(NO side)
__で?収穫は?
__あの人…ターゲットは3日に1度、
あの店を訪れていることが分かりました
__連絡先などの個人情報は、
__…申し訳ありません。聞き出せませんでした。
__本名の方はどうだ
__…そちらも、まだ、……
__…はぁ、…。早くしてくれ。
我々には時間がないんだ。
__…申し訳ございません
__1つでも多くの情報を集めてこい。
ミスは犯すなよ。
__…御意
(大貴side)
明るい部屋の中で、意識がぼんやりと浮上した。
少し肌寒い。見ると、布団がベッドの下に
落ちてしまっていた。
ここまで…どうやって来たんだっけ……?
落ちた布団を拾う気力もなくしわだらけのそれを
見つめる。控えめな頭痛に思わず目を閉じた。
こめかみ辺りがばくばくと脈打つのを感じる。
ガチャッ
頭痛に加えられた鈍い腹痛に体を丸めていると
誰かが部屋に入ってくる気配がした。
だけど、不思議と恐怖は感じない。
雄也の声だと分かった瞬間、高熱である事も忘れて
勢いよく起き上がった。無意識のうちに
体が動いていたようで、一瞬遅れて鈍い頭痛が
さっきの数倍になって襲ってくる。金属で
後頭部を殴られたような感覚がした。
…いや、もうちょっと鈍いかもしれない。
彼は驚いていたけど、すぐに激しい頭痛で
ベッドに逆戻りしてしまった俺を即座に心配してくれた。
体中が痛い。これは…思ってたよりも重い風邪だな、…。
すぐに無理をする俺の性格を知っている雄也は、
誤魔化そうとした俺の本音を優しく
聞き出してくれた。正直に言ったことで
安心したのか、体中の力がふっと抜けた。
吐息が熱い、気がする。
雄也が優しく体温計をセットしてくれる。
身構えてはいたものの、毎度のごとく
体温計の冷たい感触に体が震えた。
ピピピ、ピピピ、…
差しだされた体温計を見た彼は苦々しい顔をした。
そのあと心配そうな表情を俺に向ける。
そんな高かったんだ…。
はい、と手渡されたのはタオルに包まれた
冷たい物体。素直に首の裏に敷くと、
熱気をまとっていたような感覚が
随分と楽になった。
ご飯か…。正直、この状態で体を起こして
食事をとるのは体力的にも厳しいと思う。
胃袋よりも体が先に限界を迎えそうだ。
かといって食事を取らないのも
雄也を心配をかけそうで嫌なんだよね。
…どうしよ、……。
ぁー…
雄也の言葉の意味が分かるようでわからない。
頭がぼーっとして、漢字変換が上手くできない。
というか、体にどうやって力を入れるのか
それさえもわからない。
雄也の心地いい声を聞きながら、
俺の意識は暗闇に落ちて行った。
ゆーや…ごめんね……
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。