しとしとと雨が窓を濡らす季節。
月も見えず明かりもない部屋で一人布団に籠り静かにどこかをぼやける眼で見つめる。
ふと枕の傍に置いていたスマホに手を伸ばし、ポツポツとメッセージを送るも
どうせ見ないよね
送ったものを消してまた布団に潜る。
送った跡は消えないのに。
なんだかなぁ~……
やる気が起きないんだよなぁ~……
誰かジュース買ってきて~
変哲も何もないとあるクラスの梅雨この頃。
枕草子では夏の夜に雨降ると趣があっていいよねっ☆なんて書いてある時期になってしまい、学生一同降るなら朝の6時まで大雨降ってくれ……警報が出たら俺たちは勝ちなんだよ……!!という気持ちが募る。
出なかった日の朝は教室に水玉が浮かぶのだが。
窓を打ち付ける大粒の雨の日。
憂鬱な反面、雨に対し授業にはない楽しみを見出した宗一朗は全くと言っていいほど授業に集中できていなかった。
雨でどうせ起きないよな、アイツ。
電車遅延してるし、帰りに煌とカラオケは無理だな……
思考に馳せているとそれは教師に伝わる。とどこかの誰かが言っていた気がするようなことが起きてしまい……
何故リスの話題なのか意味が分からないもののあたってしまった。こうなった以上答えなければ減点だ。
そんなことを思っている暇はない。
周りには居眠りしてる奴や、陰でこそこそスマホを弄っている奴がいる中、理不尽すぎる指名で若干いらだつものの何となく考えてみる。
考えたところで良い回答が出てくるわけではないが……。
いや、何であってるんだよ……。
教室の一部では普通に笑っている生徒もおり、前の席に座る煌の肩がふるふると震え、琉風も今にも吹き出しそうな表情で黒板を見ている。
なんか納得いかないむず痒い気持ちがのこり、宗一朗は煌の背中を小突いた。
生物教師も笑いながらリスのしっぽの話をして梅雨の雨は徐々に柔らかくなっていった。
今日の昼休みのネタは困らないだろう。
購買で買ってきた厚焼き卵が豪快にサンドされたものをパイプ椅子の背を前にして座る煌と足組をしながら椅子に座り分け合う宗一朗は、ハムチーズのラ〇チパックをパクつきながらデイリーをこなす椿の言葉につい口元がひきつる。
安定のメロンパンを口元に運びながら片手でスマホを弄る明良は、目の前でレタスやソーセージが挟まれているであろう食パンピタパンを無心でもぐもぐと食べている琉風をチラッと横目に見て、「今度ピタパン持って来るのありかもしれない……」と心でつぶやいた。
いつもの校舎裏は雨が小雨になっても朝のバケツをひっくり返したような雨には負けてしまい、どこもかしこも濡れている。
そんなことが分かっていても、不思議なものでイツメンというものは以心伝心が働き中庭に抜ける用務員専用扉の前に集まるらしい。
しかし、雨。行くあてのない彼らは
なんてやりとりのもと、生物教師の天野のもとへ行くとすんなりと受け入れてくれた……
のは良いのだが、教室は埃で彩られ、教師専用の資料棚のガラス引き戸には大きなひび、ロングソファには薄ーい白いベールも被っている。
雨の中校舎裏で昼食をとる馬鹿ではないので、しかたなし5月なのにどことなく黒いカーテンや、教室の天井に貼られた蜘蛛の巣からハロウィンを感じる教官室で昼食をとることとなった。
教官机から天野が彼らが昼食をとっている講義用机を覗くと、その言葉に何とも言えない微妙な空気が5人の間を走った。
確かにこの5人は部活仲間でもなければ同じ趣味がある訳でもない。偶然一緒に校舎裏で昼食を食べるようになった仲としか言いようがない。
ピタパンを両手にもち何となく神妙な面持ちの琉風の隣で、ハッとひらめいた椿はデイリーで忙しくしていた手を止め封印されし言葉を呟いてしまった。
椿の言葉にたまらず、吹き出し笑いが止まらない宗一朗、煌、明良は
デュエルするとき集まればいいんですか?
それアリっすね。
え、じゃあ俺右腕で。
草。
自分左足あたりにでも行きますか
明良さんはデュエリストだろぉ~
え。
男子の話に花が咲く。
花が咲いた様子を見た椿と琉風は「おっとぉ~」と戸惑いを見せるも、時折お喋りを聞いては笑みをこぼした。
本題の彼らがどういう集まりなのかというのは結局のところこの日は特に明言することなく、明良曰く「明言しなくてもいい」関係。だそうで、今は「〇グ〇ディア」ということでこの話は一旦おしまいとなった。
#5 井上明良のウンチク
【#6 に続く】


















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!