午後9時
ゆっくりと湯船に浸かりながら温かいハーブティーを飲み、仕事を頑張った自分の疲れた身体を癒す………
なんて優雅な生活をただの社畜の私が遅れるはずもなく
ここにある現実は街灯に照らされる人の少ない帰り道と死にそうな顔をした自分だけ
社畜と呼ばれる人間にしては珍しく自己肯定感のクソ高い美人しごでき社会人の私だが、それによる上司からのセクハラや他の社員からの仕事の押し付けにはさすがに疲弊していた
今の私にはもう帰って寝ることしか考えられない
しかし、私は思い出してしまった
今日の朝食パンがなくなったんだった
なぜ今思い出したのだろう
こんなの、買わずに帰れば明日の朝まで
「やっぱ買えばよかったかな……」
ってずっと考えるやつじゃん
こっちは一秒でも早く帰ってpixivでBLのR18作品を読み漁りたいというのに
あーーーーーーっ
ここからだとスーパーちょっと遠いんだよなぁ
もうすぐ家着くし、このまま帰る?
近くにスーパーが湧いてくれたら苦労しないのn……
びっっくりした………
まさか夜の9時にあんなに大きな声が聞こえるとは思わなくて声まで出てしまった
いらっしゃいませ、って………
なにかの店?
この時間に?
何も無いんかい、と心の中でツッコミつつ気になって声のする方を見る
声を張っていたのは襟足を赤にしている若い男性で、背が高くてイケメンだ
そして声がとても大きい
待って、「きよっちゃんマーケット」?
てことはスーパーマーケットってこと?
私は小走りで店に入り、少し呼吸を整えながら商品棚を見た
………いや品数少なっ
そういえば、ここは数日前まで空きテナントだった気がする
オープンしたばかりだからこんなもんなのかな?
私はとりあえず棚の前に立って商品を手に取る
パン………あるけどちょっと高いな
あ、砂糖ももう少ないんだっけ………高いな
よく見たら全部高くない?
まぁ、今日くらいはいいか
私はパンと砂糖だけ手に取ってレジへ向かった
レジにはさっきのお兄さんが立っていて、名札を見ると
「店長 キヨ」と書かれていた
砂糖だよ?
看板商品も何も無いでしょ
ツッコミどころは多いけど、面白い人だな
スキャンが終わったので、私は現金で支払いをした
何も言ってないのに一人で騒いでなんかお釣りいっぱいくれた……
なんなんだ、この人
一応笑いをこらえて店を出ると、後ろから足音がした
驚いて見てみると、さっきの店長だった
えっ、あれだけ言って帰ったんだけど、あの店長
ていうか天気予報晴れでしたけど!?
………ま、なんでもいいや
私は少し呆気に取られていたが、理解することを諦めて家に向けて再び歩き始めた
あんな上司がいるところで働けるなら、毎日楽しいだろうな
そんなことを思いながら、私は家の扉をパタンと閉じた
キャラ紹介












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。