第21話

番外編
574
2025/06/15 08:19 更新
にゃ〜


萩原の部屋で猫の声が響く。


もちろん、迷子の猫じゃない。
萩原研二
どうしてこうなった……
遡ること、数時間前ー。












今日はハロウィン。

どういう訳か、私と萩原が、渋谷に行って警備をしてこい、と言われ駆り出されたのだ。
萩原研二
そこのお兄さん、暴れないの!
あなた
ちょっと!ポイ捨てしないの!
おねーさん、俺らと一緒に遊ばない?
あなた
警察なんですけど!?
まだだけど
えへーびっくりー
コスプレかと思ったー
あなた
君、酔ってるでしょ?
そーんなことないよー?
俺らー、まだ18だしー
あなた
はぁ?
そんな歳で飲酒しちゃダメって法律で決まってるのよ!?
君たち捕まるよ!?
じゃあー、おねーさんがー、たいほしてー
萩原研二
まあまあ、そこはお兄さんに捕まろうか
萩原研二
あなたの名字ちゃん、おれ、この人たち交番連れてくわ。
ちょうど近くにあるし
あなた
わかった






萩原が男たちを連れていったとき、制服の裾を引っ張られた。
あなた
……?
子供
トリックオアトリート!
お菓子をくれなきゃいたずらするぞ!
みると、魔女の格好をした小さな女の子だった。

あいにく、今は飴しか持っていない。
あなた
ごめんね、今、飴しかないんだ
はい、どうぞ
子供
わーい、ありがとう!
バイバイ、と手を振る。

可愛いな。

小さい頃の愛菜にそっくりだ。
萩原研二
お待たせ
あなた
おつかれ
萩原研二
おう
あなた
ねぇ、ちょっと休憩がてらコンビニに行かない?
萩原研二
珍しいね、あなたの名字ちゃんから誘ってくるなんて
あなた
さっき、子供にお菓子をねだられたんだ。
ちょうど飴があったから良かったけど、もう無くなっちゃって。
イタズラされたくないし
萩原研二
んじゃ、行こっか。
俺ら、そんなに必要とされてないっぽいし




コンビニに行くと、あまり見ない種類の飴が置いてあった。
あなた
なにこれ?
萩原研二
……?
ハロウィン限定、あなたの願いが叶う魔法の飴……
なんだこれ
あなた
さあ
萩原研二
買ってみようぜ
あなた
えー、買うの?
萩原研二
面白そうじゃん
あなた
萩原の奢りならね
萩原研二
へいへい


店員
ありがとうございましたー
袋から取り出して見ても、見た目は普通の飴とかわらない。
萩原研二
何が違うんだろうな
あなた
さあ?

味は、パンプキン味と変わっているけど、不味くはなかった。
萩原研二
不味くは無い……けど、なんか……なぁ
あなた
そう、だね
萩原研二
それに、願いが叶うっつってもなんも起きねぇし
あなた
萩原、なにか願ってみてよ
萩原研二
えー、声に出さなきゃダメ?
あなた
いや、どっちでもいいけど
萩原研二
じゃあ、(あなたの名字ちゃんに、かっこいいとこをみせたい)
あなた
願った?
萩原研二
ああ。
あなた
……なんにも、起こらないけど
萩原研二
あれー?
あなた
まあ、たかが飴のコンセプトー
通行人
きゃー!ひったくよー!
あなた
え?
萩原研二
!!
ぐぁ!
あなた
(わぁお)
萩原が、ひったくり犯を背負い投げしたのだ。
萩原研二
はい、どうぞ
通行人
あら、ありがとう
あなた
さっすが、萩原
萩原研二
願い、叶った……
あなた
え?
萩原研二
いや、おれ、あなたの名字ちゃんにかっこいいとこ見せたいって願ったんだよ
あなた
ああ、びっくりした。
犯罪が起こりますように、なんて願ったのかと
萩原研二
あなたの名字ちゃんのなかで俺はどういうポジションなの?
あなた
ま、まあまあ
警官
ありがとう、今日はもう、帰っていいぞ
あなた
あ、はい





学校に戻り、廊下を歩いている途中。
萩原研二
そういえば、あなたの名字ちゃんは、何か願いはないの?
叶っちゃうかもよ
あなた
願い、ねぇ……
うーん、強いていえば、そうだな……あ、猫になってみたい、とか?
萩原研二
あはは、なにそれ


ボンッ

萩原研二
え?
あなた
(え?なにこれ?どうなって?)
萩原研二
あなたの名字ちゃんが、ね、猫になっちゃった……
あなた
(……は?)
にゃー
嘘でしょ?にゃーしか言えないんだけど!?
萩原研二
(どうしよう、可愛い)
あなた
(と、とにかく人気のないところに行かなきゃ)
(ほら、萩原、抱えて)
精一杯腕?いや、前足?を伸ばす。
萩原研二
え、あ、抱っこ?///
あなた
(照れてる場合じゃないから〜)
あなた
シャー
萩原研二
ああもう、わかった。わかったから威嚇しないで。悲しくなるから




