ーあなた目線ー
ひとまず名前も分かったし、食事も人間の食べるもので大丈夫みたいだね。よかったぁ。
三人はハグハグと食事を食べ続けている。あなたが手を貸さなくとも自分で摂れているのでよかった。すかさずタブレットにメモをする。彼らの種族は恐らく悪魔。悪魔は宗教関係のものが多いけれど、この人たちの名前は下……だよね? 名字を訊かない限り種族の断定は難しい…。
そんなことをメモしていると、エイトがあなたの袖を優しく引っ張っていた。
『どうしたの?』
優しく問うと、エイトは空になった食器を指差した。どういうことかな…と少し考えてから、一つ思い付いた。
『おかわりが欲しいのかな…?』
食器を指差し、食べるジェスチャーをするとエイトは激しく頷き、懇願するような目で見つめてきた。
『ちょっと待っててね。今持ってくるよ』
座っているよう促し、食器を持ちキッチンへ向かう───
卵がゆを温め直している間、あなたは考えていた。もし彼らが本当に悪魔だとしたら、人間を襲わないという確証もない。もしかすると全人類が危険に晒されるかも…。最悪の予想をしながらも、かき混ぜる手は止まらない。というか、どうやって人間界に来たのだろう。悪魔って魔界に住んでるものじゃないの? 漫画や小説では魔王の手下というイメージがある悪魔。人類の敵であり、躊躇なく人々を消し去る脅威───というイメージがあるもの。
『万が一にでも、僕たちの敵にならないように気を付けなきゃね』
卵がゆが沸騰しそうだったので火を止めて、食器に入れる。熱くないか食べてみて確認し、彼らの元へ持っていく。
彼らの居る部屋に戻った途端、エイトはパァァと顔を輝かせて喜び、二人はそんなエイトを見て少し引いていた。
『はい、お待たせ。どうぞ』
卵がゆを渡すと、エイトは軽くお辞儀した後、味を噛み締めるように食べ始めた。息子とか居たらこんな感じなのかなぁ…まだそんな歳でもないけど。まず結婚というか恋仲すら居ないんだけど…。と一人泣きそうになっていると、ツムルが心配そうに
「***…?」
と訊いてきた。何を質問しているのかは分からないけれど、とりあえず笑っといた。ひとまず一番に解決すべきは怪我。その後に言語だな。と目標を立てたあなたは、美味しそうに卵がゆを頬張るエイトと、それを見て苦笑しているツムルとイチョウを眺めていた。
三人は仲良く眠り、時刻は夜の一時。一般人なら出かける時間帯ではないだろう。あなたはできるだけ音をたてないように部屋を移動し、職場に電話をかけた─────。
『あの、しばらく休ませてください』
「あ? 理由を教えてみろ」
『理由は必要ですか? 僕、ずっと安定するまで働いてましたよ』
「─────分かった。戻れるときになったら連絡しろ」
とだけ言い残し、あちら側から電話を切った。不器用な上司だけれど、思いやりはあるのだ。
あなたは電気もつけずにスマホを開いた。青白い光が暗い部屋を照らす。その画面にはネットスーパーが表示されていた。買い物カゴに入っているものは幼児向けの絵本やカード。意志疎通をしたいのなら絵本がやりやすいという結論に辿り着いたあなたは善は急げ、ということで既にポチっていた。後は医療品。包帯といった怪我に使えるものを三人分。彼らの回復速度は人間の比ではない。ただ怪我をしていることに変わりはないのでこれもポチった。
『……物欲なくてよかった。出費やばい』
スマホを机に放り投げるような形で置き、目元に手を当てる。あなたは人生で初めて、自身の欲の無さに感謝した。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。