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第1話

第一章 霊夢が居なくなった世界I
480
2020/11/30 12:43
20xx年

ただよく晴れていた日の空
いつも通りに箒に跨り魔理沙自慢のミニ八卦炉を付け改良したての火力魔法を使う
が、スピードが増してしまい、制御不能となってしまった
こうなると大体の行き先は博麗神社になるのだが…
博麗神社の手前まで来ると90°に箒を傾け急降下させた。火力魔法と重力のせいで一段と速くなっているが…
今日は参道にぽっかりとクレーターの様に幅広い穴ができた
霊夢が居なかったからいいが…いたらまず夢想封印でピチュるだろう
霧雨魔理沙
霧雨魔理沙
おーっす霊夢!
瓦礫の下から出てきた魔理沙は灰だらけであった
博麗霊夢
博麗霊夢
誰…ってなんだ魔理沙あんた
霧雨魔理沙
霧雨魔理沙
『なんだ』とはなんだ!
霧雨魔理沙
霧雨魔理沙
私も一応客なんだぜ
博麗霊夢
博麗霊夢
あんたは毎日ここ壊しにきているだけでしょ
まあ図星と言えば図星だが
霧雨魔理沙
霧雨魔理沙
取り敢えず客にはお茶を出すってもんが礼儀だろ?
博麗霊夢
博麗霊夢
あんたは礼儀通り越して失礼なだけだけどね
にしても何か違和感を感じていた



いつもの霊夢ではない
なんだろうと考えていた時、次の霊夢の一言でわかった
博麗霊夢
博麗霊夢
ハァァ…
いつもよりひときわ大きなため息である
霊夢がため息をすることはあるがいつも楽しそうな顔だ



なのに今日は違う、浮かない顔をしている
霧雨魔理沙
霧雨魔理沙
なんかあったのか?元気ないぜ?
博麗霊夢
博麗霊夢
いえ、なんでもないわ…
霧雨魔理沙
霧雨魔理沙
…なんか今日は浮かない霊夢だ、つまんないから帰らせてもらうぜ
自分は少し不機嫌になって帰っていったが、これがのちに大惨事、いや幻想郷が驚く事になろうとは…誰が思うだろうか
部屋に戻って霊夢の今日のことを考えて少し心配になりやはり戻った方がいいかと思ったが、明日謝って深掘りしておこうと思った
ーーーーーーーーーーーーーーーー翌朝
小鳥の囀りが朝早くから鳴る
朝5時だろうか、目覚ましが鳴る前に起きるとは思わず、まあ、霊夢のとこに行って起こすか…と思った
するとドタドタと家の前で音がした
??
大変よ魔理沙!
霧雨魔理沙
霧雨魔理沙
誰だ…ってアリスか
アリス・マーガトロイド
アリス・マーガトロイド
誰とは何よ誰とは!!
霧雨魔理沙
霧雨魔理沙
全く似たことを霊夢に言ったがな
ところで霊夢のとこに行きたいんだが…
アリス・マーガトロイド
アリス・マーガトロイド
えっと…そのことなんだけどねぇ…
霧雨魔理沙
霧雨魔理沙
なぁにモゴモゴしてんだ?
今日のアリスは急いできては急に口をモゴモゴさせて様子が変だ
でもどうしてこんなにも胸騒ぎがするのだろう
小鳥の囀りがさらにそれを刺激させていた
アリス・マーガトロイド
アリス・マーガトロイド
あのね…ちゃんと取り乱さずに聞いてね?
霧雨魔理沙
霧雨魔理沙
お、おぉ…
アリス・マーガトロイド
アリス・マーガトロイド
れ…霊夢が…
霧雨魔理沙
霧雨魔理沙
霊夢が…?
アリス・マーガトロイド
アリス・マーガトロイド
『死んだの』
霧雨魔理沙
霧雨魔理沙
…おいおい、冗談はよせよ?今日はエイプリルフールでもないんだぜ?
しかし真顔で見つめてくるもんだから
霧雨魔理沙
霧雨魔理沙
もしかして本当に…本当なのか?
アリス・マーガトロイド
アリス・マーガトロイド
ええ、もしそう思うなら博麗神社に行きなさい、それが本当だって分かるから…私もついて行こうか?
霧雨魔理沙
霧雨魔理沙
あ、あぁ…お願いするぜ
気分も何も乗らない中、魔理沙とアリスは箒に乗り、いつもならスピードをつけるはずの魔理沙はミニ八卦炉を部屋に置いたままにした
いつもの倍以上かかった
博麗神社はしんと暗くどんよりとした空気で張り詰められていた
妖怪や冥界の奴らは居らず、ただアリスと魔理沙だけが参道に降りた



