校舎裏_。私はずっと憧れだった先輩に告白する。
驚いた様子で、先輩はわたしをみていた。
少しの沈黙が流れたあと、先輩が口を開く。
やっぱりそうだよね、こんなかっこいい人フリーなわけないもんね…。
泣きそうになるのをこらえながら言った。
そういい、歩いていく先輩を見ながら私はその場から動くことが出来なかった。
告白なんて慣れないことするんじゃ無かった。
そんなことを思いながら、私は泣くことしか出来なかった。
泣いていると、後ろから声が聞こえた。
そこに居たのは、見たことない後輩の姿。
こんなみっともない姿を見られてしまった。
あっち、年上だということに気づき敬語に直しつつ心配そうにのぞき込んできた。
軽く笑いつつ、涙を袖で拭う。
でも、拭けば拭くほど涙は溢れ出てくる。
差し出されたのは、男の子のものとは思えないくらい可愛らしいハンカチだった。
とにかく恥ずかしくて、けど、涙は溢れてきて。
そのハンカチを貰うしかなかった。
少し落ち着いた時、言ってくれた一言。
初対面の後輩にこんなところを見せて、ハンカチまで借りて本当に情ない先輩だ。
笑顔で後輩がそう言ってくれて、何となく嬉しかった。
お世辞でも嬉しかった。
笑顔で言ってくれるので、私もつい笑顔で答えてしまった。
何故か顔を赤くしてる後輩に、名前を聞くことにした。
元気よく名前を言ってくれた。
“五十嵐大河”かっこいい名前だなぁと思った。
にこやかに、挨拶をしてくれてこの子はほんとにいい子だと思った。
振られて辛かったはずなのに、五十嵐くんのおかげで
少し元気になれた気がする。
そういい、走ってどこかへ行ってしまった。
初対面なのになんであんなにも人に一歩近づけるんだろう。きっとコミュニケーションが上手なんだと思った。
ふと、先ほどの笑顔を思い出した。
ヒューっと風が吹き、足元にはハートの形の葉っぱがヒラリと舞って来た。
これは、何かの始まりの合図なのかもしれない。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。