萩原の部屋につき、腕の中から下ろされる。


暖かかったのに……
萩原研二
とりあえずあいつら呼ぶか……



萩原研二
『もしもし?ちょっと急用でさ、うん、降谷と班長と、諸伏も呼んでくんない?うん。ありがとう』


萩原が電話中、私は猫であることをいいことに、ベッドの中に潜り込んでいた。
萩原研二
あれ?あなたの名字ちゃん?
あなた
にゃー
呼ばれたので返事をする。
萩原研二
う、うわぁ!ちょっと、布団のなか……!!
萩原は照れながら慌てているが、知らん振りをする。
するりと腕の中を抜ける。

そして、ベッドに座っている萩原の膝の上で丸くなる。
萩原研二
ちょ、ちょっと……///
萩原研二
(今だけ、今だけなら……!)
頭を撫でられるが、不快じゃない。

気持ちよくて、ゴロゴロと喉がなる。


ずっと猫でもいいかも……
松田陣平
来たぜー……って、何やってんだ?
萩原研二
あ!ああ!これは、その、違くて!!
松田陣平
おい、うちの学校ペット禁止だろ?
何かと思えば、捨て猫の話か
降谷零
おい、何を騒いでいるんだ?
って、猫?
伊達航
あんまり騒ぐと叱られるぞ〜
ん?そこにいるのは猫か?捨てられてたのか?
諸伏景光
急に呼び出してどうしたのかと思えば、捨て猫?
萩原研二
違うんだよ、これには海よりも深ーい理由があって
萩原研二
……ってことがあったんだよ
松田陣平
馬鹿じゃねぇの?お前
松田が私を見下ろして言う。

上から目線、腹立つ
あなた
シャー
物理的にも態度的にも上から目線だったので、ひとかきしてやった。
松田陣平
いって、何すんだよ
諸伏景光
……ねぇ、萩原とあなたの名字さんは、その、願いが叶う飴って言うのを食べて、猫になりたいって願ったあなたの名字さんは、運悪く叶ってしまったんだよね
萩原研二
そうなるね
諸伏景光
だったら、もう一度食べて、人間に戻りたいって願えば、戻れるんじゃない?
萩原研二
ああ、たしかに!
げっ、またあの可もなく不可もない味の飴を食べなきゃいけないの?
降谷零
あなたの名字がものすごい警戒してるけど、そんなにまずいのか?
萩原研二
不味くは無いんだけど、美味しくもないって言うか……
降谷零
なるほど
萩原研二
でもさ、ほら、食べなきゃ元に戻れないよ?
言われるがままにぺろぺろと飴を舐める。
舐めても舐めても無くならない。
伊達航
………なぁ、これ、砕いた方がいいんじゃないか?
萩原研二
そうだね
諸伏景光
なにか碎けるようなもの、ないかな
萩原研二
あ、俺、空き缶持ってる
あなた
(なんで持ってるんだよ)
そして、飴は降谷の馬鹿力によって砕けた。


ガリガリと音を立てて食べている最中、松田が頭を撫でようとしてきたので爪で引っ掻く。
松田陣平
いった……チッ
萩原研二
懲りないねえ
全ての砕けた飴を舐め終えたので、人間に戻りたいと願う。
あなた
(人間に戻りたい)


ボンッ


あなた
わっ
萩原研二
良かった……
松田陣平
本当にあなたの名字だったんだな
萩原研二
なに、陣平ちゃん俺が嘘ついてると思ってたの?
松田陣平
んーや?
嘘っつーか、とうとう幻覚見始めたかって思ったな
萩原研二
え、そっちの方が何気に傷つくんですけど
諸伏景光
まあまあ、戻ってよかったじゃないか
伊達航
にしてもなんであなたの名字は猫になんてなりたかったんだ?
あなた
……猫は、人間と違って、いつだって好きな時に甘えられるでしょ。
松田陣平
なんだそれ
あなた
ほら、私はさ、いつだって甘えられる環境にいた訳じゃないから。
まあ、別に甘えたいとかそんなんじゃないけど
松田陣平
矛盾してるぞ
あなた
うるさいなあ
あなた
って、ちょっと萩原!いきなり何?
今までの会話を聞いていた萩原がいきなり抱きついて来たのだ。
萩原研二
だって、あなたの名字ちゃんが寂しいこと言うから
あなた
どういうこと?
萩原研二
今までだったらそうだったかもしれない。
誰にも甘えられる環境にいなかった。
でも、今は違う。あなたの名字ちゃんだけが、苦しみを背負う必要は無くなったんだ。だから、甘えたいときに、甘えればいいよ
あなた
……なんか、さっきのひったくり犯を背負い投げしてた時より、今の方がかっこいいと思う
萩原研二
………!?///
不意打ち、やめて
あなた
え、ごめん……?
松田陣平
おい、俺らは何を見せられてるんだ?
伊達航
イチャつくなら他所でやれー
松田陣平
班長、お前は黙れ!
んでお前ら!お礼くらい言いやがれ
あなた
あ、ごめん、忘れてた。
ありがとう
松田陣平
忘れんなよ
ったくしゃーねーな
諸伏景光
どういたしまして
降谷零
無事に戻って良かったな
あなた
うん
萩原研二
ありがとね、もう帰っていいよ
松田陣平
んだよ、イチャイチャを見せられた挙句お礼もそこそこにお払い箱かよ
萩原研二
ごめんって
あなた
松田、降谷、諸伏、伊達、萩原、また明日ね


5人揃って「「「「「おう」」」」」
これで本当に完結しました。

今までありがとうございました。
こちらとこちらも、是非愛読していただければ幸いです。

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