第5話

花火大会
9
2026/04/14 14:43 更新
模試、受験対策、終わらない問題集。
忙しい毎日だったはずなのに、
不思議と苦じゃなかった。

美空とは、前よりも少しだけ自然に話せるようになっていた。
ぎこちなさも、少しずつ消えていった。

そして
ついに、花火大会の日になった。

僕は鏡の前で、何度も浴衣を確認する。

父さんが買ってくれた浴衣。
正直、少し照れくさい。

でも今日は、ちゃんとした姿で行きたかった。

家を出ると、夏の夜の空気が広がっていた。

美空
美空
おーーい!
美空の元気な声が手の振りと共に聞こえた。
いつも通りニコニコしているのに、
どこかいつもより綺麗で、目が離せなかった。
美空
美空
似合ってる?🤭
少し照れながら、くるっと回る。
そんな姿も可愛い。
僕
僕
似合ってる…よ…
美空は嬉しそうに笑った。

そのまま並んで歩き出す。

人混みの中、はぐれないように――

気づけば、僕は美空の手を握っていた。

一瞬だけ驚いた顔をしたあと、
美空は何も言わずに、ぎゅっと握り返してくる。

そのまま、二人で歩いた。

屋台の灯り。
楽しそうな声。
夜空に広がる、花火の音。

ドン――ッ。

大きな音とともに、空に光が咲く。
美空
美空
綺麗だね素敵💓
美空が、子どもみたいに目を輝かせる。

その横顔を見ていると、
胸の奥が、強く締め付けられた。

楽しくて、嬉しくて、
でも、それだけじゃない。

僕は気づいていた。

一緒に過ごした時間。
笑い合った日々。
喧嘩して、仲直りして…

全部が、特別だったことに。
僕
僕
美空…言いたいことあるんだ
花火の音に紛れながらも、
しっかりと届いた。
美空
美空
どうしたの?
振り向く彼女の目を、まっすぐ見る。

逃げたくなかった。
僕
僕
僕…美空のこと、好きだ
一瞬、時間が止まったような気がした。

花火の音も、人の声も、
全部が遠くなる。
美空
美空
本当に…?嬉しい!
私たち両思いだったんだね!
その言葉を聞いてとても嬉しかった!

その一言で、胸がいっぱいになる。

気づけば、僕たちは――

お互いを、しっかりと抱きしめていた。

夜空では、花火が咲き続けている。

ドン、ドン、と大きな音を立てながら。

笑って、泣きそうになって、
何もかも忘れてしまうくらい――

ただ、この瞬間だけを感じていた。

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