第56話

No side episode : 本当は
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2026/02/18 08:00 更新











丁寧に 封された 手紙を、病室の中、5人で 囲む。


まだ 彼女が 亡くなって しまった という
事実を 飲み込みきれない 彼らは、
その 手紙を、どんな 気持ちで 見ていたのだろう。

きっと、それは 彼らに しか、
否、彼ら にも わかること は ない だろう。

5人宛に 一枚ずつ 書かれた 手紙は、
開いた 人から 順に 溢れる 涙を 堪えきれず、
必死に 拭うも 意味を 成さない。
それほど まで、深く 彼らを えぐった。



また 1人、ゆっくりと 震える 手を 伸ばす。

隅に 書かれた「 れる先輩へ 」という
可愛らしい 文字。
それを ゆっくりと 撫でて、封を 切った。












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         れる先輩へ

  こんにちは、五星あなたの下の名前です
  これを読んでいる、ということは
  もう私はこの世界には居ないんだと思います。

  短い命であるとはわかっていながら、
  こうして文章に書き起こしていると
  なんだか寂しくなってきますね。
  きっと先輩のことだから、私が居なくて
  寂しくて悲しくて、
  泣いちゃってるんじゃないですか?!
  …なーんておふざけは置いておいて。
  少しだけ、誰にも話したことがなかった
  私の話をさせてください。


  私には、数年分の記憶がありません。
  何年の記憶がないのかは私にもわからないし、
  どうしてなくなったかもわからなくて。
  ただ、ぽっかりと何かが空いてて、
  埋まらないまま生きてきました。
  少し前までは。
  つい先日、部屋の片付けをしていた際に
  アルバムから幾つか紙が落ちてきて、
  それが、私の診断書と、
  私含む6人の写真でした。

  私が部活体験に行ったあの日、
  過呼吸になったこと、覚えてますか?
  あの時に、自分が“解離性健忘”という
  精神的な記憶障害になったことが、
  少しだけフラッシュバックしてきて。
  診断書にもそう書かれていたので
  私の記憶がないのはそのせいなんだな
  というのを、数年越しに知りました。
  写真に写っていた5人も、
  軽音楽部の先輩方と特徴が同じで、
  時折感じる懐かしさの原因も…
  きっと私が、全部忘れちゃってるから。
  一度離れたとしても、こうしてまた
  私のことを救ってくれて
  ありがとうございます。

  恐らく先輩は、私が先に書いてた
  短い命、っていうのが
  すごく気がかりだと思うんです。

  どうやら私、記憶がないうちに
  薬の過剰摂取や自傷行為を
  繰り返してしまっていたようで、
  それが原因で重い病気を患っていました。
  高校を卒業できたら奇跡…なーんて
  必要最低限のことしか綴られてない紙の端に
  申し訳程度に載せられてました。

  この診断書を持って、数年越しに
  同じ病院に行ったところ、
  お医者さんは私のことを覚えてくださってた
  みたいで、久しぶりに会えたことを
  泣いて喜んでくれました、

  改めて診断して頂いてわかったことなのですが、
  現在進行形でどんどん悪化しているらしく、
  学校で過ごせるのは1年間が限界、
  それ以降は入院生活で、それも半年が山場だと
  お医者さんに言われました。

  私が今居ないのはそれが原因なのかは
  知ることもできないし、予想も何もできない
  のですが、短い生涯だったなぁと思います。


  ずぅっとこんなことダラダラと書くのは
  私も、れる先輩もきっとしんどいと思うので
  過去の私が、今の私が伝えられなかったこと
  全てを伝えさせてください。
  とは言っても、過去のことは思い出せないので
  ほとんど今のことですが…

  入学式の日。
  まだ学園に慣れていない私を笑わせてくれて
  本当にありがとうございました。
  先輩があまりにもいじわるするもんですから、
  「絶対にこんな先輩になりたくない!」なんて
  当時の私は考えてました
  先輩は知れば知るほど優しい人で、
  底知れない努力家なところが魅力なんだって
  今の私は知ってますので。
  だとしてもいじわるはもう勘弁ですが!!!!

  海に連れ出してくれた日。
  ただの私の八つ当たりが悪いのに、
  怒らずにそばにいてくれた暖かさが
  まだここに居たいと思わせてくれました。
  慣れないキザなことは言うもんじゃないですが
  貴方は誰がなんと言おうと
  王子様みたいな人なので、
  自信持っててください。

  それから……書きたいことたくさんで
  書ききれないので、
  生きてるうちに伝えられたらなと思います

  最後に。














  __ずっと、ずっと前から大好きです。












⟡.· ⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯ ⟡.·












手紙に 、涙が 滲んだ。















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