前の話
一覧へ
次の話

第55話

 ↻ 優しさという名の毒
100
2026/07/23 06:31 更新



  ふわりと香る懐かしさを感じさせる薬草の
  匂いに目が覚める。
 
あなた
 …ん、かぁさん? 


  よく薬草を取ってきては研究に勤しんでいた
  母の事を思い出す。
  抱き締められた時に鼻腔を擽る薬草の匂いが
  好きだったな、何てどうでも良い事ばかりが
  頭に浮かぶ。

  そんな事を暫く考えていれば、ぼやけていた
  輪郭がはっきりとし、知らない景色が飛び
  込んで来る。
  知らない天井。何時もより質感の良い布団。
  家を飛び出して来た時の服と違う服。

  此処は何処だと思うのと同時に逃げなくちゃと
  本能が警告して来る。
あなた
 ぃ゙… 


  だが、逃げ様と身体を動かせば、痛みで身体が
  言う事を聞かず、動けない。
   
 駄目だよ、直ぐ動いたら !! 


  動こうとする僕を急いで静止し、心配そうに
  僕の顔を覗き込んで来るふわりとした茶髪の
  少年。

  誰か分からず、恐怖と警戒心で離れる様に少し
  身を引く。
あなた
 だ、れッ 


  「 誰ですか 」と聞こうと思えば、大きく咳き
  込み、上手く言葉に出来なかった。

  少年は僕に駆け寄り、背中を摩ってくれる。
  其の手の温もりが、もう此の世には存在しない
  兄さんの存在を感じさせ、涙と嗚咽混じりの
  咳が溢れ出す。

  そして、一番大切だったたった一人の兄を
  自分が見捨て、追い詰め、自死させてしまった
  という現実が僕に酷く、深く、突き刺さる。


  みっともなく泣きじゃくる僕の背中を、少年は
  落ち着くまで摩り続けていてくれた。

  其の優しさが、僕の心にある深い傷口を痛い
  程に蝕み、その毒は沁み込んでいった。





  宣伝です🙌

  こちらの作品はこの度私が主催致しました
  おとーふ451小説コンテストで個人賞を受賞
  した作品です!

  夢主くんの感情の表現、話す言葉、その一つ
  一つが重く、それでいて繊細で、とても
  美しい作品です💕

  詳しい感想は小説コンテストの方で沢山
  語らせて頂いています✊️💞





  夏休みになりましたのでこのまま完結に
  向けて沢山更新していくつもりです🙌

  更新が遅れてしまったこと、お詫び申し
  上げます🙇‍♀️


プリ小説オーディオドラマ