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第31話

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2025/08/24 07:04 更新


ꕤ𓈒𓂂◌





レヴィの精神状態がしっちゃかめっちゃかになっている頃、件のあなたはロヴィとほんわか楽しくお喋りに花を咲かせていた。






あなた
じゃあじゃあっ、今度そのお店のハンバーグ食べに行きましょう!約束ですよ!
ロヴィ・ローズクォーツ
ふふ、指切りするの?可愛いなぁ。




あなたのしなやかな指とロヴィの白く骨張った指が絡み合い、ささやかな約束を紡ぐ。

ロヴィは視線を落として絡め合わせた小指をじっと見つめ、クスクスと楽しげに微笑んだ。



ロヴィ・ローズクォーツ
もっと欲張って良いなら、さっきあなたちゃんが話してくれたアイス屋さんとクレープ屋さん、あとシュークリーム屋さんにも行ってみたいな。
あなた
もっちろん!全部奢るので覚悟の準備をしておいて下さい!
ロヴィ・ローズクォーツ
楽しみだなぁ。誰かと約束をするなんて、いつぶりだろ。



ロヴィにとっては何気ない一言だったが、それはあなたの涙腺に会心の一撃を与えたらしい。

あなたはボロボロと大粒の涙を零しながら、ロヴィをギュッと抱きしめた。ちなみに恋愛感情とかは無い。
ただ、彼が過ごしてきた閑静な日々を想像して、少し悲しい気持ちになってしまっただけなのだ。


ロヴィ・ローズクォーツ
もう、優しい子だなぁ……。オレなら大丈夫だよ。



ロヴィはやれやれと苦笑しながら、あなたの頭を優しく撫でた。手触りの良い柔らかな髪が指に絡まり、するりと解けていく。


ロヴィはちょっと悪戯したくなって、あなたの背中に腕を回すと彼女の身体を強く引き寄せた。

あなたの華奢な身体を膝の上に乗せて両腕ですっぽりと囲ってしまえば、もう彼女は自分だけのものになったように見えた。



ロヴィ・ローズクォーツ
泣かないで、大丈夫だから。あなたちゃんが傍に居てくれたらオレは元気いっぱいだよ。




まだしゃくり上げている彼女の背中を優しく撫でながら、もう片方の手で顎を持ち上げた。
あなたのウルウルな瞳がロヴィの顔を映す。

ロヴィはあなたの耳元に唇を寄せ、小さな声で「大丈夫」「ありがとう」と囁いた。

あなたは何度も頷き、ロヴィの首に腕を回した。






ロヴィ・ローズクォーツ
落ち着いた?
あなた
うん゙……。ごべんなさい。泣いちゃっで。
ロヴィ・ローズクォーツ
ほら、お水飲んで。オレの飲みかけだけど平気?
あなた
はい゙、ありがとうございまず……。





実はベッド脇の棚の中に使っていないコップが入っているのだが、ロヴィは敢えて自分が口を付けたコップを差し出した。
もうそういうことである。


あなたはロヴィの膝の上で、彼の手ずから水を飲ませて貰っていた。果たして病床に伏す人間はどちらなのか。




やがてあなたが完全に落ち着いても、ロヴィは彼女の身体を腕の中に閉じ込めて離そうとしなかった。







まさか兄と好きな子がイチャコラしているとは夢にも思っていないレヴィは、好きな子が待っているはずの応接室への道をトボトボと歩いていた。


クソ親父から聞いた情報を一刻も早く忘れてしまいたかった。
あぁ、早くあなたの笑顔を見たい。そうしたらこんなくだらない悩みなんか、全部纏めて吹き飛んじまうはずだ。



そうして長い長い時間を掛けてようやく応接室に到着したレヴィは、全く甘くない現実を目の当たりにした。




レヴィ・ローズクォーツ
レヴィ・ローズクォーツ
アイツ……応接室で待ってるって話だっただろうがよ……。






レヴィは盛大に溜息をつき、長いブロンドの髪をぐしゃぐしゃとかき乱した。









レヴィ・ローズクォーツ
レヴィ・ローズクォーツ
クソっ、アイツどこに行ったんだよ……!




