第10話

08:夏の匂い
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2026/04/28 13:20 更新
〈飛side〉
日はとっくに沈み、街の空気は夏祭り特有の熱を帯びていた。
遠くから聞こえる祭囃子の音と、人々の浮ついた声が、僕の焦りを急き立てる。
手元には、道端で丁寧に摘んだ一輪のアサガオ。
バク
バク
ケケッ、飛ィ! そんなに急がなくても逃げねェだろォ? そんなにあなたの下の名前に会いてェのかよ!
飛
……うるさい。約束したんだ、遅れたら悪いだろ
バクの茶化しを無視して、僕は病院の階段を駆け上がる。
「ア」サガオ。
心臓が嫌な音を立てているのは、走ったせいだけじゃない。
この花を渡すことが、何かの引き金になるような……そんな、逃げ出したくなるような高揚感。
病室の前で一度立ち止まり、肺がちぎれるほど深く息を吸ってから、ドアノブに手をかけた。
〈あなたside〉
(なまえ)
あなた
あ、飛くん! いらっしゃい!
ドアが開いた瞬間、私は弾けるような声を上げていた。

飛くんは少し肩を上下させて、ぶっきらぼうに右手を差し出す。その先には、夜の帳とばりを映したような、深い青色のアサガオがあった。
飛
……約束。これ、アサガオ。そこらに咲いてたから
(なまえ)
あなた
わぁ……! アサガオ! 飛くん、本当にありがとうっ!
私はその花を大切に受け取り、サイドテーブルのメモ帳を広げた。
『ワスレナグサ、タンポポ、シモツケソウ、ハイビスカス……』
その隣に、新しく『アサガオ』と書き足す。
(なまえ)
あなた
ふふ、飛くんがくれた花をこうして書き出していくの、私、すっごく楽しいんだ。
飛
……そうか。なら、いいけど
飛くんはなぜか、少しだけ視線を泳がせていた。
(なまえ)
あなた
さっ! 屋上に行こっ! 看護師さんに許可、ちゃんともらってきたから!
飛
……ああ。ハクとバクも、はぐれんなよ。
バク
バク
おうよッ!
ハク
ハク
みゃあお!
廊下を歩く飛くんの背中を追いかけて、私たちは屋上へと繋がる重い扉を開けた。
外に出た瞬間、病室の冷房とは違う、生暖かい「夏の終わりの匂い」が鼻をくすぐる。
(なまえ)
あなた
暑い……。でも、なんだか「生きてる」って感じがするね。
飛
……あなたの下の名前、ずっと中にいたからな。
飛くんが隣に並び、手すりに腕を置く。その横顔が、街の灯りに照らされて少しだけ大人びて見えた。
飛
……花火、楽しみだな。
(なまえ)
あなた
うんっ! そうだねっ!
ハクが私の足元で
ハク
ハク
にやぁ!
と期待に満ちた声を上げ、バクが
バク
バク
ケケッ!
と笑い声を響かせる。
その直後、遠くの空で「シュルル……」と何かが駆け上がる音がした。
――ドンッ!!
夜空のキャンバスに、一輪の大きな光の花が咲いた。
とうふ
とうふ
そう言えば今この小説のイラスト描いてます
とうふ
とうふ
こちらでうぃぷ見てるんでよかったらどうぞ!
次結構いい話(?)になる

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