ヒョンジンはそう言って、ひらひらと手を振りながらスマートに去っていった。
去り際、フィリックスの肩を、
ファイト♡と小突くいた。
夕方、2人は貸し切りのスタジオに戻ってきた。
あなたは早速、ヒョンジンに買ってもらった新しい水彩紙のスケッチブックをデスクに広げ、
嬉しそうにページをめくっている。
お気に入りのソファに座るフィリックスの前にしゃがみ込み、
あなたは本気で心配そうな目を向けた。
フィリックスはバケットハットを脱ぎ、クッションをぎゅっと抱きしめながら力なく笑った。
(これはあなたのせいなんだよ……)
なんて、プライドが邪魔をして口が裂けても言えない。
あなたは液晶タブを膝に乗せると、
クッションを抱きしめて少し小さくなっているフィリックスの姿を、
再びじっと見つめた。
サラサラと画面にペンを滑らせながら、またしても爆弾発言を連発するあなた。
フィリックスは抱きしめていたクッションに完全に顔を埋めた。
格好いいオッパになりたいのに、あなたの中では、最高の被写体……
かつ可愛い弟分として処理されている。
この凄まじい認知のズレに、フィリックスの心臓は休まる暇がなかった。
限界を迎えたフィリックスは、
あなたの視線から逃げるように慌ててキッチンへと避難していった。
その頃、Stray Kidsの宿舎。
リビングでは、ハンとリノ、そしてバンチャンが、
ヒョンジンから送られてきたカトクの画面を囲んで大爆笑していた。
ハニがソファの上でのけぞって腹を抱える。
リノがニヤニヤしながら、画面の文字をスクロールした。
バンチャンも笑いながら頭を抱えつつ、愛おしそうに目を細めていた。
ハニがチキンを口に放り込みながら、ニヤリと笑った。
と、遠くのスタジオにいるメンバーに生温かいエールを送る3人。
その頃、スタジオのキッチンで冷たい水を一気に飲み干していたフィリックスは、
トク、トク、と未だに早く脈打つ自分の胸に手を当てていた。
(……閉じ込めたい、か。僕だって、あなたを…………ずっとここに閉じ込めておきたいって……思っちゃうよ)
それが境界線を、とうに踏み越えてしまっていることに、
フィリックスが気づくのも、そう遠い未来の話ではなさそうだった。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。