小さくそう口にして 、
保健室に足を踏み入れた
中に入って見渡せば 、
先生らしきひとの姿は見当たらない
見当たらない 、が
こういう時の正解が分かんねぇ
勝手にベッドなんて
使っちまってもいいのか … ?
先生を待つべきなのか悩み始めたとき 、
ひとつ閉まっていたカーテンが開かれた
しばらく 、
お互いに無言だった
無言のまま見詰めあって 、
どのくらいの時間が経ったのか
先に口を開いたのは 、
先輩の方で
覚えていてくれた
俺の顔も 、名前も 、ちゃんと
あの日の俺はまだ 、
どこに進むのか決めていなくて
そう口にしたことも 、
覚えていてくれていたんだ 、このひとは
そう考えたら 、
すげー 、嬉しくて
うまく 、言葉が出てこない
もっとちゃんと 、話してぇのに
先輩はそっか 、と言ったっきり
困ったように口を噤んでしまった
… 何か 、何か
話さなきゃ
でなきゃ 、
俺がここに来た意味は











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!