赤い部屋は、今日も変わらず赤い。
壁も、カーテンも、光さえも。
だが――彼女だけが、違う色をしていた。
眠っている。
無防備で、脆く、あまりにも人間らしい。
私は椅子に腰掛け、指先でステッキを弄ぶ。
ラジオのノイズが、心地よく耳を撫でた。
おかしい。
契約者など、今まで何人も見てきた。
希望に縋る者。
絶望を餌にする者。
壊れる音は、皆同じだった。
……だが。
あなたが息をするたび、
胸の奥で、微かに雑音が走る。
HAHAHA!!
まるで、チューニングの狂ったラジオだ。
声を落とす。
いつもより、ほんの少しだけ。
あなたの睫毛が揺れ、
ゆっくりと瞼が開く。
その瞬間。
赤い世界に、別の色が差し込んだ気がした。
――守る?
――否。
――縛る?
――それも違う。
私は笑う。
いつも通りの、完璧な笑みだ。
アラスター《内心》
嘘ではない。
だが、真実でもない。
自分の言葉に、
胸の奥が、わずかに軋んだ。
……なるほど。
私は今、
契約の外側に、足を踏み出しかけている。
HAHAHA!!
なんとも、愉快じゃありませんか。
悪魔が、
自分の気持ちを理解し始めるなど。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。