先輩の顔が離れるまで、
何が起きたのかわからなかった。
唇にはかすかに先輩の熱だけが残っている。
先輩はフリーズしている私を心配したのか
顔を覗き込んできた。
少し恥ずかしそうに目を逸しながら答えた。
少し余裕がなさそうな顔で先輩はそう答えた。
そう言えば先輩、
恋愛に苦手意識があるって言ってたっけ。
ってことは───
だって行動だけじゃなくて、
言葉でもちゃんと言ってほしいから。
わがままで欲張りだって思われるかな?
でも、キスだけじゃ満足できない。
なんてったって私は
自他ともに認めるヤンデレなんだから。
想いを込めてもう一度告白する。
先輩は私を見つめて、ふわりと微笑んだ。
これまでも先輩は、私の全てを受け止めてくれた。
きっとこれからもそうだろう。
涙がこみ上げてきて、
前はぼんやり見えなかったけど、
先輩は大げさだよと言って笑ってくれた。
─────それから数ヶ月後。
私を取り巻く環境はガラリと変わった。
学校が終わるとすぐにスタジオに向かって、
読者モデルとしての撮影をする毎日。
多忙な日々の中でも隙をみては先輩と連絡を取り、
甘く幸せな時間を過ごした。
そして一番の変化は、ビビアンさんの助けもあり、
両親は離婚することになったことだ。
これで義理の母と姉とは正式に他人になる。
お姉ちゃんはそれ以上何も言わずに
義理の母に連れられ家を出ていった。
今はもう、お父さんがたった1人の家族。
これからは、もう少しお互いに歩み寄れたらいいな。
────ピンポーン。
まるで示し合わせたようにインターホンが鳴った。
玄関を開けると、そこには少しだけ緊張した面持ちの
先輩が立っていた。
お父さんは困惑した顔のまま
その場で固まってしまった。
得意げにそう言うと先輩は
満更でもない顔でため息をついて、
お父さんに自己紹介を始めた。
先輩の隣で小さくそう呟く。
シンデレラはお城の王子様に恋をした。
一方ヤンデレラは、
自分を変えてくれた魔法使いに恋をした。
どちらもハッピーエンドだけれど、
ひとつだけ決定的な違いがある。
ヤンデレラはただガラスの靴を待つだけではなく
ハッピーエンドを自ら掴んだのだ。
END

















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!