光が見えたとき、俺が見たのは緑が映えた岩屋とそこの奥の奥へと身を寄せ合う数十人の人間たち。
彼らはそれぞれ知り合い、家族、友人と小声で言葉を交わす。
「もう地球は終わったのかもしれねぇな。」
「そんなことない。絶対誰かが助けに来てくれる。希望さえ捨てなければね。」
「誰かって、誰だよ。」
「スーパーヒーローだよ。絶対来てくれるよ。」
絶望して涙を流す人、明るい言葉でそんな人々を励ます人。人はピンチの中でも暖かさをなくしていない。
そんなことに今気がついた。
人々は音をたたないように蠢きながら洞穴の奥へ、奥へと逃げ込んでいく。
「死にたくない」
と泣きながら我先にと奥に逃げ込む人も、
「ここで終わりだ。」
と諦めたように人波に逆らう人もいた。
でも、もちろん希望を捨てない人もいた。
これが人間だ。人間の本性だ。
でも、それが当たり前だから。
だって、この戦いは話し合いも、停戦も休戦もない戦争だから。どちらかが死に絶えるまで終わることのない殺戮でしかない。
唾を飲み込んだ。俺はただの傍観者でしかないなんてわかっている。
でも俺の目に映る光景はあまりにも張り詰めている。
ドォン、と大きな音がした。
そして、この美しい洞窟に風が入り込む。砂を湛えた少し痛い風。
人は奥へ奥へと逃げ込む。
「ぁ…。」
「立って!早く!逃げなきゃ!」
最後尾に居た少女が足をもつらせた。
隣にいた子が慌てて立ち上がらせようとした時、赤い閃光が舞った。
入り口にはずんぐりとした体型の異形の神。
パニックになった人が一斉に押し寄せたせいで、ドミノのように倒れる。うめき声も聞こえる。
「ねぇ、目を開けてよ…。」
隣で友人を亡くした少女は涙を流しながら抜け殻にしがみつく。
「許さない、殺す、絶対殺す!」
かの少女は携帯していた銃を化け物に向け発砲する。
でもそれらは一発も当たることはなく、無力と化した。
化け物はそんな彼女を嘲笑うかのように首を飛ばした。壁と床には2人分の血液が飛び散った。
化け物の後ろにさらに仰々しい輝きを持った神もきた。
終わりだ。
誰もがその気配を感じた。
「殺される前に、だ。」
誰かが呟く。
そして、液体が溢れる音。そこに、ガラスが割れる音。
熱い。火が迫ってくる。
轟々と雄叫びを上げながら、人を、緑を飲み込んでいく。
大いなる存在を前に、でも足も出ないまま数十人の人間は炎に飲み込まれる。
叫ぶ声が聞こえる。痛い、怖い、熱い。
最後に残ったのは、2体の大いなる存在だけ。
彼らはまた、どこかへと飛び立っていった。
そして、視界は再度暗転する。
「あ、戻ってきました?」
もう一度灯りを映した目はユタと割れたガラスの破片が散らばる洞窟を捉えた。
「なんだよ。」
「いえ、なんでも。」
ユタは眉を吊り上げていた。
「お前の家族もここにいたのか?」
吐き気すら催すような凄惨な光景。
その中に親兄弟がいる苦痛はどれほどのことだろう。
「あぁ、はい。まぁ。」
煮え切らない返事だが、ユタの目には確かな炎が宿るのを見た。
「でも、私のお父さま、お母さまはまだ死んではいません。」
「あんな状態で?」
到底生存者がいるとは思えない現実。
でもユタはなぜか確かに確信を持っている。
「私、決めました。
あなたと一緒に、本気で戦います。」
先程まで不気味なくらいの無機質さを持っていた目はもうない。
その代わり、復讐に燃える心を宿した魂が降りた。
「復讐です。この世界を、美しい世界を壊したすべての神々へ。」
「あぁ。全てを終わらせよう。」
そうして、俺たちは『もう一度立ち上がった』。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。