いつぞやの時みたいに、息を切らしながら入ってきたグガを寝室へと案内すると、目を丸くして驚いていた。
僕と目が合った後は0.1秒もなかったかもしれない。すぐにグガは無言で頷いて毛布にくるまっているあなたをそのまま抱き上げた。
慌ててバッグを掴み二人でマンションを降りる。地下駐車場の入り口に着くとあの日の思い出がフラッシュバックした。
冷えたコンクリートの隅にうずくまった塊は、今も俺の中に居る。
グガの運転で宿舎に向かっていると思っていたのに、明らかに遠回りをしたから声を荒げた。一刻も早くあなたを安全な場所に連れて行きたい。
グガの目線の先のナビが宿舎じゃない場所を目的地としているのに今まで気付かなかった。
表示されているソウルから少し離れたその場所は全く身に覚えがない。
ジニヒョンはたまに驚くようなことをするから不安はあるけど、こういう状況で悪いようにする人じゃない。
速度ギリギリで急ぎながら時折後部座席を気にして、俺達は目的地まで無言のまま向かった。
見たことも来た記憶もない古くて大きな屋敷に着いて、俺とグガは顔を見合わせた。
何か、植物?花のような香りが俺たちを包んでいる。
迷ってる時間なんてないからとりあえず車を降りると、玄関が開いて庭の向こうから走ってきたのはまさかの元、彼女だった。
なんで彼女がここに?とか気まずいとか、そんな感情よりもまずあなたを助けたい。
どうやら協力してくれている状況に一応感謝しながら、車を停めるグガに荷物を頼みあなたを抱えて "テヒョンアの彼女" の後を追い建物の中に入った。
古いけど豪華な内装の屋敷を歩き階段を上がり部屋に案内されると、ベッドの近くに人が集まっている。
ジニヒョンとテヒョンアは床に置かれたいくつかの袋の中身を確認しながら会話をしていて、もう一人知らない女性がいた。
『ここにゆっくり寝かせてください』と言われ、その通りにあなたを降ろした。
相変わらず眠っていてもう二度と目を醒まさないような顔をしているから、不安ばかりが募る。
ベッド脇に腰掛け少しだけ戻った体温を感じながら手を握ると、ジニヒョンが俺の隣に立った。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!