昨日の傷もまだ少しだけ残っていた
足が鉛の様に重く、歩いても歩いても鉛が足に鎖で繋がれて引きずってる、そんな感覚だった
靴を脱いで部屋を入った先は紫が正座して、今は亡き巫女をずぅっと見つめていた
霧雨魔理沙
霧雨魔理沙
お、おいマジだったのかよ…嘘だろ
アリス・マーガトロイド
アリス・マーガトロイド
私もドッキリか何かかと思ったわ、でも違う…息の根すら止まっている
もう命の炎は宿っていないのよ
ただ冷たく雪の様な体になった腐れ縁を見て、みるみるうちに青ざめていくのが自分自身一番分かっていた
八雲紫
八雲紫
まだ…まだ寿命は先なのにね…あと何十年ある事か
霧雨魔理沙
霧雨魔理沙
え、永琳には見せたのかよ…!
八雲紫
八雲紫
ええ、でもどうやら手遅れだって、亡くなったのは昨日の夜推定時刻11時06分らしいわ
霧雨魔理沙
霧雨魔理沙
は、はは…し、死因は…
震えて掠れていく声をなんとか出して尋ねた
八雲紫
八雲紫
そうねぇ…あなたは中毒って知ってる…?
霧雨魔理沙
霧雨魔理沙
中毒…?確か…簡潔に言えば薬物とかにハマっちゃって出られないみたいな…そういう奴だよなぁ
八雲紫
八雲紫
ええ、当たりよ、少し回想になってしまけど…。彼女はね…不眠に悩まされていたのよ
八雲紫
八雲紫
彼女には妖怪が集まるからその妖気のせいもあって、タバコで言えば受動喫煙って言うらしいんだけど…
八雲紫
八雲紫
吸っている本人以外もその煙を吸ったものは吸った人と同じ様になってしまう
八雲紫
八雲紫
そんな感じでどんどん身体だけが妖怪化していた
八雲紫
八雲紫
ただ人間や妖にもある『魂魄』これは人間のままだった
八雲紫
八雲紫
人間は規則正しい生活を強いられるでしょう?
そういう自然の摂理には逆らえなかった…
八雲紫
八雲紫
これが彼女の不眠に関する情報
彼女は不眠に悩まされていた…って事は…!
八雲紫
八雲紫
次が死因に関する事だけど…
霧雨魔理沙
霧雨魔理沙
待って!さっき不眠について言ったろ?って事はさ…
霧雨魔理沙
霧雨魔理沙
原因って…その…『睡眠薬の過剰摂取』じゃないか?
八雲紫
八雲紫
ピンポン♪正解よ、よく分かったわね
八雲紫
八雲紫
彼女の不眠はさらに悪化していった
八雲紫
八雲紫
だから永琳に頼んで睡眠薬を作ってもらったの
八雲紫
八雲紫
1日一錠だってこっぴどく言われていたのに…やっぱり不眠が治っていく感覚に次第にハマっていく様になった…
八雲紫
八雲紫
それで過剰摂取してこうなったんだろう…そういう感じね
それから紫は涙をハラハラと流しながら白い布を被せた
これから火葬となるとこの姿が跡形も残らず骨と化す
妖怪たちは取り敢えずみんな来たんだとか
霧雨魔理沙
霧雨魔理沙
っ…霊夢…そういうことなら話せよ…
霧雨魔理沙
霧雨魔理沙
うっグスッれ…霊夢ぅ…グスッうわぁぁぁぁっ!!グスッ
アリス・マーガトロイド
アリス・マーガトロイド
魔理沙…落ち着いて…
霧雨魔理沙
霧雨魔理沙
誰が落ち着いて居られるかよぉ…グスッうわぁん!!
それから、友に対する昨日のことを謝れなかったこと、それからずっと持っていた“好意”を最期に伝えた



火葬する時皆は見ないと言ったが私は友の骨を見届けようと思う


今から起きてこないかとも思ったが現実は現実だ…


それからショックでもう何も感じられなく、ぼやけた世界へと化していってしまったのだった

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