夕方
東雲家
東雲彰人の姉、東雲絵名。
口ではこう言っているものの、何だかんだ彰人も、そして絵名も、お互いを大切な姉弟だと思っていた。
彰人の言葉に呆れたようにため息をついた絵名は、自分のスクバを手に持つと、玄関のドアを開けながら言った。
そう言って絵名は上機嫌で学校へ向かった。
そうして彰人は少し上機嫌で自分の部屋に向かった。
しかし、約束が果たされることは無かった。
絵名がその夜帰ってこなかったのである。
不審に思った彰人が街中を探した所、絵名は神山高校の近くで倒れ込んでいた。
絵名が帰って来ない。
今の時刻は午前4時、絵名は普段なら確実に帰っているはずの時間だ。
チーズケーキはとっくに食べ頃を過ぎている。
そこで彰人ははっとした。
靴を自分の足に引っ掛け、身を投げるように外へ出た。
そうして神山高校の近くに走っていくと、自分の姉が苦しそうに倒れていた。
倒れている。意識がない。
でも、少し。本当に少しだけ…まだ呼吸をしていた。
姉はオレが助ける。
…そして………
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!