レヴィは苛立たしげに呟いた。


空間拡張魔法がかけられたこの邸宅はアホみたいに広い。
邸宅を拡張する前に家を出たレヴィは、この館がどこまで広がっているのか、未だ全貌を掴みきれていない。


とりあえず手近な扉を開けては閉じ、開けては閉じを繰り返してはいるが、アイツを見つけるまで途方もない時間がかかりそうだ。





レヴィ・ローズクォーツ
レヴィ・ローズクォーツ
ったく、応接室のソファに縛り付けておくんだったな……。




物騒な本音である。


にしても、どうしたものか。
いよいよ探知魔法を使うべきか?










──その時、前方の部屋からヒソヒソと控えめな話し声が聞こえた。


あれは、あの扉は、確か──。









‪‪𓂃 𓈒𓏸◌‬





病床に臥せる青年。
完治する見込みは極めて薄く、誰からも見放された青年。


彼は予感していた。近いうち、この病に蝕まれて自分は死ぬのだと。
けれど不思議と怖くない。死へ向かうのはどこか懐かしいことのように思えた。



──だが。

ロヴィは出会ってしまった。
先のない人生で彼女に出会って、確かに生を渇望した。


ロヴィにとって、あなたは希望そのものだった。






‪‪𓂃 𓈒𓏸◌‬







ロヴィ・ローズクォーツ
あぁ、こんなに色んな話をしたの何時ぶりかな。あなたちゃんは話し上手だね。
あなた
そ、そうですか?えへへ、話し上手だなんて言われたの初めて……!


頬を染めてはにかむあなたは天使のように見えた。
ロヴィの表情が際限なく緩む。


可愛い、可愛すぎる。

弟が惚れるのも当然だと思う。
自分もまた、この子に魅了されかけているので。



ロヴィはあなたを膝の上に乗っけたまま、彼女の髪を手指に絡ませて弄んだ。手触り最高の髪はいい匂いがした。
貴族の女の子達は総じて良い香りの香水を振りまくが、どれもあなたの香りには劣るだろう。

ロヴィは彼女の髪をくるくるするのを止めて、今度は真っ白で柔らかな頬に手を滑らせた。めっっちゃくちゃすべすべだ。

ふと、あなたの顔を覗き込んだ。
あなたはあちこち触れられても嫌な顔一つせずに、ロヴィに身を任せている。
可愛がられることに慣れてるんだなと思う。









──カツン。








硬い靴の音。


反射的にロヴィは顔を上げた。

廊下の向こうから誰かがやって来ている。
足音の主は相当苛立っているのか、革靴を荒々しく踏み鳴らしている。


あぁ、そういえば応接室を無断で抜け出して来たって言ってたっけ。



ロヴィは苦笑しながら、あなたを膝から下ろそうとして──ふと、止まった。

可愛い弟に、ちょっとだけ意地悪をしてみたくなったのだ。





ロヴィ・ローズクォーツ
あなた。
あなた
ん……?
ロヴィ・ローズクォーツ
そろそろ応接室に戻らないとレヴィに怒られちゃうんじゃない?
あなた
うーん……。それは、そうですけど。




扉を一枚隔てた向こうに気配がある。

ロヴィは悪戯っぽく微笑んで、あなたの身体を抱きしめた。




ロヴィ・ローズクォーツ
それはそうだけど、何?
あなた
……もうちょっとロヴィさんといたい。





次の瞬間、部屋の扉が吹き飛んだ。


あなたはビクリと全身を震わせ、恐る恐る扉があった方向を振り向いた。




そこには、ご自慢の長い脚で扉を破壊した張本人が立っていた。

たいそうご立腹な様子の彼は、兄とその膝の上で寛いでるあなたを一瞥すると、不機嫌そうに口角をひくつかせた。




レヴィ・ローズクォーツ
レヴィ・ローズクォーツ
……オレの・・・あなたが随分世話になったみたいだな。





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