「 なんかサークル入らないの? 」
そう友達に訊かれた。気さくで話しかけやすくて
先輩ウケも良好な彼女に何故か気に入られて
大学まで結局ご一緒することになった訳だが、
別に悪い気がしている訳じゃない。でも私が
都合のいい人間だから、そう思われていないか
だけがずっと心配だった。
名前で呼んでくれる、何処に行くのにも誘って
くれる。だけど心のどこかには私の幼馴染
目当てなんじゃないかとか考えてしまう。
一時期、中学だったか、彼女が私の幼馴染、
シャークんが好きだという噂が出回ったことがある。
違うよ〜、と否定して回っていたがその内面倒に
なったのか拒否することを諦めたと彼女から聞いた。
まぁ心配というのは言い訳で、高校は別だった
にも関わらず我が家に入り浸り、事ある毎に
連絡を寄越してくる幼馴染が問題なのである。
しかもなんか大学一緒だったし。
友達関係が悪くなりたくないけど、それだけで
幼馴染を突き放すのも絶対に違うし …… とまぁ
そんなこんなで悩みに悩みまくっている。
それもまた、彼女が幼馴染のことを本当に
好きであればの話だが。どの話にも確証を
得られる部分がなく、決めつけでしかない。
本人たちに聞くのもなんか違うしなぁ、と
今日もまた1人、寂しくソファーにもたれ掛かる。
気分転換に何処かのサークルでも入ってみようか。
そう思い立ち募集のパンフを机に並べてみた。
“ 部員数が少なく、廃サークルの危機です! ”
そう書かれた軽音楽サークルのパンフ等の紙を持ち
リズム館の前に棒立ちしている。リズム館なんて
音楽専攻以外あんまり立ち寄らないし、ここで
あっているはずだが大丈夫だろうか。
入るとしてもどう声かければいいんだ……?
等と考え倦ねていると後ろから「 あれ? 」
という声と共に足音が聞こえた。バッと勢いよく
振り返ると驚かせたつもりじゃなかったのか
苦笑いでごめん、と謝られた。
高校で全部辞めちゃったんだっけ、音楽。
ベースとか、結構触るの好きだったけど
みんな音楽なんかそっちのけだっだし。
どうぞ入って、と手で示され素直に
館内に足を進める。どこかで見たことがあるって
私別にそんな有名人じゃないけどな。
「 あ!」思い出したのか顔をあげて私の顔を
まじまじと観察するこの人はなんなんだろうか。
いい人そうだけど、なんか怖いよ。
自己紹介というか、まぁ自己紹介まがいな
ものを済ませると興味があるのかないのか
「 あかはねなんだ、あかばねじゃなくて 」
と謎の苗字に関する感想を頂いた。
その後、蒼木くんはリズム館特有、低めの
横長のテーブルにひょいと身軽に飛び乗り、
スマホで微量ながら音を出し鼻歌を歌っている。
楽しそうにスマホを操作してスピーカーから
音楽が流れ始める。多分このイントロあの曲だ。
彼がボーカルなのかはまだ分からないけれど、
綺麗な声色で堂々と歌い切っていた。
別に煽りでも何でもなく、ただ単に拍手すると
「 恥ずかしいからやめて 」と手で制された。
よっこいしょという効果音を口でつけながら
飛び降り私の方へと歩いてくる蒼木くん。
この時、まだ私は知らなかった。
“ ほら、他の人に見つかったら面倒だし早く帰りな ”
と扉に誘導されまたね、と手を振られた。
リズム館に他に人なんかいただろうか。
「 本日休部ですだってー、なんだぁ出直しかぁ … 」
ん?休部??疑問だけが私の脳内を支配する。
彼は偶々いただけ?いや部員ではあった。
なら何故入れてくれたのだろうか、気まぐれ?
私は気づいていなかった。歌に圧巻されすぎて
名前を書いた入部申請書を忘れて帰ったことを。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。