものだった。

「これって……」
「文化祭まであと一週間だろ?前日に配るよりも、こっちの方がいいかなって思って」

プリントには、手書きでコメントが書かれていて、先生の思いが伝わってきた。

「どう?ちょっと重いかな?」
「全然っ!重いことないです!めちゃめちゃ嬉しいです!」

それを聞いた先生は、少しほっとした表情を浮かべた。

「じゃあ、明日これ配るから、花音も楽しみにしとけよ」
「はい」

そう言うと、私の手に何かを握らせた。

「じゃ、呼び止めてごめんな。もう暗くなるから早く帰れよ」

そのまま、半ば無理やり職員室から出された。手の中のものを確認すると、

「………鍵?」

私が握っていたのは、車の鍵。付箋がついていて、

『一緒帰らない?』

と書かれていた。

久しぶりに先生と話が出来る!そう思うと、自然と笑みがこぼれる。

浮ついた足取りで靴箱に向かう。靴を履き替え、先生の車に向かう。まだ先生は来ていない。車から少し離れたところで先生を待っていると、先生の声が聞こえてきた。

「あ…」



玄関から出てきたのは、甲斐先生と、河野先生だった。








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