もうずっとヘレルに首を吸われている。
跡を付けられまくった首は唾液で少し濡れている。
「イタカがその気にさせたんだからね」
「…やめ、て…」
「嫌だ、僕が満足するまでやるから」
壁に体を押されて、頭を上に、腕を掴まれてあげられた。地下牢の廊下で突然やられた。
別に、二人の様子を見に来ただけなのに。
すると突然ネブ兄さんが来た。正直血の気が引いた。
「……私のイタカに何してるんだ」
「え?マーキングだけど。何?ていうかお前のイタカじゃないが」
「それならお前のイタカでもないが?というかなんでわざわざこんな所でやる必要があるんだ?」
「いやイタカは僕のことが好きだよ?こんな所でやるのは見せつける為だけど何か?」
「巫山戯るな今ここでお前を殺してもいいか??」
「こっちのセリフだよ兄上。ていうか立場的にお前を処せるの僕の方だけど。邪魔だから引っ込んでてよ」
どうしよう。兄弟喧嘩を始めてしまった。
だがイタカは双子の兄ナザニールの方が好きである。そんなこと当然言えるわけないが……
「あ、あの…すみません、ここ、こっちの方に来ませんか…?」
「喧嘩が収まるまで紅茶でもどうぞ」
そう話しかけてきたのはヘレルの補佐役二人。
シルキー、テリーザといったかな。
庭の方に案内され、座らされ、お茶やらお菓子やら出された。普通に申し訳ない。
「本当は帰りたい…ですよね……」
「…まあ、出来たらだけど…帰ったらなんか怖いから…」
「日蝕軍達を連れてあの二人の喧嘩止めてくるわ。生きて帰れるか分からないけど」
「え、やめておいた方がいいと思いますよ!?」
「二人は猛獣だから!!!手懐けるなんて無理だよ…」
「あら、それは我が王への反逆かしら」
「ち、違うよ!だけどさすがに無謀すぎるよ」
責任感が強くて仕事が出来るらしいテリーザさんが止めに行こうとしていたので慌てて止めた。
「あ、じゃ、じゃあ僕とテリーザで行けば良いんじゃない?もしかしたら止めてくれるかも…?」
「根拠は?」
「我が王が僕達を直接指名したんだし、この前僕達を信用してるって言ってたから…」
「それとこれとは別でしょう?」
「そ、そうだけど……でも行ってみたら変わるんじゃない?一人はちょっと…だけど」
「面白いじゃない、じゃあ少しの間お待ちになって下さいね」
「は、はい………」
大丈夫かな…やっぱり僕が行った方が……
…とりあえず小鳥が肩に止まってきたなら優しく指で撫でよう。うん。
「ふふ、くすぐったいよ…君達は自由に飛べて良いな」
ふわふわの羽毛。やっぱり小動物は癒される。
数分後、日蝕軍の人が来た。
「…この度は我が王と先王がすまない」
「あ、いえ…そもそも僕が来たせいだし……」
「……見ての通りあの二人を止めようとしたが私では止められず怪我までしてしまった」
あ、それ喧嘩止めようとしたのか。
「だ、大丈夫…?血がすごい出てる」
「これからは絶対我が王に逆らわない、いや、そもそも逆らわないんだがな……」
「はは…今、シルキーさんとテリーザさんが行ってるみたいだけど……」
「!そうなのか、情報ありがとう、帰りたいならいつでも帰って構わない」
「ありがとう」
丁度行くルートが違かったのかな。ココ本当に広いし。
**
「イタカ!」
「!」
数十分後、聞きなれた声が響いてきた。
ヘレルだ…あれ、ネブ兄さんがいない。
「わ、おかえり?ヘレル…ネブ兄さんは……?」
「アレは地下牢にうめ…入れたから気にしないで!ごめんね目の前で喧嘩なんてして……」
…埋めたとでもいうのか。
「我が王に反逆する者は何人たりとも許さないわ」
「何とか収まって良かった……………」
……ヘレルって本当にいい匂いするな…
太陽みたいな香り…というか不思議な感じがする。
ずっと抱きしめてくるから、そんなことを考えてしまう。
それにしてもどうやって止めたんだろう。
【ネブが勝った場合】
「イタカ!」
「!」
数十分後、聞きなれた声が響いた。
ネブ兄さんだ…あれ、ヘレルがいない。
「お疲れ様…ネブ兄さん。あの、ヘレルは……?」
「彼奴は地下牢に部下二人と一緒に入れておいたから気にする必要は無い」
いや、すごく気になる。
「と、とりあえず喧嘩が収まって良かった…のかな」
「心配かけて申し訳ないイタカ、これからは目の前での口論は避ける」
「うん…ネブ兄さんが無事なら良いよ……」
それにしてもネブ兄さんって本当に綺麗な顔立ちをしてる。凛々しい顔でこちらを見られたら少しドキドキしてしまう。
それに温かいから眠くなる……おやすみ…ネブ兄さん…ヘレル……
「ふふ、本当に可愛らしいな君は…♡」
後日談(シルキー視点)
「イタカ君が喧嘩の止め方を知ったらどう思うのかしら…」
「それはちょっと申し訳ないな…」
それはイタカをダシにして喧嘩を止めたから。
もちろん自分の実力や有り余った語彙力をふんだんに使って説明したが結局のところ二人の好きな人を理由にすれば丸くなる。
「……まあでも、良いんじゃないの?心配していたのは本当だしね」
「そ、そうだよね!」












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!