模試、受験対策、終わらない問題集。
忙しい毎日だったはずなのに、
不思議と苦じゃなかった。
美空とは、前よりも少しだけ自然に話せるようになっていた。
ぎこちなさも、少しずつ消えていった。
そして
ついに、花火大会の日になった。
僕は鏡の前で、何度も浴衣を確認する。
父さんが買ってくれた浴衣。
正直、少し照れくさい。
でも今日は、ちゃんとした姿で行きたかった。
家を出ると、夏の夜の空気が広がっていた。
美空の元気な声が手の振りと共に聞こえた。
いつも通りニコニコしているのに、
どこかいつもより綺麗で、目が離せなかった。
少し照れながら、くるっと回る。
そんな姿も可愛い。
美空は嬉しそうに笑った。
そのまま並んで歩き出す。
人混みの中、はぐれないように――
気づけば、僕は美空の手を握っていた。
一瞬だけ驚いた顔をしたあと、
美空は何も言わずに、ぎゅっと握り返してくる。
そのまま、二人で歩いた。
屋台の灯り。
楽しそうな声。
夜空に広がる、花火の音。
ドン――ッ。
大きな音とともに、空に光が咲く。
美空が、子どもみたいに目を輝かせる。
その横顔を見ていると、
胸の奥が、強く締め付けられた。
楽しくて、嬉しくて、
でも、それだけじゃない。
僕は気づいていた。
一緒に過ごした時間。
笑い合った日々。
喧嘩して、仲直りして…
全部が、特別だったことに。
花火の音に紛れながらも、
しっかりと届いた。
振り向く彼女の目を、まっすぐ見る。
逃げたくなかった。
一瞬、時間が止まったような気がした。
花火の音も、人の声も、
全部が遠くなる。
その言葉を聞いてとても嬉しかった!
その一言で、胸がいっぱいになる。
気づけば、僕たちは――
お互いを、しっかりと抱きしめていた。
夜空では、花火が咲き続けている。
ドン、ドン、と大きな音を立てながら。
笑って、泣きそうになって、
何もかも忘れてしまうくらい――
ただ、この瞬間だけを感じていた。


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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!