ハルがおかしくなっていることに気づいたのは一回目の告白のときだった。
人生最大の勇気を振り絞った。
最初は流されたのかと思った。
告白は受け入れられないから、適当にごまかすつもりなんだろうかと。
でも俺はそれが嫌だった。だからまた「好き」と言った。
まさかの両思いだった…という俺の喜びは、ハルの一言であっさり打ち砕かれた。
ハルは、全くなんの興味もなさそうに、さらっと言った。
意味がわからなくて、俺はハルの表情から言葉の意味を読み取ろうとした。
ハルも俺が好きだから、達也くんが良ければ付き合ってくださいってこと?でもそれならもっと動揺したりとか照れたりとかないの?どういう意味で言ったんだ?
ハルの表情は俺が告白する前と何一つ変わらなかった。いつもの顔で俺の目をじっと見つめてくる。そのとき、初めてハルを怖いと思った。なんでかはわからない。ただ理由もなくこいつはおかしい、怖いと思った。
ニヤニヤ笑いながら聞いてくるハルは、やっぱりおかしかった。俺の知ってるハルは誰かの気持ちに対してもっと真摯だ。というかこんなこと言うってことは、ハルは俺の告白を冗談だと思っているんだろうか。「達也くんがそうしたいなら」って、俺が動画でも撮っていると思って言ったのか?動画撮りたいなら従うってこと?
ハルはバカだなあとでも言うように鼻で笑った。
ハルは笑った。動画の中と同じ笑顔だった。曇りのない純粋で無邪気な笑顔だった。
こんなに真剣なのになんで伝わらないんだ。
何回も好きだと言った。でも俺の気持ちは、一つも伝わらなかった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。