恐らくこう言ったはずだ
部屋からの外の声はあまりよくはないが
微かに聞こえる
晩御飯もできあがったので丁度良かった
鍵を開ける音がした
相澤は急いで玄関に向かう
大荷物を持って、ドアの鍵を閉めるあなたがいた
数年前まではここにいたはずなのに、
初めて出迎えるような感覚だ
あなた も同じ感覚なんだろう
少しぼうっとしている
それからいつもの優しい笑顔を見せた
それにつられ、相澤は微笑んだ
荷物をすぐに置いてこちらに抱きついてきた
あなたが何か勘づいたのか、リビングの方を見た
あなた は目を開いて口角が上がっていく
2人は目を合わせて笑いあった
相澤はいつにしようか迷っていた
ポケットにしまった手をぎゅっと握りしめた
風呂の後にも関わらず、貝に抱きついた
にゃあごと鳴いて擦り寄ってくる
数年いなくてもやはり飼い主は覚えてくれるものなのだ
見ないうちに大きくなったなぁ
なんて思いながら撫でる
ソファに寝転がりそう思った
この家の匂いと温かさ
一人暮らしでは味わえない
来月にはもう社会人としての仕事が始まる
芦戸の言葉が蘇る
自分では見えないが、分かりやすく顔が真っ赤になっただろう
家の温かさか、
風呂に入ったからか、
顔が暑くなったからか、
はたまた貝の体温かで、眠気が襲う
まぶたが落ち、あなたは深い眠りに陥った
風呂上がり
目の前にはソファにはぐっすりのあなたと貝
ピクリともしずに寝ている
久々に家に帰ってきて安心してしまったのだろうか
来月なれば共に仕事に行かなければ行けない
相澤は共に行けることさえも楽しみにしていた
相澤は肩を少し揺らした
なにか気づいたように自分の部屋に行き、
小さな箱を持ってきた
髪を優しく掬う
悩みに悩んだ末、箱から銀に輝くものを取りだした
想像して微笑む
断られることは無いと信じて、左手の薬指に填めた
起こさないようにゆっくりあなたを抱き抱える
足音を立てず寝室へ運ぶ
静かにあなたをベッドに乗せて相澤は呟いた














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!